Column

DeNA・三浦大輔監督の母校・高田商 夏、秋に天理を撃破できた理由【前編】

2022.04.03

 DeNA・三浦大輔監督の母校として知られている奈良高田商(奈良)。春3回、夏1回の甲子園出場経験があり、昨年は夏、秋ともに準決勝で天理を破って準優勝という結果を残している。智辯学園天理奈良大附など強豪私学が集う奈良県において、存在感を放っている公立校の強さの秘密に迫った。前編は練習の試みを紹介する。

練習から、いい空気感

DeNA・三浦大輔監督の母校・高田商 夏、秋に天理を撃破できた理由【前編】 | 高校野球ドットコム
東口虎雅

 練習拠点となっているのが、校舎に隣接する大和高田市民運動場。市の施設ではあるが、大半の個所は原則的に奈良高田商野球部が優先的に使えることになっている。

 2013年10月から指揮を執り、17年春にチームを甲子園に導いていた赤坂誠治監督は、「正直、こちらもビックリしています」と昨年の躍進について語る。夏、秋ともに天理を下したのは、指揮官も予想外だったようだ。

 現チームに関しても夏休みの練習試合でほとんど勝てず、能力的に優れているチームではないと感じていたそうだが、「自分たちで考えて、空気を作るのが、例年より長けているかなと思います」と赤坂監督は1つの光を見出していた。

 それを象徴する場面がアップで見られた。数人でグループを作り、腕立て伏せやブリッジなどのトレーニングを2分ごとにローテーションで行っていたのだが、そのインターバルの度に1人の選手が周囲を鼓舞する声をかけ、それに全員が反応して盛り上がる。ストイックに取り組む学校が多い中で、少し異質な光景だ。

 こうした空気で取り組んでいる理由について主将の澤村一辰(3年)はこう話す。

「昨年のチームが楽しむことをテーマにしていて、それで準優勝できたので、僕たちも楽しむところは楽しむというのはテーマにしてやっています」

 楽しみながらも真剣に野球に取り組むのが奈良高田商の特徴だ。こうしたチームカラーの中で力を発揮したのが、1年夏からリードオフマンに座る東口虎雅(2年)である。

「僕はラッキーボーイです」と話す東口は天真爛漫な性格だ。積極性の光る打撃だけでなく、キャラクターとしても非常に魅力がある。そんな彼の人間性を上級生が受け入れ、チームに順応したことで1年生ながら戦力として活躍。夏の県大会で準優勝する原動力になった。

「3年生の中に入れても変に東口も気を遣わないし、3年生も東口に良い距離間で接してくれました。夏の大会では見事に東口の良さが出たのかなと思っています」(赤坂監督)

 3年生21人、2年生41人と県内屈指の大所帯ではあるが、個々の能力では強豪私学に及ばない。そこで澤村はチーム力で戦うことを意識していると話す。

「僕たちは智辯学園さんや天理さんみたいに強く打ったり、上手く守ったりというのはなかなか難しいかもしれないですけど、それ以外で元気や日々、赤坂先生から教わっている精神面は夏の大会にも関わってくるので、そこで詰めるとこを詰めて、甲子園を目指して頑張っていきたいと思います」

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守備と走塁に9割

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赤坂誠治監督

 さらに練習にも大きな特徴がある。それは打撃練習をあまりせず、守備と走塁に大半の時間を割いているという点だ。取材日の全体練習でも外野手が雨天練習場で少し打撃練習をしていただけで、バッテリーや内野手はバットを振る機会が全くなかった。昨年の夏休みも守備と走塁が練習の約9割を占めたという。その理由について赤坂監督はこう語る。

「打たなければならないという時代なんですけど、打てないものは打てないなと思ってしまうので、ディフェンスで点を抑えて、走塁で点を取るというそんな感じで考えています」

 不確定要素の多い打撃よりも守備や走塁の精度を高めた方が勝利に近づくだろうというのが、赤坂監督の考えだ。この方針が明確になったのが、一昨年の秋である。当時のチームは打力に優れており、赤坂監督は打撃強化に力を入れていた。だが、秋の県大会では初戦の橿原戦で守備が乱れて4対14の6回コールド負け。元から守備と走塁を重視してきたが、今までにない負け方をしたことで、改めて原点に戻ることにしたという。

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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