Interview

投では最速142キロ、打では12本塁打のスーパー中学生・ハッブス大起(上尾シニア)の最大の武器は「陸上選手のようなバネの強さ」

2020.11.27

 関東地区の中学野球で、大きな可能性を持った大型右腕として注目を集めているのが上尾シニアのハッブス大起(たいき)投手だ。アメリカ人の父を持つハッブス投手は、身長185センチ、体重80キロの中学生離れした体格から最速142キロの直球を投げ込み、また打者としても中学通算12本塁打を放つなど投打で高い能力を見せる。

「高校卒業までに155キロを出したい」と笑顔で語るハッブス投手の、これまでの成長や将来の目標を伺った。

ヤクルトジュニアでは河端コーチに投球のいろはを学ぶ

投では最速142キロ、打では12本塁打のスーパー中学生・ハッブス大起(上尾シニア)の最大の武器は「陸上選手のようなバネの強さ」 | 高校野球ドットコム
ハッブス大起

 小学校4年生の夏に、兄の影響で野球を始めたハッブス投手。元々はサッカー少年だったが、股関節を怪我してサッカーが出来なかった時にたまたま兄の野球の試合を観戦したことで野球への興味が沸き上がってきたという。その後、兄と同じ少年野球チーム・白鳩ジュニアーズに入団して、そこからどんどん野球に惹かれていった。

 小学校5年生からは投手の練習もスタートし、「思い切り腕を振る感覚を掴んだ」という秋頃からは球速も右肩上がりに伸びていった。小学校6年時には身長はすでに175センチにも達しており、ヤクルトスワローズジュニアのメンバーにも選出。NPBジュニアトーナメントでは迫力満点のボールを投げ込み、また明るいキャラクターからキャプテンにも選ばれた。

 「キャプテンは選手たちで話し合って決めたのですが、僕の明るく盛り上げるキャラクターが良かったのか、みんなが『ハッブスだろ』と言ってくれて。『俺でいいなら!』という感じで決まりました」

 スワローズジュニアでは、ヤクルトスワローズで10年間の現役生活を送った河端龍コーチから投手としての基礎を学んだ。特に配球に関する話は知らないことばかりで、非常に勉強になったとハッブス投手は振り返る。

 「河端コーチの指導は、とても基本に忠実でわかりやすかったです。配球に関する学習では、何がピッチャーカウントで何がバッターカウントなのかを教えていただき、頭を使って投球することを学びました」

 ヤクルトスワローズジュニアで大きな経験を積んだハッブス投手は、小学校を卒業後は兄が所属した上尾シニアへ入団する。チームを率いる溝口勝久監督とも小学校時代から面識があり、練習で鍛えられる兄の姿も普段から見ていた。「ここなら大きく成長できそうだ」と意気込んで入団したという。

 だが、すでに178センチまで身長が伸びていたハッブス投手。身長に対してまだ筋肉の成長が追いついておらず、投球フォームも下半身を使った投球が出来ていなかった。

 怪我の防止やクセの無い投球フォームを作る目的から、溝口監督は2年生までは体作りとシャドーピッチング中心のフォーム作りに専念させて、試合での登板も極力控える方針を決めた。

 「入団したときは正直ノーコンでしたが、幸いにもフォームを大胆に変えなくてはいけない変な癖はありませんでした。私が指導することが出来るのは(練習日の)土日だけですので、とにかくここでは変な癖はつけさせず、残りは高校に入ってやってもらおうと思いました」

[page_break:高校でも将来が楽しみだねと言われるピッチャーに]

高校でも将来が楽しみだねと言われるピッチャーに

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ハッブス大起

 ハッブス投手は溝口監督の言いつけをしっかり守り、自宅でも時間を見つけてはシャドーピッチングに取り組んだ。課題だった下半身主導の投球フォームに、腕を大きく使うことも意識し、また学生時代からアメリカンフットボールが大好きだったという父のチャーリー・ハッブスさんの助言も受けながら体幹トレーニングにも取り組んだ。

 「監督さんにはフォームのバランスが大事だと常に教えられて、家でシャドーピッチングをするときもバランスを意識しました。
また、父からは体幹トレーニング以外にもたくさんのことを教わっています。よく読書をしなさいと言われているので、練習にいく車の中でも本を読んだり、また野球に対してもプランを持って取り組みなさいと言われてるので、目標から逆算して練習したりしています」

 2年間をかけてじっくりと心身を磨いてきたハッブス投手。

 入団時は60キロ台だった体重は80キロに達し、球速も142キロまで到達。また身体能力測定では握力は60キロ、50メートル走は6.3秒を記録するなど中学生としては破格の身体能力を持ち、打撃でも4番打者として中学通算12本塁打を放つ活躍を見せた。

 溝口監督は強いバネを活かした俊足にも惚れ込んでおり、「陸上選手をやっても大成するかもしれません」と太鼓判を押す。ハッブス投手に俊足について問うと「スタートや走塁技術はまだまだです」と謙遜するが、「でも顔はケンブリッジ飛鳥選手に似てるとよく言われます」と付け加えてニヤリ。走塁面もここから伸ばしていくつもりだ。

 中学3年生からは満を持して実戦経験を積んでいく予定だったが、コロナウイルス感染拡大の影響で登板機会は大幅に減り、最後の夏の大会も練習不足から本調子とは言えない中での投球となった。中学野球は消化不良の幕切れとなったが、この悔しさは高校野球の舞台で晴らすつもりだ。

 「出場できるのであれば、1年生から試合に出場したいなと思っています。ただそんな甘くないことは分かってるつもりなので、自分の武器を考えながら結果により一層こだわっていきたいです。球速は高校卒業までに155キロを出して、最終的には高卒でプロに行きたいと思います」

 もちろん溝口監督も、ハッブス投手の高校での活躍に大きな期待を寄せる。

 「本人は155キロを出したいと言っていますが、出してくれよという感じですね。高校に入っても、将来が楽しみだねと言われるようなピッチャーになって欲しいです」

 上尾シニアは1977年に設立され、今年で43年目を迎える歴史と伝統あるチームであるが、これまでプロ野球選手は輩出していない。ハッブス投手がプロ野球の扉をこじ開けて、チームの新たな歴史を作ることができるか注目だ。

(記事=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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