試合レポート

日大鶴ヶ丘vs豊南

2022.09.23

日大鶴ヶ丘が都大会出場へ 夏の悔しさ知る繋ぎの4番が2本のタイムリー

日大鶴ヶ丘vs豊南 | 高校野球ドットコム
勝ち越し打にガッツポーズする日大鶴ケ丘4番・後藤健大

<秋季東京都高校野球大会1次予選:日大鶴ヶ丘5-4豊南>◇23日◇代表決定戦◇日大鶴ヶ丘グラウンド

 日大鶴ヶ丘は夏の西東京大会でベスト8まで勝ち上がるも、準々決勝で都立富士森に敗れ、悔しい結果となった。この秋も、豊南に苦しみながらも勝利を手にし、都大会への出場を決めた。

 8回が終わって4対4。初回に豊南が先制するなど、思わぬ試合運びになったものの、「試合前のアップなど、準備の段階から『接戦になるだろうな』と予感はしていました」と日大鶴ヶ丘・萩生田監督にとっては想定内の試合展開のなかで、試合を決めたのは4番・後藤健大内野手(2年)だ。

 9回、2死三塁から中前へ適時打。シャープに振り抜いた鋭い打球が二遊間を破った。1塁ベース上に到達した際には、自軍のベンチへ向けて右腕を高くつき上げて喜びを爆発させると、直後の守備も、ゲームセットとなる最後のアウトを自らのプレーでさばいた。言葉通り、試合を決めた選手である。

 試合後、都大会出場に大きく貢献した後藤は「(都大会出場に)ほっとしています」と安堵の様子。調子はイマイチだというが、この試合で2打点を記録するなど、4番にふさわしい活躍だった。

 今夏の都立富士森との一戦。後藤は5番でスタメン出場したが、結果を残すことができず、悔しさをかみしめた。新チーム当初は5番打者を任されていたが、8月中旬ごろから4番に抜擢された。中学時代、横浜青葉シニアでも5、6番を任されていた後藤にとっては大きな役割となったが、「後ろにはいい打者がいるから、自分で決めずにつなごう」とあくまでつなぎ役に徹した。

 打撃フォームにも、意識の表れが見える。懐を大きくして引き付けると、シャープなスイングで確実に捉える。長打ではなく、あくまで単打を打とうとしている様子は、萩生田監督も「遠くに飛ばそうとせずに、しぶとく打てるようになり、打率が残せるようになった」と成長を感じ取っていた。

 夏の大会、「フライアウトが多かった」ことを反省し、バットをどれだけ体の近くで通せるのかを課題にして練習に取り組んだ。エンゼルスの大谷翔平投手(花巻東出身)やヤクルト・村上宗隆内野手(九州学院出身)を参考にしてインサイドアウトを意識。「秋の大会で優勝するためにも、打てるようにしなければいけない」ということで始めた全員での素振りはもちろん、ときにはゆっくり振って、バットの出し方を体に覚えさせ、シャープで鋭い打球を飛ばそうとしてきた。

 そして豊南戦、夏からの成長を示す適時打2本を放ち、4番としての務めを全うし、都大会の切符をつかんだ。「捉えきれていない部分がある」と内容には課題を残したが、まだ公式戦は続く。萩生田監督も「勝てたからこそ、反省して出てきた課題を次の公式戦へ向けて克服できる。良い準備期間を過ごせる」と話した通り、さらにステップアップできるチャンスをつかんだ。苦しみながらつかんだ勝利を都大会で、どんな形で生かすのか。

(記事=田中 裕毅

[page_break:日大鶴ヶ丘から6回5奪三振 豊南の背番号11の成長に注目]

日大鶴ヶ丘から6回5奪三振 豊南の背番号11の成長に注目

日大鶴ヶ丘vs豊南 | 高校野球ドットコム
豊南2番手・松江音弥

<秋季東京都高校野球大会1次予選:日大鶴ヶ丘5-4豊南>◇23日◇代表決定戦◇日大鶴ヶ丘グラウンド

 甲子園にも出場した実績を持つ日大鶴ヶ丘相手に、豊南は8回まで4対4の接戦を演じた。弓田監督は「四死球やエラーをしているようでは勝てない」と現状に満足は一切なく、「(冬場は)課題をもって自信がつくような練習をやってほしい」とさらなる飛躍を願った。

 なかでも大きな期待を寄せるのが、日大鶴ヶ丘戦、2番手でマウンドへ上がった背番号11・松江音弥投手(2年)だ。
身長176センチだが、軸足を曲げてしっかり重心を乗せた状態でセットポジションに入ると、縦回転から最速130キロほどで切れのある直球を投げ込む。加えて、この夏に「抜く感覚がつかめてきた」という大きく曲がるカーブを武器に躍動。初めての公式戦のマウンドだったが、強豪・日大鶴ヶ丘相手に、5三振を奪う結果を残し、「自信になりました」と話す。

 1年生の時もオーバースローで「真上に近いところから投げていた」と、とにかく上から振り下ろそうとしていたが、ケガなどの影響で一時はサイドスローに転向。活躍のチャンスを窺っていたが、新チームから再びオーバースローへ戻した。

 フォームを最初から作り上げていくなかで、「腹筋に力を入れることで、重心を意識するようになった」という。サイドステップなどで感覚を磨き、体幹を使った投球ができるようになったことで、球速、コントロールともに改善された。

 夏から主戦で投げていた花田大知投手(2年)に続く投手を求めていた弓田監督は、松江が日大鶴ヶ丘相手に好投したことで「(松江が)育ってくれば、チームとして形ができてくる」と期待を寄せる。野手陣にも経験者がおり、春以降が楽しみな豊南。春は再び予選から始まるが、どんな野球を見せてくれるか楽しみだ。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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