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イチロー、坂本勇人も語ったこれからの野球界に必要なこと データを超えた直感や感性

2023.01.08

イチロー、坂本勇人も語ったこれからの野球界に必要なこと データを超えた直感や感性 | 高校野球ドットコム
坂本勇人

 2019年に引退を表明したイチロー氏は、ある野球界の問題を挙げている。それは「現在の野球は、頭を使わなくてもできてしまうものになりつつある」ということだ。イチロー氏は「野球は頭を使わないとできない競技だ」という持論を強調していた。これこそ、エンターテイメント性はもちろんのこと、場当たり的な局面のアドリブ力が薄れ始める要因にもなることだ。

 データが可視化されて、便利な世の中になったトレードオフで、人間が行うモノコトに対して、面白みもなくなっている。

 ただこれは、言い方を変えれば、頭をなおさら使わなければいけない状況とも言える。時代が、急速に変化している今だからこそ、わかり得る問題なのかもしれない。人間も、論理を重視する「左脳派」と直感を重視する「右脳派」で分かれるとすれば、これまで基本的に左脳派が重宝されてきた。ただ、昨今はより右脳的な、感性やセンスで物事を把握していくスタイルも必要になっていくだろう。

 データに基づいたマニュアル的な指導法にも当然よいところはあるが、感性的な指導の場合は「伸び代に限界が生じない」という大きなメリットがある。データだけではわからない点が多々あることは強く主張しておきたい。野球にとらわれず、生きていく上でデータや数字に捉われず見ていくことも大事である。

 近年野球を見るにあたり、さまざまな視点から汲み取れるデータが普及しているのはみなさんもご存知だろう。これまで基本的に左脳派が重宝されてきた。ただ、昨今はより右脳的な、感性やセンスで物事を把握していくスタイルも必要になっていくだろう。例えば、データ野球の象徴としてよく取り上げられる極端な守備シフトも、実力が拮抗している中でやるから意味があるわけで、根本的な力がなければ一蹴されるだけだ。

 選手のひとつひとつのプレーがデータを超えた時にドラマが生まれ、最高のエンターテインメントとなる。それこそが野球の醍醐味ではないだろうか。データを把握することは大前提だが、その上で感性も生かした「感覚値」に統合して落とし込むことが、より次元の高いプレーを導くための鍵になっていくと考えている。

 また、巨人の坂本 勇人内野手(光星学院出身)も「才能、努力そして数字では推し量ることのできない『何か』が必要」と発言しており、数字やデータではわからないものに対しても、意識していることがわかる。プロ野球選手として、長年プレーをしている以上、成績やデータで判断されてしまう部分はあるが、それだけではないと思っている。坂本のような中心選手が気合いを入れている試合や場面は、そのシーズンや試合の勝負どころである。坂本が、勝負どころを見抜ける理由は、統計上のデータ解析にあるわけではない。長年優勝争いしてきた嗅覚や感覚で得たものだろう。

 直感や感性で「気づき」を得ることは、カテゴリーを問わず非常に重要なものになっていく一方だ(念のため記すと、この方たちは論理やデータが不要だとは一言も言っていない。その一歩先へどうやっていくか、という話だ)。さらに、経営者の神様と呼ばれる松下 幸之助も、こう言っている。「修練に修練を積み重ねたところから生まれた『カン』は科学にも勝る」。

 カンというと、一般的には何となく非科学的で、あいまいなもののように思われるけれども、修練に修練をつみ重ねたところから生まれるカンというものは、科学でも及ばぬほどの正確性、適確性を持っているのである、と言っている。これまでの成功や失敗の体験、その積み重ねで得られた知見によって、言葉やデータでは表せない直感、感性が生まれ、実際に機能するようになる。ロジックやエビデンスはいつか「限界値」に達してしまうので、それだけだと直感を持つ相手に劣ってしまうケースも出てくる。

 今後もデータの精密化はどんどん進んでいき、多くの選手やチームへ普及され続けていくと思われるが、真のトップに立つ選手やチームは、思わず「芸術点」をあげたくなるようなドラマチックなプレーをすることが、勝利のためにもファンのためにも重要になっていく。本当に凄い試合や強いチームになると、選手のプレーのクオリティーは必然的に高くなるため、内容的にも魅力のある面白い野球になる。

(記事:ゴジキ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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