関東一vs日大三
関東一5年ぶり5回目の春制覇!市川、被安打2の完封で日大三を破る
2安打完封の市川祐(関東一)
今日は夏至。2日前には夏の大会の組み合わせも決まっている。コロナ禍で2カ月遅れの決勝戦になった。それでも、間が空いたことにより、日大三は左腕の宇山翼、関東一は右腕の市川祐の両エースが満を持して先発して、ガチンコ対決になった。
東京の高校球界を代表する好投手の2人。1回はともに三者凡退に抑える快調な立ち上がりで、投手戦が予想された。
2回裏二死まで1人の走者も出なかったが、突破口を開いたのは、好投している関東一の6番打者・市川だった。初球を叩き中前安打にすると、続く五十嵐奬斗は死球で一、二塁。8番、捕手の石見陸は、関東大会で頭部に死球を受け心配されたが、戻ってきた。石見は右前安打を放ち市川が還り、関東一は1点を先制。畳み掛ける関東一は、この試合スタメンに抜擢された9番の滝川 柊憂が右前安打を放ち1点を追加した。
打者一巡は完全に抑えられた日大三だが、4回表二死から3番・井坪朝陽が左前安打を放ち、初の走者になる。すると4番・山岡航大、5番・土屋マックス清文の内野ゴロを、関東一にしては珍しく、続けてエラー。二死満塁となる。打席には6番・鎌田慎也。鎌田は6番打者ながらチャンスに強い。それでもマウンド上の市川は、「エラーはつきもの」と動じない。鎌田も粘ったが3ボール2ストライクからの8球目、内角ギリギリにズバッと決まり三振。日大三は貴重なチャンスを生かすことができなかった。
この試合の市川は制球がよく、与四死球はゼロ。「真っ直ぐで押すことを意識しました」という投球に威力がった。
宇山翼(日大三)
ピンチを逃れた関東一はその裏、6番・市川が左前安打で出塁すると7番・五十嵐は一塁手と投手の間に転がる絶妙のバントが内野安打になったうえに、日大三の守備の乱れも誘い無死一、三塁。8番・石見はキッチリ中犠飛で市川を還し1点を追加。9番・滝川も中前安打を放ち、またも下位打線で2点を追加した。
さらに6回裏は死球で出塁した7番・五十嵐が犠打と内野ゴロで三塁に進み、1番・染谷真ノ介の三ゴロを、日大三の三塁手・川島柾之がはじき、1点を追加した。
宇山はこの回を投げて降板。「ブルペンで調子が良かったので、簡単に考えてしまった」と語るように、立ち上がりは快調であったが、その分、素直に行き過ぎた感じがする。
日大三は、5回以降は9回表の先頭打者の1番・星憂芽が右前安打で出塁した以外は1人の走者も出すことができず、市川が9回を投げて被安打2の完封。関東一が5年ぶり5回目の優勝を決めた。
試合後米澤貴光監督は、「この時期やらせてもらい感謝しかありません」と語り、市川は、「優勝したことで自信になりました」と語った。
一方日大三はコロナの陽性者が出たため、先月20日から4日まで練習ができなかった。ただそのこととこの試合の結果については、「影響はないです」と小倉全由監督はきっぱり言った。かつては関東一の監督であった小倉監督にとって、関東一の米澤監督は教え子である。両者が決勝戦で対戦するのは初めてのこと。「いいチームを作っている。こちらが学ぶことも多い。教え子の監督とやれる。いい星の下に生まれたと思います」と、感慨深く語った。恩師に勝った関東一の米澤監督であるが、「今回はコロナという形で大変なことがありました。試合ができたことが嬉しかったです」と、日大三の状況に思いを寄せたうえで語った。
コロナは誰が感染するか分からない。この夏は例年の暑さ対策に加え、コロナにも細心の注意を払う必要がある。さらに東京五輪が開催され、東京はいつもと違う状況になるだろう。
春の大会の終わりを告げると同時に、夏に向けてのスタートになったこの試合。勝った関東一にとっても、負けた日大三にとっても貴重な経験になったに違いない。この1年以上、コロナに振り回されているが、状況に柔軟に対応し、球児たちの活動の場を確保したことを評価したい。
(取材=大島 裕史)