プロ志望のU-18代表選手のパフォーマンスを総括!奥川、西、宮城らの活躍が光った投手陣
8月30日から開幕した第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ。世界一を目指した侍ジャパンU-18代表は残念ながら5位に終わってしまった。
それでも、代表メンバー18人は皆、将来が期待できる有望選手だ。そのうち、現在12名がプロ志望の意向を表明している。今回は、12名のうちの投手陣6名のU18でのパフォーマンスを改めて総括したい。
佐々木朗希、奥川恭伸、西純矢
佐々木朗希
・佐々木朗希(大船渡)
投手成績 1試合 1回 四球1 奪三振1 失点0 自責点0
韓国戦では血豆の影響もあり、1回無失点で降板。自慢の直球は最速153キロと、本人にとって満足いくボールではなかった。まだ18歳、今後の国際大会でリベンジする機会は十分あるだろう。
プロを見据えた時、土台作りに時間はかかりそうだが、しっかりとした状態で投げることができれば、長いイニングも投げられて、素材型と呼ばれる割には、変化球もコントロールできるので、佐々木が入団した球団の首脳陣は、スターターとして我慢強く育ててほしいところ。
・奥川恭伸(星稜)
投手成績 1試合 7回 奪三振18 四球0 失点1 自責点1 防御率1.29
カナダ戦で7回18奪三振の快投。この投球が評価され、先発投手部門でベストナイン受賞となった。本人は「1試合しか投げていないのに、タイトルを取っていいのか…」と苦笑いしていたが、それぐらい奥川のピッチングは凄まじいものがあった。
150キロを連発していた今回の甲子園の智辯和歌山戦と比べると、常時140キロ後半の速球(最速151キロ)を内外角にコントロール。智辯和歌山戦で投じていたチェンジアップ、高速フォークはカナダ戦では投げず、カナダの打者の反応を見て、縦スライダー中心の攻めに切り替え、18奪三振のうち、14個が縦スライダーだった。
奥川は1試合ごとに軸となるボールが異なるのだが、カナダ戦の時のように縦スライダーの試合もあれば、ストレート、高速フォーク、チェンジアップになる日もある。また投球数が100に達し、7回二死の場面で3球三振を狙いに行って、103球で終える神業ピッチングも披露したが、この大会で修正力の高さを含め、間違いなく国内においてもアマチュアナンバーワン右腕の評価を受けたことだろう。
多くのプロ野球の解説者も、「コンディションの問題をクリアすればすぐに勝てる投手。キャッチボールからものが違う」と絶賛。おそらく代表投手9人の中で、最も勝つ可能性を持った投手ではないだろうか。
・西純矢(創志学園)
投手成績 4試合 13.1回 奪三振17 四死球3 失点3 自責点2 防御率1.04
投手としてはチーム最多の4試合に登板。連投が続く中、ピッチングのクオリティは落ちなかった。
常時145キロ~150キロ前後の速球は勢いがある。国際大会は直球の対応力が高い打者が非常に多く、150キロ前後の速球を軽々と打ち返す姿を目の当たりにしてきた。そういった中で、ストレートで押し込む西の球威は見事で、130キロ後半のフォーク、130キロ前半のチェンジアップ、120キロ中盤のスライダーはいずれも精度が高く、投手としての完成度の高さは奥川に匹敵するものがある。
また、西は、打撃でも2本塁打を放ち、本塁打王を獲得した。「まさかこんな形で受賞するとは思わなかった」と笑みを見せながら、いずれは投手としてタイトルをとれる選手になりたいと語った。
登板が続く中でも、「楽しい」と常に笑顔を見せながらプレーを見せていた。投手としても、野手としても抜群の働きを見せた西は今年の代表選手ではMVPに相応しい投手だ。
[page_break: 宮城大弥、浅田将汰、前 佑囲斗]宮城大弥、浅田将汰、前 佑囲斗
前 佑囲斗
・宮城大弥(興南)
投手成績 3試合 8.2回 奪三振9 四死球2 失点6 自責点1 防御率1.04
チームでは西に次ぐ登板数を記録。宮城が登板する試合は雨や、接戦と苦しい登板が多かった。それでも顔色一つ変えず、淡々と投げ込んだ精神力の強さは素晴らしい。調子も少しずつ上げていき、リリーフした韓国戦では140キロ後半の速球に加え、切れのあるスライダー、チェンジアップと変化球の精度も素晴らしいものがあった。今年の高校生ナンバーワン左腕として評価を高めたのではないだろうか。
・浅田将汰(有明)
投手成績 2試合 6回 奪三振11 四死球2 失点4 自責点3 防御率4.50
南アフリカ戦では5回無失点の好投を見せたが、オーストラリア戦では2回表にアウト1つも取れず降板。この夏の熊本大会で見せたコントロールされた140キロ後半の速球、チェンジアップも精彩を欠いた。
浅田は国内合宿の駒大とのオープン戦で、右ひじに死球を受けて打撲。調整が遅れたのも否めなかった。それでも、「甲子園で活躍した選手と一緒に野球ができて、これからの人生に生きると思う」と前を向いた。
・前 佑囲斗(津田学園)
投手成績 3試合 9回 奪三振13 失点4 自責点1 防御率1.00
主にリリーフとして好投。140キロ前半の速球と120キロ後半のカットボールを内外角に投げ分けるピッチングは世界の舞台でも通用した。前自身、いつも滑るボールで練習していたようで、国際球にはしっかりと対応。特にオーストラリア戦では5回を投げて9奪三振、無失点の好投。この試合について「最も自分を出せた試合」と振り返った。高校日本代表入りして、「佐々木投手、奥川投手の存在はとても刺激になり、改めてストイックに取り組まないといけないと実感した」と、帰国後から1週間たって投球練習を再開し、準備を重ねている。常に前向きに取り組む前の姿勢は必ずや生きるはずだ。
記事=河嶋 宗一