試合レポート

【群馬】準決勝 健大高崎 vs 前橋育英

2023.10.01


三塁打を放って喜ぶ健大高崎・斎藤君

強豪校対決は、健大高崎が中盤以降に得点して前橋育英を振り切る

<第76回秋季関東地区高校野球大会群馬県予選:健大高崎11-4前橋育英>◇30日◇準決勝◇小倉クラッチ

順当にと言っていいのだろうか。この秋の群馬県大会準決勝は近年の群馬県で圧倒的な強さを示している健大高崎前橋育英の2校が勝ち上がってきた。夏もベスト4に進出していた健大高崎だが、今大会はノーシードとなっていた。それでも、5校連合やシードの利根商館林を下して危なげない形で勝ち上がってのベスト4だ。

シード権を獲得していた前橋育英渋川渋川青翠太田に快勝しての進出となっている。この夏は準々決勝で前橋商に逆転負けしている。そこから、秋へ向かって立て直してきた。

健大高崎は佐藤 龍月投手、前橋育英は背番号は7をつけていて、打っても4番の黒岩 大翔投手と、両左腕投手が先発した。ともに、上々の立ち上がりだった。3回を終えて佐藤投手は無安打、黒岩大投手は長打こそ浴びたものの、後続はしっかりと抑えていた。

4回、ともに相手失策に乗じて1点ずつを奪い合う。健大高崎は内野の送球ミスで二塁へ進んだ走者をバントで三塁へ送り、5番・森山が左前打を放って先制。その裏、前橋育英は1死一塁から、けん制悪送球で一気に三塁まで進めて、5番・原田の右犠飛で同点に追いつく。ここまでの展開を見る限りでは、最終的には3、4点をめぐる攻防となっていくのではないかと思われた。

ところが5回以降、試合は大いに荒れだした。この回、健大高崎は、8番の佐藤投手自らが右中間へ二塁打すると、バントが野選を招いて無死一、三塁。1番・斎藤の右前打でかえって健大高崎がリード。さらに、続く田中も中前打で続いて無死満塁。ここで、少し意識をしすぎたか、黒岩大投手は2ストライクと追い込みながらも歩かせてしまい押し出し。ここで、前橋育英の荒井直樹監督は、思い切って黒岩大を外野へ下げて、1番をつけた同じ左腕の植杉を投入。しかし、健大高崎打線は連続四球を選んで、2点を追加する。これで、堪らず荒井監督は植杉投手を諦めて、3人目として、またしても左腕の松井投手を投入。2人は打ち取ったものの、打者一巡してこの回、再度打席に立った佐藤が粘って四球を選び、この回4つ目の四球で4押し出しということになって、健大高崎は5点を貰う形となった。

三塁で刺そうと勝負したバント処理が野選となってしまったことから、前橋育英の守りのリズムが崩れてしまった。その結果、思わぬ大量失点となってしまった。とはいえ、守りに自信があるだけに勝負した判断だったので、この三塁送球は責められないところであろう。

この5点で健大高崎の佐藤投手はかなり気持ちとしては楽になったのではないだろうか。5回は3人でピシャリと抑え、1番から始まる6回も安打こそ許したもののしっかりと抑えた。

そして7回、健大高崎は9番・佐々木の適時打で追加点を挙げる。しかし、その裏、前橋育英も振り逃げと松本の二塁打でチャンスを作って、代打・中村の犠飛で1点を返す。前橋育英としては、コールドゲームを回避するためにも、何とか点差は詰めておきたいところである。

試合は、この回から点の取り合いという形になっていって、8回に健大高崎前橋育英の4人目・波津投手から箱山、森山の連続長打などで2点を追加する。前橋育英は、打球を追った野手が激突して2人が負傷退場ということになってしまった。

それでもその裏、健大高崎のマウンドが仲本投手に代わったところを攻めて、黒岩大の中前打や犠飛で2点を返して、意地で点差を詰めていく。これで、前橋育英は何とかコールド負けだけは回避した。

しかし、健大高崎は9回に1番の斎藤が右越え2ランを放って突き放した。そして、8回途中からリリーフしていた3人目の石垣投手が9回を1安打に抑えて結果的には、快勝ということになった。これで、健大高崎は5大会連続で関東大会進出となった。

それでも、健大高崎の青栁博文監督は慎重だった。「点差は開きましたけれども、前橋育英さんは粘り強いですし、最後まで油断はできませんでした。今日は、佐藤はしっかりと自分の投球をしてくれた。85点くらいはあげていいんじゃないでしょうか。ただ、チームとしては続く投手を育てていきたいので、そういう意味では、まだまだ公式戦の、経験不足かなあとも思いました」と語っていた。

とはいうものの、2年連続のセンバツ出場を勝ち取るために、関東大会までには、もっとしっかりと整備していかなくてはいけないという思いである。

前橋育英としては、何といっても5回の4押し出しがあまりにも痛かった。こういう形の失点を取り戻すには、力のあるチームであったとしても、よほどの勢いがつく何かがないと、やはり厳しいだろうということを再認識させられた試合でもあった。

取材=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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