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【高校野球ベストシーン’23・茨城編】9回土壇場で好投手攻略!夏甲子園初4強の土浦日大の原点だった大逆転優勝

2023.12.08


木村優人(霞ケ浦)、藤本士生(土浦日大)

2023年もあとわずか。ことしも高校球界ではさまざまな印象的な出来事があった。各都道府県ごとにベストシーンを思い出してみよう。

【選手権茨城県大会決勝・土浦日大vs.霞ヶ浦

甲子園出場が決まる試合では、思いもしないドラマが起こる。今年の茨城大会決勝は、その象徴のような試合だった。0対3と完封負け寸前だった土浦日大が、9回に7安打で一挙5得点。霞ヶ浦のエース、木村 優人投手(3年)を最後の最後で攻略。2018年以来、5年ぶり5度目の優勝を、最終回の大逆転ゲームで飾った。

9回、土浦日大打線が火を噴く。先頭打者から連打で無死二、三塁。1死後、1番・中本 佳吾内野手(2年)が、内角球を弾き返す中前2点適時打を放って1点差に詰め寄る。続く太刀川 幸輝外野手(3年)は、低めのカットボールを拾うような左前安打。その後、2死一、二塁となったが、4番・香取 蒼太外野手(3年)が初球を引っ張り三塁線を抜く適時打でついに同点とする。

「流れ」も土浦日大に味方する。続く5番・松田 陽斗内野手(3年)は、ギリギリで一塁側内野スタンドに入るファウルの直後、右前への適時打を放って逆転に成功すると、鈴木 大和内野手(3年)がフルカウントからの直球を右前へ適時打にして、その差を2点に広げた。四死球も失策もない。すべてバットからの快音で5点を奪って甲子園の切符をつかんだ。

「予兆」はあった。8回までは無得点だったが、7安打を放っていた。初回の満塁のチャンスをはじめ、再三得点圏に走者を進めながら、木村に要所を抑えられていた。こうなると、野球の流れとすれば霞ヶ浦に一方的に流れていきそうだが、打者は諦めず木村を攻め続けた。ボディーブローのように効いてきた打撃が、9回に一気に花開いた。

優勝した土浦日大は、甲子園の初戦でも集中打を披露した。開幕戦の上田西(長野)相手に延長10回表に5連打などで一挙6得点して勝利。その勢いで勝ち上がり、初の4強をつかんでいる。

敗れた霞ヶ浦の木村は満身創痍だった。3点を先制した3回、打者として一塁を駆け抜けた際に激しく転んだ。大事には至らなかったが、ユニホームは泥だらけになった。そのアクシデントの影響からか、終盤になるにつれ、球の勢いに翳りが見えていたのは否めなかった。チームメートとともに甲子園を目指して踏ん張っていたが、あとアウト1つというところで、土浦日大の集中打の前に屈した。

ゲームセットの後、両チームの選手が声を掛け合って激闘を称え合うなか、木村の表情が印象的だった。土浦日大の選手と次々と抱き合った。涙はなく、晴れやかな表情にも見えた。悲願の甲子園出場はあと一歩で逃したが、悔いは全くない。そう言いたげにも見えた。その後、U-18W杯戦士として世界一にも貢献。ロッテ3位指名を受け、来年からプロとしてスタートする。この夏敗れた経験は、大きな財産として次なるステージに必ず生きる。

<全国高校野球選手権:土浦日大5-3霞ヶ浦>◇2023年7月26日◇決勝◇ノーブルホームスタジアム水戸

土浦日大スタメン
(二)中本 佳吾(2年)
(左)太刀川 幸輝(3年)
(遊)後藤 陽人(3年)
(中)香取 蒼太(3年)
(一)松田 陽斗(3年)
(三)鈴木 大和(3年)
(右)大井 駿一郎(2年)
(捕)飯田 将生(3年)
(投)藤本 士生(3年)※國学院大進学予定

霞ヶ浦スタメン
(遊)新保 玖和(3年)
(右)山崎 隼人(3年)
(左)菅谷 冴樹(3年)
(投)木村 優人(3年)※ロッテ3位指名
(一)羽成 朔太郎(2年)
(三)大﨑 謙(3年)
(二)四條 好誠(2年)
(捕)安藤 早駈(3年)
(中)羽成 恭之介(3年)

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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