インナーマッスルの特徴とその働き
![](https://d3gsx8ol6pujbh.cloudfront.net/2023/09/29192713/741_pitcher.webp)
インナーマッスルの多くは関節の安定性に貢献する
インナーマッスルという言葉は皆さんどこかで聞いたことがあるかもしれません。筋肉は体の表層面にあるものだけではなく、直接見ることの出来ない体の深層部にも存在し、ミルフィーユのように幾重にも重なっています。インナーマッスルとは体の深層部にある筋肉のことを指し、これに対して表層面にある筋肉のことをアウターマッスルと呼びます。
インナーマッスルという言葉がよく用いられるのは、肩関節の中にある腱板(けんばん)筋群(ローテーターカフとも言います)ではないでしょうか。棘上筋(きょくじょうきん)、棘下筋(きょっかきん)、小円筋(しょうえんきん)、肩甲下筋(けんこうかきん)という4つの筋肉が肩関節付近に付着し、上腕骨を肩関節に引きつけて関節の安定性を高めます。インナー、アウターという分け方は、筋肉の位置を示す言葉ですが、インナーマッスルの多くは関節付近に付着して関節の支点を固定する求心性の力(中心に向かって近づく力)を発揮しています。筋肉は短いものが多く、大きな力を発揮するというよりは関節を安定させる働きを持ちます。一方でアウターマッスルは関節の外側にあってそれを包み込むように付着するため、インナーマッスルに比べて筋肉が長くなります。筋肉が長くなると筋肉の収縮によってより大きな力を発揮することができるため、動きを司ることに貢献します。
一方で例外的なものもいくつか存在します。たとえば股関節付近に付着する大腰筋(だいようきん)は深層部に位置するインナーマッスルに分類されますが、筋肉が長く股関節に対して大きな力を発揮することが可能です。反対に肩関節にある棘下筋は関節を安定させる働きをもちますが、位置的には表層部付近にあるアウターマッスルと言えます。このことからインナー、アウターという位置による分類ではなく、関節を安定させる「スタビリティ」、関節を動作させる「モビリティ」とその機能によって分けるという考え方もあります。
モビリティの筋肉によって関節を動かし、スタビリティの筋肉によってその動きを支えるというそれぞれの特徴を理解し、どちらも優劣なく強化していくことがケガ予防、そしてパフォーマンスアップのために必要であることをぜひ覚えておきましょう。
参考書籍)スポーツ科学の教科書
文:西村 典子
球児必見の「セルフコンディショニングのススメ」も好評連載中!