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準備の大切さを再確認しよう

2023.03.15

準備の大切さを再確認しよう | 高校野球ドットコム

 こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

 待ちに待った野球シーズンがやってきました。オフシーズンに積み重ねてきた練習がこれから実践の場で活かされていくことでしょう。不用意なケガには気をつけて、来たるべき公式戦に備えてくださいね。さて今回はシーズン始めの時期に再確認しておきたい「準備の大切さ」についてお話をしようと思います。練習や試合に臨む準備の段階で、その日のパフォーマンスは大きく左右されるものです。どのようなことを心がければ良いでしょうか。

今日から始められる「規則正しい生活」

準備の大切さを再確認しよう | 高校野球ドットコム
足元のシューズやスパイクが摩耗していないかを確認しよう

 冬休みや春休みなど休暇期間が長くなるとついつい夜更かしをしてしまう…といったことはないでしょうか。学校の授業がない期間は生活リズムが乱れがちです。寝る時間が遅くなると起きる時間が遅くなってしまったり、早朝から練習や移動などで早起きをした結果、寝不足になってしまったり、といったことが起こります。良いパフォーマンスを支える根幹には「十分な休養=睡眠」が必要不可欠です。高校生であれば最低でも7~8時間は睡眠時間を確保したいところですが、皆さんは十分に睡眠を取っているでしょうか。パフォーマンスを支える準備として最も優先されるものです。

 寝不足は脳の判断力や集中力を鈍らせるだけではなく、体の動きにも影響を及ぼします。脳からの指令そのものが鈍くなるだけではなく、脳の指令に対して体がうまく反応しないと言い換えることもできます。練習の成果を十分に発揮するためにも、まずは十分な睡眠を取ること、そしてそのためには規則正しい生活を送ることを心がけましょう。起床時間を一定にし、そこから逆算して就寝時間を守るようにします。寝る直前までスマホを使っていると頭が冴えて睡眠の質が低下し、さらには視力低下や崩れた姿勢の一因ともなるため、スマホを見る時間を決めておく等メリハリをもって使うことが大切です。不用意なケガや体調不良を防ぐためにも、まずは生活リズムを整えることから始めましょう。

足元を見直してみよう

 準備の大切さとして、野球を行う用具についても確認してみましょう。特に気をつけたいのが足元をサポートするシューズ・スパイク類です。新しいものが良いというよりは、自分の体(足)に適したものを着用しているか、そしてシューズが摩耗していないかをチェックしてみましょう。「まだ捨てるにはもったいない」といってすり切れたランニングシューズを履いている選手を見かけることがありますが、すり減ったシューズは本来持つ靴の機能が低下し、足が靴の中で動いてしまったり、荷重が偏ってしまったりすることがあります。クッション性が乏しくなって、ジャンプの着地や片足で体を支えるような動作時に、足首や膝、股関節などの荷重関節(体重のかかる関節)に大きな負担がかかってケガをするリスクも高まります。足元のバランス機能が低下すると、下肢だけではなく、肩や肘を傷める要因となることもありますので、シューズは消耗品であると割り切って必要に応じて買い換えるようにしましょう。

[page_break:自分の体と対峙するウォームアップ/水分・エネルギー源の補給を忘れずに]

自分の体と対峙するウォームアップ

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全体でのウォームアップだけではなく、個人でも心身の準備を行う習慣をつけよう

 野球の準備としてまず頭に思い浮かぶのがウォームアップではないでしょうか。全体練習に入る前段階として、「これから野球をするために適した心と体を準備する」ために行うものです。ここでは全員がそろって行うウォームアップの前に、個人個人で確認しておきたいウォームアップについて考えてみましょう。

 体の状態(コンディション)は常に変化を伴います。昨日の疲れが残っているようであれば「少し体が重い」と感じるでしょうし、十分に睡眠を取って頭も体もスッキリとしていれば「今日は調子が良い」と感じるかもしれません。さらに個人の状態だけではなくその日の天気や気温、湿度、風の有無といった天候による影響も考慮する必要があります。比較的暖かい日はウォームアップにかける時間が短くても準備できるかもしれませんが、寒い日や風の強い日などは体が冷えやすく、時間をかけてウォームアップを行う必要があります。これらのことを念頭に置いて、体が動きやすくなるように自分にとって必要なストレッチやエクササイズなどを選んで行っていきましょう。ストレッチで筋肉や関節の動きに左右差が見られる場合はその状態を覚えておくことや、必要に応じて改善していくようにします。特に不安部位を抱えている場合は、その部位に負担がかからないように周辺部を含めて動きやすくすることが大切です。

水分・エネルギー源の補給を忘れずに

 チームで水分補給のためのジャグが準備されていたり、必要に応じて補食が準備されていたりするかもしれませんが、個人としても水分・エネルギー源の補給はあらかじめ準備しておきましょう。特に感染症対策として、同じコップを使って水分補給を行うことは避けた方が賢明です。それぞれがマイコップ、もしくはマイボトルを持参しておくようにしましょう。また湿気が多く蒸し暑い時期であれば、おのずと水分補給をすると思いますが、乾燥した空気の中ではつい水分補給を忘れてしまうことがあります。普段から「喉が渇いた」と感じる前に水分をとることを心がけておきましょう。

 また運動中はエネルギーをより多く使うため、補食をとることもパフォーマンスを支える大切な準備の一つです。練習前にはこれから体を多く動かすために必要なエネルギー源を確保するために、そして練習後には使ったエネルギー源を補うために補食が必要となってきます。補食の基本的な形としてはエネルギー源となる糖質(炭水化物)を中心としたものになりますが、練習後には糖質とあわせてタンパク質を含むものを準備できるといいですね。おにぎりの具材をタンパク質を含むもの(たとえば鮭、ツナマヨ、おかか、明太子、納豆など)にしておくとより手軽に補給しやすいと思います。

 パフォーマンスを支える準備として選手の皆さんが取り組みやすいことを中心に紹介しました。実際にやっていることや今まで意識していなかったことなどあると思いますが、自分でできることを一つ一つ丁寧に行っていくようにしましょう。

【準備の大切さを再確認しよう】

●規則正しい生活を実践することが最も優先されること
●睡眠不足は集中力を欠き、不用意なケガの一因ともなる
●シューズやスパイクの摩耗は下肢だけではなく上肢のケガを誘発することがある
●ウォームアップは自分自身との対峙する時間。体を確認しながら準備しよう
●左右差が見られる場合は必要に応じて改善していこう
●運動前後や運動中の水分補給・エネルギー源の補給も事前の準備が大切

文:西村 典子
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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