試合レポート

【鹿児島NHK選抜大会】鹿屋農が”強気の勝負”で勝機を引き寄せ4強入り

2024.05.31


竹下 慶哉(鹿屋農)

<第66回NHK旗争奪鹿児島県選抜高校野球大会:鹿屋農2-1樟南(延長11回タイブレーク)>◇30日◇準々決勝◇平和リース

鹿屋農は立ち上がり、2番・前田 一志(3年)が右翼席にソロを放って先制する。なおも、2死一、二塁と畳みかけたが、樟南は早々にエース永田 迅(3年)をリリーフのマウンドに送って失点を最小限に食い止めた。

以降は、鹿屋農竹下 慶哉(3年)、樟南・永田、両右腕エースの好投と、両チームの好守で、スコアが全く動かない展開が9回表まで続いた。

このまま「スミイチ」で鹿屋農が勝ち切るかと思われたが、9回裏1死から樟南が粘る。

代打・村上 竜之介(3年)が左前打。盗塁で二塁まで進み、敵失で一、三塁となって6番・迫山 寛汰(2年)が犠飛。土壇場で同点に追いつき、タイブレークの延長にもつれた。

10回は両者無得点。11回表に、鹿屋農は送りバントが決まって1死二、三塁とし、1番・出水 康晴(3年)の犠飛で勝ち越した。その裏、樟南も同じく送りバントで1死二、三塁としたが、鹿屋農のエース竹下が後続を断ち、2時間42分の熱戦に決着をつけた。

「きょうはお前でいくぞ!」。試合前、右腕・竹下に今熊浩輔監督はそんな言葉で発破をかけた。好左腕で4番打者でもある吉元 翔皇(3年)の陰に隠れて目立たないが、誰よりも努力し、良いものを持っている竹下に「吉元と並ぶ投手の柱になってもらいたい」思いが今熊監督にあった。今大会、エース番号を竹下に託したのも、そんな思いの表れだった。

竹下はその期待に応え、強豪・樟南を相手に、11回1失点の好投で勝利を導く原動力となった。

大きなヤマ場は11回裏、1死二、三塁で4番・村上を迎えた場面だった。点差は1点、前の打席に代打で同点の口火となる中前打を放った相手なら、当然、申告敬遠で満塁にして、相性の良かった次打者以降で勝負し、あわよくば併殺を狙うのがセオリーだろう。実際、鹿屋農は7、9回の得点機で4番・吉元がいずれも申告敬遠で歩かされ、次打者が打ち取られ、貴重な終盤の追加点の機会を失っていた。

だが、今熊監督がタイムをとり、伝令まで送ってバッテリーに指示したのは「村上との勝負」だった。

「夏を考えて、逃げたくなかった」

今熊監督は、勝負して仮に打たれ、逆転サヨナラ負けとなっても、強気に勝負したことが必ず夏につながると確信していた。

「エースとしてマウンドを任された以上、責任を果たしたかった」

竹下は得意のスライダーの真っ向勝負で空振りを2つ奪い、最後はタイミングを外したカットボールがハーフスイングを誘って、三振に打ち取った。

圧巻だったのは最後の打者、代打・小坂 幸靖(3年)を迎えた場面だ。初球は内角、2球目は外角、最後は外に落ちるボール球、3球いずれも得意のスライダーで空振りをとり、3球三振で劇的な勝利をもたらした。

一打サヨナラ負けの重圧が常にあったが「自分の投球をすること」だけに集中していたと竹下は言う。強気の勝負が勝利の扉を開き、春の決勝に続いて、準決勝で鹿児島実への挑戦権を得た。

<関連記事>
◆鹿児島実がコールド勝ち!川内商工は終盤に力尽きる
◆【鹿児島NHK選抜大会展望】本命・神村学園、対抗馬・鹿児島実、2強の牙城を崩すのは?

この記事の執筆者: 政 純一郎

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