Column

「ゴロではなく、フライを打て」MVP候補・村上宗隆の九州学院時代の恩師が語った飛躍の原点

2021.12.15

「ゴロではなく、フライを打て」MVP候補・村上宗隆の九州学院時代の恩師が語った飛躍の原点 | 高校野球ドットコム
高校時代の村上 宗隆内野手

「ゴロではなく、フライを打て」MVP候補・村上宗隆の九州学院時代の恩師が語った飛躍の原点 | 高校野球ドットコム村上宗隆 恩師が語るシリーズ
■第1回
「ゴロではなく、フライを打て」MVP候補・村上宗隆の九州学院時代の恩師が語った飛躍の原点
■第2回
なぜ村上宗隆は高校時代、捕手へコンバートしたのか?その真意とは
■第3回
ライバルにするのは清宮幸太郎らではない。九州学院の恩師が村上宗隆に授けた金言
■第4回
「あいつは世話好きのおばちゃんです」村上宗隆の恩師が語るキャプテンシーの素質
■第5回
村上宗隆の恩師が褒めた「数字」と「姿勢」。そしてこれから願うこと

 2021年の日本プロ野球はヤクルトの日本一で幕が下りた。15日には「NPB AWARDS 2021」が行われ、熊本出身の1人の若者が、セ・リーグ本塁打王として晴れの舞台に臨む。

 ヤクルト村上宗隆内野手(九州学院出身)。プロ4年目の今季、39本塁打を放ち、巨人の岡本和真内野手(智辯学園出身)とともに、セ・リーグの本塁打王に輝いた。そのほか、283塁打はリーグトップ、112打点、長打率.566がリーグ2位。東京五輪でも金メダルを決める本塁打を放つなど、日の丸のスラッガーとしても活躍した。

 その基礎は故郷熊本・九州学院の3年間で培われたといっても過言ではない。その秘密を探るため、当時の恩師、坂井 宏安・九州学院前監督にインタビューした。言葉をひも解くと、「村上宗隆」がスラッガーへと変貌を遂げる過程が分かってくる。

 今回は長距離砲の秘密に迫る。

 プロ4年目を最高の結果で締めくくった村上について、坂井前監督もねぎらいの言葉から始まった。

坂井前監督(以下坂井) 長いシーズン、よくぞ乗り切れたと思います。体力をつけたのも練習のたまものでしょう。連絡はあまりとってないですよ。五輪出場が決まったとか、優勝しましたとか、そういう連絡はありますが、こっちからは連絡しないようにしてます。我々と村上ら選手は(生活の)時間帯も違うし、こっちからよく連絡していたら村上は集中できせんから。

 村上を最初に見たのは入学前の練習見学。その姿に「一目ぼれ」していた。

坂井 一番最初の時は大きいなと。体が出来ている子だなと思いました。初めて練習参加した3月25日だったかな、ユニフォームの着こなしがいい、ユニフォーム姿がとてもいいと思った。練習しても声が出ているし、野球を楽しんでやっている子だなと思いましたね。

 過去、九州学院から「松坂世代」の吉本 亮内野手(現ソフトバンク2軍打撃コーチ)、高山 久外野手(現西武1軍打撃コーチ)の2人のスラッガーを輩出しているが、その再来を予感していた。

坂井 久しぶりに吉本、高山のふたりに匹敵する感じがありました。トスバッティングは柔らかいし、バットを持っているけど、投げる相手とキャッチボールしているようなトスだった。普通はバットと球が衝突してしまうが、力も抜いて、力まないトスだった。天性でしょうね。野球をしていた兄を真似してやっていただろうし、出だしが良かったんでしょう。

 そのトス打撃の上手さにほれ込むと、ある指令を出した。


「ゴロではなく、フライを打て」MVP候補・村上宗隆の九州学院時代の恩師が語った飛躍の原点 | 高校野球ドットコム
九州学院・坂井 宏安前監督

坂井 バットの芯ではなくフライを打ちなさいと言っていた。球に回転を与えられるように。フライは構わないよ、フライを打てと。ゴロはダメだよと。打球を飛ばすというのが彼らの喜びでもある。投手ならスピードボールを投げたくなるでしょう。彼は飛ばすことには興味を持った。

 村上はどんどん飛距離を伸ばしていく。九州学院の専用グラウンドの右翼後方にあるサッカー場へ放り込むことは当たり前。左中間から左翼は一般道路があってその先は竹藪になっており、吉本、高山が右打者だったこともありネットを高くしているが、左打者の村上はそれを越すようになる。

坂井 スコアボード後方に駐車場があるんですが、何回か車にもぶつけました。だから、フリー打撃の時はいい球は使えないんです。古い球というか飛ばない球でないとダメだった。新球だとポンポン飛ばしてしまいます。藤崎台球場で沖縄尚学とやったのが一番飛んだかな。ライトはるか、場外に飛んだらしいです。あとは、神奈川の慶應義塾高校と練習試合したとき、慶應義塾高校のグラウンドにある高いライトのネットをあと少しで越すくらいまで飛ばしましたよ。

 左翼、センター方向にも、たぐいまれな飛距離を生み出せるようになった。「フライを打て」「芯で捕えてもダメ」「ゴロもダメ」。高校生に成長する喜びを実感させるため、徹底的にフライを打たせた。アベレージヒッターではなく、スラッガーとしての素質を見抜いた坂井前監督の眼力と指導力が、村上をとてつもなく大きくした。

(記事=浦田 由紀夫

【第2回を読む】

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.27

慶應ボーイの学生監督が率いる慶應志木 来る夏は「現役の時よりも緊張するかもしれません」

2024.06.27

山形の組み合わせ決定!2年ぶり甲子園狙う鶴岡東は山形中央と南陽の勝者と対決<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.27

【徳島】28日に抽選会!阿南光・吉岡を攻略する高校が現れるか<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.27

【北北海道】空知支部予選では滝川、美唄尚栄がBブロック決勝戦進出!【2024夏の甲子園】

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.22

南北海道室蘭支部が開幕!北海道栄、苫小牧中央がコールド発進【2024夏の甲子園】

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在41地区が決定、長崎、高知、新潟、大分などでシードが決まる〈6月10日〉

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】