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トレーニングで技術力を上げるためには

2019.08.31

トレーニングで技術力を上げるためには | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 いよいよ9月となり新学期が始まります。新チームとなって始動し、秋の公式戦を迎えたチームも多いことと思います。学校が始まると練習時間も少なくなってしまうのですが、限られた時間で技術力アップを目指してがんばっていきましょう。さて今回は野球の技術力向上に欠かせないフィジカルトレーニングについて、これからどのようにアプローチすれば良いかをお話したいと思います。

「パワーをつける!」その前に

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正しい姿勢を保持したトレーニングを心がけよう

 夏の甲子園大会をテレビなどで観戦した皆さんも多いことでしょう。出場している選手たちの体つきが大きかったり、鋭いスイングで打球を遠くにとばしたりしたシーンを見かけると、「やはり野球にはパワーが必要」と改めて思わせられたかもしれません。もちろん大きな力を発揮するためにはパワー(力×スピード)をつけることが大切であり、フィジカルトレーニングは野球の技術練習では強化しにくい部分を鍛えることに適しています。しかし一方で、ただやみくもに筋力トレーニングをすればいいというものでもなく、自分の体力要素に必要なものを理解して取り入れていく必要があります。何が必要なのかは選手個人個人によって違ってくるので、形態・体力測定などを行って現状の体力レベルを把握することから始めましょう。

●負荷の前にまず正しいフォームで
 体力測定を行うと自分の体力レベルが数値となってわかります。体重を支えられるだけの筋力を備えているか、体幹は安定しているかなどを確認してみましょう。その上でフィジカルトレーニングを行うようにします。自重でバランスを崩すことなく動くことができるか、負荷をかけたときに体の位置はどう変化しているかなど、他の選手にみてもらったり、スマホで動画などを撮影してもらったりして確認することもできるでしょう。特に背中が丸まった状態では力のロスが発生するだけではなく、腰椎に大きな負荷がかかってケガをしてしまうことがあります。フィジカルトレーニングでケガをしないよう、まずは正しい姿勢を保持することを心がけましょう。

[page_break:代償運動を起こさないようにする]

代償運動を起こさないようにする

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体全体をバランス良く鍛えることが大切ですが、特に下半身は重点的に鍛えたい

 代償運動とは、本来のあるべき動作や運動を行うときに、必要とされる機能以外のものまで使って動作や運動を行うことです。わかりやすい例えでいえば、腕(上腕二頭筋)の筋肉をつけようとアームカールを行うときに、負荷が大きすぎると何とか上まで挙げようとして背中を反らしながらエクササイズを行うといったことです。これは本来、上腕二頭筋を鍛えるエクササイズですが、背筋を使うことでより大きな負荷を挙げられたような実感がわきます(が、実際には背筋のトレーニングも加わっています)。こうした代償運動を起こさないようにするためには正しい姿勢でエクササイズを行うことが大切です。アームカールの場合であれば、壁ぎわに背中をつけてしまえば背筋を使って負荷を挙げることができなくなるため、より上腕二頭筋に集中してトレーニングをすることができます。

●より大きなパワーをうむのは下半身の強化
 野球の技術練習やランニングなどで下半身を動かしていることに加えて、さらにトレーニングも下半身を中心に鍛えるとなると、どうしても気持ちのほうが先に折れてしまいがちですが、より大きなパワーを身につけるにはやはり下半身の筋力強化は欠かせません。ただし体力的に疲弊しきった状態でトレーニングを行うと逆にケガのリスクが高まりますので、全体の練習量を調節しながら下半身のフィジカルトレーニングも並行して行うようにすると良いでしょう。

 体力的にウエイトを使った筋力トレーニングがむずかしいようであれば、自重でのバランスを意識したトレーニングを行ったり、筋力というよりは軽い負荷で回数を重ねて筋持久力を鍛えるようなトレーニングを行ったりといった具合に、鍛える体力要素に変化を持たせながら行うようにします。練習量が少なかったり、雨天などでトレーニングがメインになるような時には大きな力を生む下半身、それを伝えるための軸となる体幹、そして上半身とそれぞれを鍛えるようにしましょう。

 フィジカルトレーニングは正しい目的をもって正しい姿勢、正しい動作で繰り返し行うと、効率よく筋力を挙げることができます。1日1日という短い単位ではなく数ヶ月単位で粘り強く取り組むようにすると、必ず変化が実感できると思います。まずは自分に必要な体力要素を理解し、実践することから始めましょう。

【トレーニングで技術力を上げるためには】
・形態・体力測定を行って現状の自分自身を知ること
・負荷を挙げることだけではなく、正しい動作で行っているかどうかを確認しよう
・本来鍛えたい部位とは違ったところを動員する代償運動を起こさないようにしよう
・より大きなパワーを生み出すためには下半身の筋力強化が欠かせない
・数日単位ではなく数ヶ月単位で粘り強く取り組むようにしよう

(文=西村 典子

次回コラム公開は9月15日を予定しております。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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