打撲とコンパートメント症候群【セルフコンディションニングお役立ち情報】
下腿部にあるコンパートメント(区画)
野球では打席内でデッドボールを受けたり、自打球が当たったりといった打撲が見られることがあります。打撲によって筋肉が損傷したものを筋挫傷(きんざしょう)と言いますが、多くの場合、腫れは翌日から数日で最大となり、その後次第に軽快していきます。ところが中には強い痛みや腫れによって早急に対応しなければならないケガも含まれています。急性コンパートメント症候群と呼ばれるケガについて理解しておきましょう。
急性コンパートメント症候群とは?
デッドボールや自打球による打撲(時には骨折)などによって組織内に出血や腫れが起こり、他の血管や神経などを圧迫して見た目以上に強い痛みを伴います。まれに組織が壊死(えし:細胞が死んでしまうこと)してしまうことがあります。特に下腿部(ふくらはぎ)、前腕部、大腿部などにみられるこの症状を急性コンパートメント症候群と呼びます。コンパートメントとは「区画」のことを意味し、最も多く見られる下腿部には区画が前方、外側、後方に2つ、計4つ存在します。それぞれの区画は区切られているために、一つの区画で出血や腫れが起こると血管や神経などを圧迫しやすくなってしまい、悪化するとその部分を切開して除圧(圧迫を取り除く)する手術が必要になるケースもあります。
急激な痛みやしびれは要注意
打撲の場合、まずできる応急手当としては氷などを使って患部を冷却するRICEです。当たった部位がこれ以上腫れないようにして、しばらく様子を見るようにします。急性コンパートメント症候群を疑う兆候(サイン)としては、時間の経過とともに現れる「見た目以上の強い痛み」「当たった部位より末端部分のしびれ(=神経の圧迫)」「末端部分が冷たい(=血流が滞っている)」といったことが挙げられます。このようなサインが見られたら、すみやかに医療機関を受診するようにします。また受診する際には「いつ受傷したか」というケガをした時間を伝えておくと良いでしょう。
デッドボールや自打球そのものは特別珍しいことではありませんが、当たった部位によっては適切な応急処置と医療機関への搬送が必要となります。特に下腿部、前腕部、大腿部への打撲はすみやかに応急手当を行いながら、急性コンパートメント症候群というケガがあることを覚えておきましょう。
文:西村 典子
球児必見のコラム「セルフコンディショニングのススメ」はこちら!