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甲子園出場13回の伝統校・比叡山(滋賀)の復活を担う4人の逸材【前編】

2021.01.11

 春5回、夏8回の甲子園出場経験を誇る比叡山。1912年創部と100年を超える歴史があり、滋賀県勢として夏の甲子園初勝利も成し遂げている伝統校だ。

 だが、21世紀に入ってからの甲子園出場は2015年夏のみ。近江滋賀学園が台頭する中で苦戦を強いられてきた。それでも今年は秋の滋賀大会4強、1年生大会では近江を下しての準優勝と上昇ムードが漂っている。夏に6年ぶりの甲子園を目指す比叡山の現在地に迫った。

順調に進むチームマネジメント

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比叡山のグラウンド風景

 比叡山は山のふもとにグラウンドがあり、外野フェンスの向こうには雄大な比叡山の姿を見ることができる。2011年秋から指揮を執る河畑成英監督は「ここに来ると大人の方が喜ぶんです」と話す。

 2015年夏に甲子園出場を果たしてからは近畿大会に2度出場した一方で、初戦敗退に終わることも何度かあった。不安定な戦いが続いた5年間を河畑監督はこう振り返る。
 「なかなか思い通りに進んでいないのが正直なところです。こちらがやりたい野球をやり切れない年もありますし、投打のバランスが噛み合わないのが何年か続いている気がしますね」

 投手力のある年は打撃陣が援護できず、打線に自信がある年は投手陣が踏ん張れないといった状況が続いていたのが甲子園に手が届かない原因となっていた。

 今夏の独自大会は3年生15人を全員ベンチに入れ、残りの5人が2年生というチーム構成で戦った。その中で野手4人がスタメンに名を連ねており、河畑監督は新チームでの戦いに自信を見せていた。

 中でも中心選手として期待されていたのが三塁手の島口裕輝(2年)。大津瀬田ボーイズ時代には大阪桐蔭松浦慶斗池田陵真らとともに2016カル・リプケン12歳以下世界少年野球大会の日本代表に選ばれた経験を持つ。

 比叡山でも1年夏からクリーンアップに座り、打線の軸として活躍してきた。身長184㎝、体重90kgの恵まれた体格の持ち主で、技術とパワーを兼ね備えた強打者だ。

 「試合経験のある子を前に据えて、キャプテンシーの強い子に脇を固めさせて、両輪で動く方がいい」と河畑監督は他に主将向きの人材がいることを承知の上で島口を主将に指名。「本来キャプテンしてほしいレベルの子たちが島口を凌ぐくらいにチームを鼓舞してくれている」とここまでは河畑監督の思惑通りにチームマネジメントは進んでいるようだ。

[page_break:自信をもって挑むも近畿大会にあと一歩届かず]

自信をもって挑むも近畿大会にあと一歩届かず

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夏休みに急成長した桐山倫太朗

 今年のチームは島口以外にも野手に好素材が揃う。副主将で旧チームから1番に座る藥師志(2年)はミート力が高く、声でもチームを引っ張る存在。チーム屈指の長打力を誇る中角飛雄馬(2年)や状況に応じた打撃ができる川田夢志(2年)は島口、藥師とともに「コンスタントに結果を残してほしい」と河畑監督が期待を寄せている。

 投手陣は夏まで3年生が主体となっていたが、夏休み中に桐山倫太朗(2年)が台頭。球速は130キロ台前半ながらスピンの効いたストレートを投げる本格派右腕だ。待望のエースが誕生し、練習試合の結果も上々。自信を持って秋の滋賀大会に臨んだ。

 2回戦から登場した比叡山八幡に10対0(6回コールド)、彦根東に6対0、近江兄弟社に7対0(7回コールド)と快勝を続け、準決勝に進出した。

 しかし、準決勝の滋賀学園戦では初めての連投となった桐山が疲れもあり、初回から4失点。「今まで自分たちがやってこなかった試合展開になったので、逆境に立ち向かう力がなかったのかなと思います」(島口)とその後も負の連鎖は止められず、5回までに8点のビハインドを許した。

 それでも後半に入って疲れが見えた滋賀学園のエース・阿字悠真(2年)を攻め、8回を終えて7対9と2点差まで迫った。最終回にもチャンスを作ったが、走塁ミスもあり、無得点。あと一歩で近畿大会を逃す結果となった。

 今回はここまで。次回は秋季大会の振り返りをもとに現在はどのような練習をされているのか迫っていきます。次回もお楽しみに!

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創部100年を超える伝統校・比叡山(滋賀)は投手力と打力で新時代を築く【後編】

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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