試合レポート

刈谷北vs名古屋経済大高蔵

2023.07.03


昨秋、今春の悔しさをぶつけた名経大高蔵が刈谷北に快勝

<第105回全国高校野球選手権愛知大会:名経大高蔵7-0刈谷北(7回コールド)>◇2日◇1回戦◇豊橋市民

 まだ梅雨明けとはなっていないけれども、前日1日来の雨が上がって太陽も照り付けてくると、蒸し暑さも格別となってくる。この日は、そんな中での試合が続いた。熱中症の対策も十分に取っておかないといけない。夏の大会は、特にそうしたコンディションづくりも大事になってくる。ことに、第3試合になってくると、朝からの待ち時間も長く、球場入りしてからもどう過ごしていくのかということも、試合までの大切な要素となってくる。ましてこの試合のように、前の試合(第1試合)で延長タイブレークの試合があったこともあり、予定時刻から1時間35分遅れてのプレーボールとなったらから、なおさらだ。

 名経大高蔵の選手たちは昨秋は名古屋市地区2次トーナメント前に集団コロナ感染となってしまって出場辞退。そして、今春は2次トーナメントで、あと1つのアウトで県大会進出というところから逆転されての悔しさも味わっている。だから、この大会に対する気持ちはより高まっていた。そうしたモチベーションで、待たされることはむしろ、自分たちのエネルギーを上げていく、そんな作用として捉えていたのかもしれない。

 その名経大高蔵の先発左腕、背番号10の橘 純大投手は好調な立ち上がりで、連続三振と飛球であっさり3人で抑える。まずは、気持ちの入った投球だった。そして、その裏の名経大高蔵は先頭打者が四球で出ると牽制悪送球で二塁へ進み、3番・山下 達也内野手が右前打でつないで一、三塁として、4番・成田 真史朗内野手がスクイズを決めて先制。2回にも名経大高蔵は先頭の7番・小島 脩杜内野手が右前打で出ると、四球とバントで進め、1死二、三塁から1番・伊藤 大翔外野手が左犠飛を放って2点目。さらに、2番・山田 大夢内野手の左前打で3点目が入った。こうして、名経大高蔵が主導権を取る形で序盤は進んでいった。

 そして名経大高蔵は5回にも山下の右前打などで一、三塁とすると、4番・成田の三ゴロの間に三塁走者がかえって4点目。いわゆる、「ゴロGO」の得点パターンは、麻王健之郎監督としては父麻生義之監督の率いる至学館ゆずりとも言えようか。

 名経大高蔵のマウンドは、5回からは背番号11の堀川 優人投手に代わり、7回は1死満塁のピンチを迎えたが、冷静に打たせて二併殺で切り抜けた。名経大高蔵の麻王監督は「ウチは全員野球なので、当初から継投は予定していて、この日も4人の継投で戦うことをイメージしていた」というが、結果的には、7回コールドゲームとなったことで2投手で終えることとなった。

 4点をリードした7回の名経大高蔵は先頭の立松 尚真外野手のバント安打から始まり、日野 碧也外野手が右前打で続き、バントで1死二、三塁。途中出場の山崎 善瑛内野手の右前打で三走をかえし、なおも一、三塁のところで、代打・恒川 祐人外野手が一塁線へスクイズを決めて6点目が入り、なおも2死二塁。1番の伊藤が中越え二塁打を放って7点目の走者がかえって7回コールドゲームが成立した。

 試合は結果的にはコールドゲームとなったけれども、刈谷北の清水 貫多投手の出来は決して悪いものではなかった。気持ちのこもった投球を続けていた。失策はあっても、思いを切らさず投げ切った。藤井将太監督はそんな清水投手を評価する。「清水は、悪くなかった。いい内容の投球でした。昨年秋も、今春もなかなか結果が出せなかったんですが、それから自分でも工夫して黙々と努力していました。その成果は出たのだと思います。結果としては勝てませんでしたが、内容はよかったと思っています。チームとしても、練習でやってきたことは一つひとつ出すことはできたのではないでしょうか」と、清水投手を含めてチームの努力を称えていた。ただ、「ロースコアで行こうということはイメージしていたのですが、3点目が早いイニングで入ってしまって、そこで焦りも出てしまいました」と、振り返っていた。

 「ウチは全員野球」ということを掲げる名経大高蔵は、この試合でも17人が出場した。悔しい思いをしてきたチームだけに、この夏にかける思いは強い。勝ち上がっていって父親率いる、今大会では優勝候補の1つに挙げる声も多い至学館と戦いたいというのは、麻王監督の思いでもあるようだ。

記事=手束 仁

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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