鹿屋中央vs鹿児島城西
勝負どころで魅せた集中力・鹿屋中央
鹿屋中央勝利
<第151回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:鹿屋中央10-6鹿児島城西>◇8日◇準決勝◇平和リース
今大会、ナンバーワンの好勝負として記憶に残るゲームになるだろう。鹿屋中央と鹿児島城西。鹿児島の新チームでトップクラスの実力を秘めた両チームが魅せる勝負を繰り広げた。
前半は鹿児島城西が圧倒的に優位に試合を進めた。
2回に5番・池野 航太(2年)の右越え三塁打、6番・俣木 将伸(2年)の犠牲フライで2点を先取。
4回には先発の8番・芦谷原睦(2年)が左翼席に特大3ランを放った。
6回表は9番・田畑諒太郎(2年)の中越え二塁打で6点目。夏準々決勝で苦杯をなめた鹿児島城西があわやコールド勝ちで勝ち切るかと思われた。
5回まで散発2安打だった鹿屋中央打線が6回裏に爆発。打者13人9安打を集中し、2番・大坂 塁(2年)の中越えランニング満塁弾などで9点を挙げて逆転に成功した。
7回には8番・菖蒲 怜真(2年)の右越え三塁打で10点目を挙げた。
鹿児島城西は9回表1死満塁と一打同点にチャンスを作ったが、鹿屋中央の3番手・村山 源(2年)が連続三振で切り抜け、2時間25分の熱戦に決着をつけた。
劣勢を強いられた鹿屋中央だったが6回裏の見事な集中打で逆転勝ち。山本 信也監督は「勝つとしたら打ち合いしかないと思っていたが、まさか本当にそうなるとは」と選手たちが勝負どころで魅せた集中力に脱帽していた。
6回表まで0対6。あわやコールド負けの展開だった。先発・芦谷原の動く球をとらえ切れず、得点機もなかなか作れなかったが「ここで打ち勝つチームが九州にいけるチーム。それだけの練習はしてきた」とリードオフマンの村山。6回裏は村山が右前打で口火を切り、6連打を含む9安打を集中。打者13人で9得点のビッグイニングで一気に勝機を手繰り寄せた。
「踏み込んで打て!」。芦谷原を打ち込んで2点を返してから、エース明瀬諒介(2年)がリリーフ。140キロを超える速球を次々と繰り出すが、緊急登板だっただけに、変化球の制球が定まらない。直球一本に狙いを絞り、気持ちで引かず、しっかり踏み込んで打つことだけを全打者が徹底した。
圧巻は2番・大坂のランニング満塁弾。3ボール1ストライクから真ん中の直球を見逃し「しまった!」と焦ったが気持ちを切り替え、フルカウントから同じ直球を今度は逃さず左中間深くに運んだ。「前の打席で凡退したのを仲間がとり返してくれた。絶対打って返したかった」。気持ちで俊足を飛ばし、逆転のホームに頭から滑り込んだ。
最後の山場は9回表1死満塁で4番・明瀬を迎えた場面。3試合連続本塁打の今大会No.1の強打者を迎え、もはや申告敬遠で勝負を避けることもできない状況だった。
それまで勝ちを意識して制球が不安定になった3番手・村山だったが「ここで抑えたら勝てる!」と冷静に投球を組み立て直す。外角低め134キロの直球で見逃しの3球三振。続く5番・池野も見逃し三振で「奇跡の逆転劇」(山本監督)を締めくくった。
(取材=政 純一郎)