ファーム2冠で2020年飛躍の助走へ 安田 尚憲(千葉ロッテマリーンズ)
令和という新しき元号を迎えた2019年のプロ野球で、高卒2年目・1999年度生まれの選手たちが躍動している。36本塁打で10代本塁打数記録を塗り替え、中西 太さん(元:西鉄ライオンズ)が出した高卒2年目本塁打記録に肩を並べた村上 宗隆(東京ヤクルトスワローズ・一塁手兼三塁手)を筆頭に、外国人選手1名を含む支配下登録選手34名(セ・リーグ17名、パ・リーグ17名)中、21名(セ・リーグ11名、パ・リーグ10名)が早くも一軍の舞台を踏み、それぞれの舞台で活躍を続けている。
そこで、今回はその中で特に将来が期待できる選手を何人か取り上げていきたい。第6回では今季一軍出場は果たせなかったものの、イースタンリーグでは本塁打・打点の2冠に輝いた三塁手・安田 尚憲(やすだ・ひさのり)を紹介する。
第1回はこちらから
◆平良 海馬(埼玉西武ライオンズ・投手) 最速156キロの原動力は八重山商工時代の猛練習
第2回はこちらから
◆清水 達也(中日ドラゴンズ・投手) 聖地の頂点糧に、今度はナゴヤドームで頂点へ
第3回はこちらから
◆西浦 颯大(オリックス・バファローズ/右翼手) 「不完全燃焼」だった明徳義塾時代を糧に
「東の清宮」と並び立った履正社の大型大砲
高校時代の安田 尚憲
188センチ95キロの堂々たる体格から豪快な一振りで仕留める。このスタイルはプロ入団前から不変であり、「スポーツ家族」ならではの恵まれた身体能力によってなしえることができる業である。
父・功さんは大阪薫英女学院(大阪)陸上部監督として全国高校女子駅伝大会で2度の優勝に導いた名将。母・多香子さんは学生時代にやり投げの有望選手。そして12歳上の兄・亮太はPL学園(大阪)で前田 健太(MLBロサンゼルス・ドジャース)とバッテリーを組み、昨年の社会人日本選手権を初制覇した三菱重工名古屋の主将。その兄の影響で吹田市立豊津第一小時代に豊津少年野球団で軟式野球を始めた安田は、吹田市立豊津中では元・阪神タイガースの赤星 憲広氏がオーナーを務める硬式野球チーム・レッドスターベースボールクラブで心技体を磨いた。
その成果は履正社(大阪)入学後、一気に開花する。2年夏に甲子園出場を果たすと、2年秋は明治神宮大会優勝、3年春のセンバツは準優勝。最後の夏こそ甲子園出場は果たせなかったが、主軸として存在感を常に発揮。いつしか周囲は「東の清宮(幸太郎・早稲田実~北海道日本ハム)・西の安田」と称するようになった。そして2人は侍ジャパンU‐18代表として「第28回WBSC Uー18ワールドカップ」で共闘。安田は3番打者としてスーパーラウンド・オーストラリア戦でのサヨナラ安打含む34打数11安打5打点で日本を3位に導く原動力となった。
そしてドラフト会議では高校通算65本塁打の実績を買われ、3球団競合の末、千葉ロッテマリーンズからの1位指名が決まった安田。一軍中心選手が付ける背番号「5」を与えられたことからも大型大砲への期待の大きさがうかがえた。
[page_break:ファーム2冠王をステップに、3年目のジャンプへ]ファーム2冠王をステップに、3年目のジャンプへ
高校時代の安田 尚憲
1年目はオープン戦中盤まで一軍に帯同した後、ファームで試合経験を重ねた安田は夏場の好調を勢いとして8月18日に一軍デビュー。10月2日には福岡ソフトバンクホークス・東浜 巨から一軍初本塁打を放つなど17試合出場で53打数8安打1本塁打7打点。レギュラーシーズンを終えるとU-23侍ジャパンにも選出され、「2018 WBSC U-23ワールドカップ」(コロンビア開催)で打率.393・1本塁打8打点。チームは決勝戦でメキシコに惜敗したが、自身は大会MVPに輝いた。
ブラントン・レアードの新加入により一軍試合出場なしに終わった2年目もイースタンリーグでは529打席に立ち、449打数116安打19本塁打82打点。ファームとはいえ最多本塁打・最多打点の2冠を獲得し経験と自信を重ねた安田。3年目はレアードの三塁手。ないしは鈴木 大地や井上 晴哉が守る一塁手での定位置奪取を視野に入れる。実践への準備期間はもう終わり、安田 尚憲・ジャンプへの助走はもう整っている。