Column

国体制覇で三冠を達成した大阪桐蔭から見る先を見据えた戦い方

2022.10.13

国体制覇で三冠を達成した大阪桐蔭から見る先を見据えた戦い方 | 高校野球ドットコム
国体での大阪桐蔭ナイン

国体制覇で三冠を達成した大阪桐蔭から見る先を見据えた戦い方 | 高校野球ドットコムトーナメント表
国体の組み合わせ

国体制覇で三冠を達成した大阪桐蔭から見る先を見据えた戦い方 | 高校野球ドットコム大会の詳細・応援メッセージ
2022年 第77回 国民体育大会

国体制覇で三冠を達成した大阪桐蔭から見る先を見据えた戦い方 | 高校野球ドットコム気になる学校への応援メッセージはこちら
学校検索ページ

一番の原動力はエース・川原 嗣貴の成長

 2022年の大阪桐蔭(大阪)のチームで、今センバツから大きな成長を遂げたのは、やはり川原 嗣貴投手(3年)ではないだろうか。センバツ前の評判では、2年の前田 悠伍投手を中心に投手陣を回していくと予想されていた中で、川原の成長は大きかった。

 川原は、春夏の甲子園と国体の三大会の初戦に先発した。川原にとって春のセンバツが転機だったのは間違いない。秋季大会全体の成績では、申し分なかったが、明治神宮大会の敦賀気比(福井)戦で4失点を喫して、全国区の相手には課題を残した。しかし、センバツでは初戦の鳴門(徳島)戦で1失点の完投勝利を挙げた。そこで自信をつけた川原は、國學院久我山(東京)戦も、7回を2失点に抑えた。最後は決勝の近江(滋賀)戦でリリーフとして優勝投手になった。

 夏も初戦を任されて苦しみながらも勝利する。2戦目の二松学舎大附(東東京)戦では、甲子園で初の完封勝利を記録。球速も147キロを記録して成長を見せた。夏は準々決勝で敗れたものの、国体も初戦と決勝で先発した。夏からは文句なしのエースになっていたことがわかる。夏の優勝校の仙台育英(宮城)と聖光学院(福島)に対して完投勝利を挙げて、世代最高の投手と言っても過言ではないレベルにまで達した。

 特に、仙台育英打線を1失点に抑えたことは、さらに自信をつけたのではないだろうか。急成長を遂げて、三冠を達成したチームのエースとなった川原はプロ入り後にも注目だ。

国体覇者大阪桐蔭と夏覇者仙台育英から見る選手に関する運用力

 国体では春夏覇者の初戦で話題になった両校だが、仙台育英の甲子園における投手起用を見ると、今後の高校野球におけるトレンドになりそうな継投策があった。それは、5人の投手陣を1試合あたりで、多くても80球前後に制限している運用だ。これまでは、エースと2番手が1試合ごとで、交互に投げることや、1試合で2人体制の運用が主流になりつつあった。

 その中で、仙台育英は少ない球数とショートイニングで継投策をして、決勝まで進んだ。多くの高校は、ショートイニングですら試合を作れずに投手を変えてしまうところが多い中、ここまでバランスよく構築させたことは非常に画期的である。高校野球のレベル感では、強豪校となると2巡目以降で投手の球筋に合わせてくるが、細かい継投によって、防ぐこともできる。

 しかし、この継投策にもデメリットはある。投手が球数制限やショートイニングで、練習や実戦で投げていくが故に、長いイニングを投げることが困難になることだ。他のスポーツで例えると、箱根駅伝がマラソンよりも人気になったが故に、フルマラソンで活躍できる選手がなかなか出てこないことと類似する課題に陥る可能性がある。

 野球でも同じだ。確率の視点から言うと、先発から中継ぎ・抑えに回ると、活躍できる可能性は高まる。なぜなら、先発で登板する際は配分などを考えていないため、1イニングであれば、出力を高められるからだ。抑えから先発に転向して、活躍する投手もいるが、ごく稀なケースだ。そのため、投手の怪我や健康を考慮しすぎるが故に、必要な負荷をかけられず先発として活躍できる可能性が、低くなることも懸念される。

 このような視点で見ると、負担と成長はトレードオフではあることがわかる。そのため、大阪桐蔭の川原、前田、別所のように、長いイニングを投げられる投手をプロ野球の先発ローテーションに近い投手運用をする高校も、増えていく可能性も高いだろう。

 大阪桐蔭の場合は、この世代もだが、2018年も柿木、根尾、横川をローテーション化させている。さらに、甲子園では各投手登板から1、2戦目は中6日で、2、3戦目は中2日の運用だった。この点も、既に現代的な先発ローテーション化をしていた。野手陣を見ても、この世代であれば松尾がユーティリティープレイヤーとしての起用もあった。

 プロ野球ではなく、高校野球の段階で先発投手のローテーション化や中心選手のユーティリティー化など、高校野球ながらもプロの要素も取り入れている。どの高校よりも勝利しながら、マネジメントから戦略性も高いことを見ると、何年経ってもどの高校よりも1歩先にいる要因とも言える。

(文=ゴジキ)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.24

夏の滋賀を盛り上げる23人の逸材を紹介!近畿屈指の大型遊撃手・岩井(滋賀学園)、名門・近江の大エース西山など投打に人材揃い

2024.06.24

秋田の組み合わせ決まる!明桜が初戦からいきなり金足農と対戦、初戦から秋春の王者対決【2024夏の甲子園】

2024.06.24

昨夏甲子園出場の文星芸大附の卒業生進路紹介!主力は上武大、国士舘大、東京農業大へ進学!

2024.06.25

昨夏甲子園16強・北海の卒業生進路紹介!元巨人外野手の息子らが中央大、147キロ右腕は社会人へ

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.19

夏の兵庫大会のヒーロー候補21人!報徳学園・今朝丸、神戸弘陵・村上の「151キロ右腕二人」が筆頭格!投打にタレント揃いの東洋大姫路にも注目

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在41地区が決定、長崎、高知、新潟、大分などでシードが決まる〈6月10日〉

2024.06.21

なぜ高校野球の新たなリーグ戦は拡大し続けているのか?『チームのために個人がいる』ではなく『個人の成長のためにチームがある』~野球指導者・阪長友仁のビジョン後編~【『新しい高校野球のかたち』を考えるvol.7】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】