日本の専売特許であるスモールベースボールが台湾、韓国の武器になっていた
今年のワールドカップでは5位に終わった侍U-18代表。日本野球の強みといえば、戦術、走塁、守備とスモールベースボールが大きな強みだった。しかし大会を振り返ると、その強みも韓国、台湾に大きく差をつけられる結果となった。
先を見据えた采配ができなかった
西純矢と宮城大弥
■戦術面
今年の戦術を見て感じることは近視的な采配が多いことだ。リーグ戦で戦う指揮官に求められるのは、1試合9イニング、オープニングラウンドなどの1区切り、また一大会を見通して決断する大局観が求められる。そこで、語弊のある言い方で申し訳ないが、手持ちのカードをいつ使うべきか、温存するべきかを常に問われる。言い換えれば、大事な場面で勝つために手札は取っておく必要がある。
しかし今年の首脳陣はどんどん良いカードを切る。韓国戦のDH起用・解除が最も現れたといっていい。この試合はライト・西純矢、レフト・宮城大弥と投手をスタメンで起用した。他国も投手登録の選手を野手としてスタメンで起用することはあるが、原則的にDH解除はなく、解除する場合は大差の場合、試合終盤の場合である。
だが、日本は佐々木朗希の緊急降板で、西が登板した。宮城は外野についたままで、6回から飯塚 脩人が登板した。ここからが問題だった。
セ・リーグの試合を見れば分かるが、中継ぎ投手が登板して、その投手が打席を迎えた時、例外なく、代打を送る。日本もこの試合、チャンスを作って、打席に飯塚を迎えた。
ベンチは飯塚に代えて、熊田任洋を送った。その熊田は適時打を放ち先制点を挙げた。ここでの代打起用は問題ない。ただ誰のところに代打というのが問題なのだ。そう、クローザー・飯塚に代打を送ったのだ。飯塚をベンチに下げたことで9回裏のピンチにも、10回裏のタイブレークの場面でも飯塚という切り札を入れることができなかった。
さらに韓国戦に総力を注いだゆえ、オーストラリア戦では苦手な左腕を投入できなかった。
オーストラリアはチャイニーズタイペイ戦では7回コールド負け。左腕から全く打てず無得点に終わっており、一次ラウンドの韓国戦でも左腕のホン・ドンユンから1点しか奪えていない。データを見ながら逆算した投手起用もできなかった。
その点、オーストラリアの投手起用が絶妙だった。危ないと思った時点で、すぐに中継ぎ投手を起用するチームで、先発投手も3人おり、しっかりと役割分担ができていた。日本の投手起用はオーストラリアに比べるとかなり差がついていた。
■守備・走塁
守備・走塁に関しては韓国、チャイニーズタイペイに完全に引き離されていた。特にチャイニーズタイペイの守備力の高さは素晴らしいものがあった。
レフトの羅暐捷はもともと捕手がメインの選手。それでも強化練習の成果もあり、一歩目の動きも速く、アメリカ戦では二度の大飛球を好捕していた。また遊撃手の鄭宗哲はパイレーツのマイナー契約をしている遊撃手で、一歩目に対する反応、守備範囲の広さはまるで名手と表現できるものだった。日本もそういう選手がいないわけではない。翌年以降は名手と呼べる選手を選んでほしい。
走塁面では韓国の二塁手・キム・ジチャンが素晴らしい動きを見せた。今大会は首位打者、最多盗塁、最優秀守備を記録。塁に出れば、ディレードスチールなど相手をかき回す走塁を見せ、守備では好守備を連発しヒット性の打球を阻止。打撃では170センチ70キロと小柄だが、バットコントロールが安定しており、広角に打てる。
日本もこういうタイプの打者は数多いが、木製バットになると打球が前に飛ばず、苦しむケースが多い。俊足で守備職人の選手が木製バットの壁を破ることができれば、大きな戦力となる。これは高校球界の課題ではないだろうか。
【選考はタイプ別に分けた選考を】
国際大会は投手陣では本格派、クローザータイプの速球派、右サイド、左の技巧派とあらゆるタイプを揃え、野手陣では強打者、守備職人、それぞれのスペシャリストを揃えて、強打と小技を織り交ぜた野球ができれば理想ではないだろうか。そこにデータを加えた戦術を取り入れたいところ。
戦術面でも、走塁、守備面でも世界レベルに達し、再び優勝を狙える戦力になってもらいたい。
(記事=河嶋 宗一)
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