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DeNA入団が決まった森 唯斗、鉄腕復活なるか? 高校時代の恩師が語った「努力」「リリーフは天職」

2023.12.02


ソフトバンクを戦力外となった森 唯斗(海部)が1日、DeNAの球団事務所で入団会見を行い背番号は「38」に決まった。
年俸は5000万円(推定)。ソフトバンクでの年俸は4億6000万円(推定)から4億1000万円ダウンとなった。
森は2013年ドラフト2位でソフトバンクに入団。2018年には37セーブで最多セーブのタイトルを獲得しさらに、2014年から7年連続で50試合以上に登板するなどその鉄腕ぶりを発揮した。
そんな鉄腕の復活はなるのか。高校時代の森を指導していた福井監督のインタビューを振り返ってみたい。復活を待ち望む多くの人のエールが森に届いてほしい。
(インタビュー初掲2020年2月10日・11日)

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「鉄腕」の秘められた高校3年間 恩師が語る・森 唯斗(福岡ソフトバンクホークス)
2013年にドラフト2位で三菱自動車倉敷オーシャンズから入団すると、140キロ後半をアベレージとする回転数の多いストレートに落差の大きい縦変化球で6年連続50試合以上登板。一昨年からは守護神も務めるタフネス右腕。ただ、社会人4年間の前、徳島県立海部高等学校で過ごした3年間で過ごした日々はほとんど知られていない。
そこで今回は森 唯斗が海部2・3年時に監督を務め、現在は徳島科学技術で指揮を執る福井 健太監督に高校時代のお話をうかがうことに。そこで出てきたのは「鉄腕」の裏にある「意外な」側面だった……。

「背中に当たる」腕振りと「アウトコースの」コントロール
海部は僕が27歳の時、最初に監督をした学校です。立教大(追記:二塁手でレギュラー。2002年春には早大2回戦で史上7度目の1回表先頭打者初球本塁打をマーク)を卒業した後に僕は城南でコーチをしていたんですが、「教員採用試験への勉強もあるけど2年間修業と思って行ってこい」と言われて2年間。それが森の2年・3年生時でした。
赴任した時にまず思ったのは「ここには能力が高い選手が多いなあ」ということ。当時の3年生には後にJR四国に進む冨田(陽介)という左腕がいて、森と同じ2年生にも戎谷という右腕。戎谷は素材的には彼の方が森より上だったですし、その他にも能力が高い選手がいた。その中で森の存在にもびっくりしたことを覚えています。
森について最初に驚いたのは腕の振りですね。投げるたびに「バチーン」と背中に当たる。「手痛あないの?」と聞いたら「大丈夫っす」と答える。そんな感じです。そしてもう1つよかったのはアウトコースへのコントロール。高校時代の彼はそれが生命線でした。

居残り練習で鍛えられた「スタミナ」
今でこそスマートフォンがありますが、海部高校がある海陽町という土地はやることが「野球しかない」感じでした。勉強以外で時間を持て余した時にやることは部活動だけ。だから、野球部の選手も長い時間練習する。
JR牟岐線の時間がある学校から遠い場所から通っている選手が帰っても、学校の近くから通っている選手は居残り練習。自転車で10分くらいで通える森もその1人で、いつも21時くらいまではいつも練習していました。当時から投げることは好きでしたし、フィールディングとけん制はうまかったんですが、そこに加えて短距離・中距離のダッシュなど僕も立教大の投手だった同級生に連絡して投手メニューを組んだことを覚えています。彼も黙々と文句も言わずよく走っていましたね。そして長期離脱するようなケガもなかった。そこは今に通じる部分があるかもしれないです。
最終学年ではキャプテンにもなってもらいました。「そんな彼なら周りもついてくるだろう」と思ったので。でも彼は小さいころから知っている、仲もいいということもあって優しい部分もあるんですよ。「もっときついことも言って周囲を鼓舞していいんだぞ」という言葉をかけたこともあります。

打撃の課題が生んだ「抑え・森唯斗」の発想
森が3年の代は他の学校にもいい投手がそろっていました。徳島商には杉本(裕太郎・青学大からは野手~JR西日本~オリックス・バファローズ)、夏に甲子園に行った徳島北には左腕の阪本(寛典・拓殖大)、そして鳴門第一(現:鳴門渦潮)には大阪ガスに行って2018年都市対抗胴上げ投手になった緒方(悠)。四国を見ても愛媛県には秋山 拓巳(西条~阪神タイガース)、平井 諒(帝京第五~東京ヤクルトスワローズ)、高知県にも明徳義塾には石橋 良太(拓殖大~Honda~東北楽天ゴールデンイーグルス)、高知にも公文 克彦(大阪ガス~読売ジャイアンツ~北海道日本ハムファイターズ)がいた。森の高校時代も最速は143キロまでいったんですが、レベルは高かったですね。

その中で海部は打てないチームでした。たとえば同学年で一番いい投手と言われていた鳴門第一と練習試合で対戦しても緒方が向こうは投げて、ウチも森と戎谷がいるから「1対1」とか「1対2」とかで1時間少しで終わる。そして春の県大会でも鳴門第一と対戦して初回に失策が絡んで4点を失って、その裏に2点を返してそのまま終わる。そんな感じだったんです。
ですので最後の夏は「戎谷で行けるところまで行って森をリリーフに回す」ということになりました。ただ、小松島西に敗れた3回戦も戎谷がピンチを背負って森がリリーフし、レフト線に落とされた打球が決勝点になって1対3で敗れた。そんな感じで打撃の課題は結局、最後まで解消できませんでしたね。試合が終わった後は森も泣いていました。

「いろいろな人の夢を背負って」頑張ってほしい
森の進路は本人も勉強が好きではなかったので(笑)、社会人を探すことにしました。ただ、最後の夏が終わってもなかなか進路が決まらない。その中で鳴門第一の鎌田(智仁・現:城北監督・2019侍ジャパンU-18代表アシスタントコーチ)監督の筑波大時代の同級生が三菱自動車倉敷オーシャンズのマネージャーをしていた縁などがあって、練習参加した結果入社が決まったんです。今考えればなかなかない流れですよね。

卒業の時は「3年でプロに行けるように頑張れ」と言って送り出しました。それから4年はかかりましたが、プロに行けて今に至るわけです。ただ僕も立教大の時に亜細亜大の1年生で入ってきた松田 宣浩(福岡ソフトバンクホークス)と同じように森も「将来的にはプロには行ける素材」とは思っていましたが、正直ここまでにはなるとは想像していませんでした。

それでも今になって思うのは「やはり彼にはリリーフが最適の場所・天職だったんだなあ」ということ。三菱自動車倉敷オーシャンズでも彼は先発中心だったんですが、短いイニングで最大の力を発揮する方がよかったということなんでしょうね。そして社会人・プロに入っても自分の能力を成長させた本人もそうだし、そこを引き出してくれた福岡ソフトバンクホークスのみなさんも凄いと思います。森とは今でもオフシーズンに顔を合わせる機会があるんですが、印象は高校時代と変わらない。リリーフの場面に対しても「楽しいです」って言ってました(笑)
これからの森 唯斗に対して思うのは、まずはずっとエンジン全開でやっているので「ケガをしない」ということ。高校時代は緒方の方が上だった評価からここまで来ているのが凄いことですし、いろいろな人の夢を背負っているので、頑張ってほしいですね。
(取材・文=寺下 友徳)

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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