社会人俊足外野手の評価を挙げた荻野貴司、近本光司の共通点とは?
残留を決めた荻野貴司(千葉ロッテ)
FA宣言せず残留を決めた荻野貴司(郡山出身 千葉ロッテ)。今季は自己最多の125試合に出場し、10本塁打46打点28盗塁、打率.315とキャリアハイの成績を収めた。
そんな荻野と共通点を持った選手がいる。それが阪神ドラフト1位の近本光司(社出身)だ。近本は142試合に出場、586打数159安打、9本塁打42打点36盗塁、打率.271と好成績を残し、安打数は新人歴代3位となり、さらに盗塁王も獲得し、新人王候補にも挙がっている。そんな2人は3つの共通点がある。
・公立校出身
・関西学院大出身
・社会人野球を経由してドラフト1位
荻野の高校時代は遊撃手、近本は投手兼外野手として活躍したが、2人とも超高校級の活躍したわけではない。だが、大学に進んでから一歩ずつ成長を見せた。荻野は当時の盗塁記録を作り、近本は野手に専念し、俊足巧打の外野手として活躍した。
そして2人は社会人になってさらに才能を開花。トヨタ自動車に進んだ荻野は1年目に日本選手権優勝に貢献し、社会人ベストナインを獲得。2年目も都市対抗準優勝を経験。俊足巧打でありながら本塁打も打てる野手として評価を挙げた。
大阪ガスに進んだ近本は2年目の2018年、21打数11安打、打率.524の活躍を見せて、優勝に貢献。首位打者と最優秀選手に贈られる橋戸賞を受賞した。
2人とも高校時代の立ち位置を考えると、プロ入りは確実ではなかった。荻野自身も「高校時代の取り組みは甘かった」と振り返ったことがある。ドラフト1位になる選手といえば、即戦力になる大学・社会人の投手、将来有望な高校生投手、高校生野手が中心。社会人野手がドラフト1位指名になることは少ない。だが、NPBのスカウトがドラフト1位級として評価した社会人野手は本物だと実感させてくれる2人の活躍である。
特に近本の活躍によって社会人野手の評価は見直され、ソフトバンク1位は佐藤直樹(JR西日本 報徳学園出身)、東北楽天1位の小深田大翔(大阪ガス 神戸国際大附出身)の2人の社会人野手が1位指名を受けた。佐藤も小深田も高校時代からドラフト候補として騒がれたわけではなかった。一歩ずつ積み上げていきながら、最高評価でのプロ入りをかなえたのである。
荻野、近本の活躍は多くのプレイヤーにとって勇気づけるものであり、後輩たちの道を作った意味でも大きなことである。こういう積み上げをすることで、社会人野手の評価は高まっていく。来年以降の荻野、近本。そして佐藤、小深田のルーキーイヤーの活躍が楽しみだ。