試合レポート

【愛知・全三河大会】三河地区の強豪・愛知産大三河が復活の兆し!豊川を下した安城も機動力は脅威

2024.05.22


今井 雄斗(愛知産大三河)

【一覧】全三河大会最終結果

<愛知県第150回中日旗争奪全三河高校野球大会:愛知産大三河5-1安城>◇18日◇準決勝◇豊橋市民

安城は春季県大会では初戦で栄徳を下して3回戦に進出。この大会の初戦でも、県大会では敗れていた今センバツ出場の豊川を下した。多少、メンバーは異なっていたとはいえ、強豪私学を下したということは自信としていいであろう。さらに準々決勝では、西三河のライバル対決ともいえる岡崎工科との試合を競り勝って4強に進んだ。

愛知産大三河は、西三河地区を引っ張る存在でもあるが、昨夏から昨秋、今春とやや低迷気味だった。そうした中で、この全三河大会では渥美農桜丘と東三河勢に完封勝ち。無失点で準決勝まで進出してきている。

安城は「西三河の暴れん坊」とも「クセ者」とも言われる存在になってきた。加藤友嗣監督が提唱する機動力を前面に出して、何かと仕掛けてくる野球は、相手にとっては厄介だ。走者が塁に出ると「何かやってくるぞ」と、相手に意識させるだけでも、神経を消耗させることができる。ある程度はアウトも覚悟しながらも、積極的に走る作戦は、確かに守る側にとってはプレッシャーにもなってくるであろう。

この試合も、1回から5回まで毎回走者を出し、出た走者がことごとく盗塁を仕掛けた。三盗も含めて、盗塁を試みること6度で4度成功させている。5回に一時同点に追いついた場面こそは、まさにその真骨頂ともいえた。6番・杉田 凱外野手(3年)が四球で出ると、すかさず二盗を決めてバントで1死三塁。初めて1死三塁を作り、8番・池田 遼都内野手(3年)の内野ゴロで生還。まさに、「ゴロGO戦術」でもぎ取った同点だった。

愛知産大三河の吉村佳祐監督は、「何かやってくるんじゃないかと、どうしても意識してしまって、戦いにくい相手で、嫌でしたね」と、正直な気持ちを口にしていたが、それでも同点とされて終盤に入った7回、安城のお株を奪う戦いぶりを見せて突き離した。

この回、6番・丸地 珀内野手(3年)が中前打で出塁すると、初球にエンドランを仕掛けて、これが相手失策を呼んで一、三塁。ここで、今度は重盗を仕掛け、これが成功して三塁走者がホームインして、なおも無死三塁。8番・末吉 遼伊捕手(3年)は中越え三塁打を放って、さらに1点。6回からリリーフのマウンドに立ち、9番に入っていた今井 雄斗投手(3年)も、左犠飛を放って、この回3点を入れて試合の流れを引き寄せた。

9回にも同じように丸地が中前打を放つと、バント、内野ゴロで三塁まで進んでプレッシャーをかけると、暴投でダメ押しともいえる5点目が入り、5対1で決勝進出を決めた。

吉村監督は、「ウチも、どちらかというと動いていく野球なので、相手を意識はしましたが、それに負けないようにやれました。選手が一生懸命によくやってくれた」と称えていた。

この日は、3年生17人で戦うという姿勢を見せて、序盤で何人か入れ替えるということもあったが、起用された選手がそれぞれ持ち場での役割を果たした。夏へ向けては「何とか3年生を中心として、もっと意識を高めていって、いい形で入っていきたい」という思いである。

持ち前の機動力野球を示しつつも、最後まで詰め切れず敗れた安城の加藤監督は、「今日は、ちょっと空回り気味だったかもしれませんが、今までが上手くいきすぎていたんです」と、振り返っていた。そして、「相手の素晴らしい守りを見せてもらって、これはいい勉強になりました。改めて、もっと守備をしっかりさせていかんといけない、という気持ちになった」という。

それでも、大会を通じてはエースの太田 瑠之祐投手(3年)に続く投手として、この日先発した片山 大馳投手(3年)が台頭して、目途が立ったのは大きいという。新入生は19人入り「飛び抜けた能力がなくても、ウチあたりのチームで真面目にやっていれば、何とかなるという思いが、少しは周囲に浸透してきているのかなとも思う」と、2チーム分以上の新入部員を喜んでいた。そして、「だからこそ、非力ながらも実績を作っていかないかん。そのためには、走ったりして仕掛けていかないと点になりませんから」と、夏へ向けて、さらに機動力野球にも工夫と磨きをかけ、一波乱起こしていこうという意気込みを見せた。

【一覧】全三河大会最終結果

この記事の執筆者: 手束 仁

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