函館工を投打で引っ張る主将・佐々木柊二の魅力【前編】
つくし(土筆)が顔を覗かせ、函館に春の訪れを告げている。学校に入るとすぐに、函館工のグランドから元気な声が聞こえてきた。取材当日は、野球部、ハンドボール部、サッカー部がグランドで練習していた。その他ラグビー部など始め他の部もグランドを使用するという。野球部だけでグラウンドを使用できる日は少ない。そんな環境の中でも工夫をしながら練習を行い、着実に結果を出している同校。昨年は、21世紀枠候補にも選出されている。
限られた環境での工夫をした練習や、五稜郭のイルミネーションの飾り付けを手伝うなどの地域貢献も評価されたのだろう。そんな近年注目度が上がってきている函館工のキーパーソン3名に話を伺った。
旧チームよりレギュラーで試合に出ている、佐々木柊二と山崎健佑、そして佐々木とバッテリーを組む平泉駿太の3人のインタビューより、函館工の強さの秘密に迫る。
新チームからマウンドへ!急成長を続けるエース佐々木!
エース・佐々木柊二
「特別上手い選手、ずば抜けた選手はいないんですが、一人一人が状況状況で落ちついたバッティング、ゴロ捕球でも、しっかり膝をついてでもしっかり止めるとか、しっかりやるべきことをやって、チームとしても全力疾走、全力発声を徹底しているので、やれることをしっかりやれるチームだと思います」
チームについて、自分の言葉でしっかりと話してくれたのは、主将でかつエースの佐々木柊二だ。
佐々木は旧チームでは遊撃手で試合に出ていた。秋の大会よりマウンドに上がると、支部予選を勝ち上がり、全道大会でも好投を見せた。
佐々木は、秋季大会でどんな点で課題を感じていたのだろうか?
「自分自身に足りないと思ったところは、公式戦で打たれたり、味方のミスが出たときに周りが見えなくなってしまったところです。周りを信用しきれなかったと言うか、自分で一人相撲をやってしまったというのがあったので、もっと余裕を持っていれば、周りが見えたんじゃないのかなというのが反省点でした」
秋に感じた課題を、今どのように消化してきたのだろうか?
「雪解け後に何試合か練習試合をしました。ピンチの場面でもしっかり落ち着いて投げ急がなかったりできてるのかなと、秋の経験が活きているいると思います」
そこには、もう急造投手でなく函館工のエース佐々木がいた。
[page_break:プレーヤーとしての佐々木の魅力!]プレーヤーとしての佐々木の魅力!
練習をする函館工
「今はストレートに自信があります。一番大事なのは切れとコントロールだと思います。内外と高低をきちんと四つ角を使えることだと思います」
と、投手としての佐々木の考えを話してくれた。
佐々木の投手としてのアドバンテージは、なんと言っても旧チームまで遊撃手で試合に出ていたという経験だろう。バント処理などのフィールディグにも光るものがある。また、遊撃手のポジションから一塁ランナーの動きを見ていたのも大きい。
「ランナーの動きとか、どういう時に走って来るんだよとか、そういうのはなんとなく感じ取れるようになりました」
と話してくれた。このような、数字では現れない部分での佐々木のチームへの貢献度は、見逃せない点である。
ここまで、投手・佐々木について話をしてきたが、佐々木の一番の凄さは、自分で考えられる力だ。インタビュー中の受け答えでも、自分で考え、自分の言葉で答えられる。それこそが、佐々木の魅力である。言うなれば人間力があるのだ。佐々木の人間力は投球術にも活かされているのは言うまでもないが、打撃でも十分に発揮されている。
主軸を任されている打撃力という点でなく、状況によるバッテイングが出来る点である。自分で考え、それをアウトプットできる佐々木だからこそ、状況に合わせたバッティングや、転がす場面でしっかり転がすことが出来るのである。
再度言いたい、佐々木の価値は数字ではない、数字では測れない部分にも多くの魅力が詰まっている。
前編はここまで。後編では副主将である山崎健佑、そして扇の要を担う平泉駿太のコメントを紹介していきながら函館工の強さの秘密に迫っていく。後編もお楽しみに!
(文・田中 実)