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コロナで次々と進む高校野球のIT活用。愛知の新鋭・豊野はZoomで結束を深める

2020.04.24

 新型コロナウイルスの影響でほとんどの学校が活動を自粛。指導者と選手たちがグラウンドで練習ができない日々が続いている。当たり前のように練習できていた日々が失われ、各個人でできる範囲の練習をせざるを得ない環境に、電話取材を通じて戸惑いや不安を隠せない声が多く聞こえた。

 そんな中、選手たちとコミュニケーションをとるためにIT活用しているチームが多いことに気が付いた。今回は、ビジネスマンの間で大流行となっているWeb会議ツール「Zoom」を使って活動をしているチームにフォーカスしていく。

IT活用で私立との差を着実に埋めていく

コロナで次々と進む高校野球のIT活用。愛知の新鋭・豊野はZoomで結束を深める | 高校野球ドットコム
豊野ナイン ※写真提供=豊野高校野球部

 このアプリを通して、ミーティング、飲み会を行うなど、新たなライフスタイルが生み出されているが、このツールを通して、指導者と部員をコミュニケーションを取っている野球部がある。それが愛知県の豊野だ。

 豊野を率いるのは松井優監督。もともと松井監督は情報発信ということに関しては、以前から行い、独自のアカウント(@yutakanobb)を持ち、チームを運営している。昨夏は実力校・安城学園を破り、初戦突破。日増しに注目度が高まっている公立校だ。

 今回Zoomを取り入れたきっかけとして、松井監督は「前回の休校の時は再開の目途が立っていましたので何もしませんでしたが、今回はコロナ対策として始めました」とのこと。最初はLINEを活用し、コミュニケーションをとっていたが、部員たちの顔を見てコミュニケーションが取れないことを気掛かりにしていた。

コロナで次々と進む高校野球のIT活用。愛知の新鋭・豊野はZoomで結束を深める | 高校野球ドットコム
Zoomでのミーティングの様子 ※写真提供=豊野高校野球部

 そこでZoomを使ってコミュニケーションをとっているチームがいることを知った松井監督は、真似をする形でチームのミーティングにZoomを活用することを決意。活用してまだ1週間少々だが、効果は絶大だ。
 「パソコンの画面を参加者の様子が共有できますので、映像を流して指導ができます。また、ペン書きもすることができますので、授業のように双方向でコミュニケーションが取れて、わかりやすく指導をすることができます」

 他にも松井監督の方からグループを作って、グループ間でチャットができるようにするなど、オンライン授業に近いものでミーティングを効率的に実施する。実際にミーティングに参加している3年生マネージャー・梁瀬瑚夏さんは、「スクリーンにまとめてくれるので、文章だけでは難しい私たちでも理解しやすい」と映像を駆使したZoomでのミーティングについて語る。

 豊野では、Zoomでのミーティングを午前9時から開始。最初に選手が自主練習の内容を報告。次に学習担当の藤澤勇輝から学校からの課題の進捗を報告。

 最後に松井監督による座学と、1時間弱で終了する。こうすることで、選手たちの気持ちを繋ぎ続けながら夏に向けて準備を続けていく。さらに、Zoomでのミーティングには入部希望者の1年生も参加している。

 「他の学校だと1年生への対応が遅れてしまうところですが、これでサインの確認や作戦。そしてチームの考え方を先取りしてできるので、練習時間では勝てない私立との差が詰められていると思うので、楽しみです」

[page_break:Zoomでミーティングがチームにもたらす影響]

Zoomでミーティングがチームにもたらす影響

コロナで次々と進む高校野球のIT活用。愛知の新鋭・豊野はZoomで結束を深める | 高校野球ドットコム
ペン書きで選手たちにわかりやすく解説 ※写真提供=豊野高校野球部

 ではZoomでミーティングに参加している選手たちは、現状をどう過ごしているのか。実際に高校野球ドットコム編集部の記者が豊野野球部のZoomに参加して話を聞いた。
 「自分はバッティングを課題にしていて、特に突っ込んでしまって弱い打球を打つことがあるので、下半身のタメを意識して素振りをしています。また、身体づくりで食事量を増やして体重を増やしています」(セカンド・3年勝上大資

 「開きが速いのが悪い癖なので、正面から動画を取りながら素振りをすることで、課題のインコースを克服できるようにしています」(ファースト・3年井口稔久

 豊野では最低でも200回の素振りをすることを課題に、それぞれ選手たちが取り組んでいる。しかも毎日取り組んでいるか確認をするために、カメラの前で200回の素振りをしている様子を撮影して、動画を提出させる徹底ぶりだ。

 そんな選手たちはZoomでのミーティングをどのように感じているのか。
 「3月の休校ではZoomを使わなかったので、再開した時にサインが曖昧になっていました。ですが今回はZoomで確認ができていますので、再開をした時はスムーズにできると思います」(奥村魁斗主将)

コロナで次々と進む高校野球のIT活用。愛知の新鋭・豊野はZoomで結束を深める | 高校野球ドットコム
豊野ナイン ※写真提供=豊野高校野球部

 映像を取り入れることで、選手の技術面を可視化するだけではなく、チームの戦術も再確認ができる。
 またZoomでミーティングする時間は朝9時にするのは、ある狙いがある。それは、中森由貴(投手・2年)が答えを出してくれた。

 「朝早くミーティングをすることで、生活リズムを休校前と同じ通りに出来ます。また、髪型などミーティングをするときに整えていないと良くないので、きっちりとした生活ができていると思います」

 ただコミュニケーションを取るだけではなく、会社における「朝会」の役割をこなしている。

 選手たちはZoomのメリットをこのように語る。
 「直接、顔を見られますし、松井監督の顔を見るとミーティングの緊張感を忘れずにやれるところがLINEとは違いますし、Zoomの良さだと感じています」(勝上)

 「LINEはいつでも見ることができますが、文章や顔をしっかり見られないですが、Zoomだとチームメイトやマネージャーの顔を見られるのは良いと思います」(藤澤)

 Zoomは今流行りのツールとなっているが、それをどう活用するかは組織の考え方次第だ。豊野の松井監督と選手たちが活発で実りあるコミュニケーションを取ることができているのは、選手、指導者ともども知的好奇心が旺盛だからであり、ベクトルが1つに向いているからだ。「IT活用」で前進を続ける豊野の夏が見逃せない。

豊野以外のZoom活用チーム】
立花学園(神奈川)・・・昨秋県大会ベスト8 朝7時からのミーティングの際に選手たちの状態をチェックする目的でZoomを活用している。
三刀屋(島根)・・・昨秋県大会ベスト8 トレーナーが可能な日にZoomを活用して、体幹や可動域を広げるようなストレッチを伝えている。

(取材=田中 裕毅

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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