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東東京の横綱に上り詰めた帝京、関東一の軌跡~前田三夫と小倉全由、2人の名将~【東西東京大会50周年物語③】

2024.06.15


帝京監督時代の前田三夫氏、関東一・日大三を率いた小倉全由氏

勢いに乗る帝京、センバツも制覇する

翌90年、帝京は夏の連覇を目指したが、東東京大会の3回戦で早稲田実に9-10で敗れている。この年の東東京大会は関東一が優勝したが、監督は小倉ではなかった。関東一は初戦で平安(現龍谷大平安)に敗れている。
91年の東東京大会では帝京が圧倒的な強さをみせて優勝した。甲子園の3回戦の池田戦では、延長10回に6番・稲元智のサヨナラ2ランで劇的な勝利を挙げたが、準々決勝でこの大会初出場で優勝した大阪桐蔭に2-11と大敗した。
けれどもこのチームには、三塁手兼投手の三沢 興一ら2年生の選手が多かった。甲子園球場のラッキーゾーンが撤去された翌年のセンバツでは、エースとなった三沢の活躍もあり、帝京が優勝した。東京のチームが春夏両方の大会で優勝するのは初めてだった。92年の夏も帝京は甲子園大会に駒を進めたが、初戦で香川の尽誠学園に敗れている。

なおこの年の3月、早稲田実の和田 明監督がくも膜下出血で亡くなった。54歳の若さだった。後任には、山口の南陽工の監督だったOBの和泉実が就任した。
93年には、一時現場を離れていた小倉 全由が関東一の監督に復帰。東東京大会の決勝に進出したが、修徳に6-7で敗れている。このチームの一塁手兼投手は、現在監督の米澤 貴光である。
修徳の優勝は27年ぶりであった。修徳のエースは巨人、メッツなどで活躍する高橋尚成だった。甲子園では高橋が1回戦、2回戦で完封するなどの活躍により準々決勝に進出したが、優勝した兵庫の育英に敗れた。
94年の東東京大会は小倉監督率いる関東一が、決勝戦で帝京を破って優勝した。身長190センチの木村龍浩投手を擁する関東一は、1回戦で長崎北陽台に0-2で敗れた。

95年の甲子園、前田マジックが冴えわたる

95年の東東京大会の決勝戦は、帝京と和泉監督率いる早稲田実とのライバル対決になった。試合はいつ終わるか分からないような壮絶な打ち合いになり、15―13で帝京が勝ち、優勝した。しかし決勝戦があまりの乱打戦だっただけに、評価はいま一つだった。
けれども89年に優勝した時と同じように、初戦が大会6日目と遅かったことで、しっかり整えてきた。投手は本格派の2年生・白木 隆之、横手投げの3年生・本家 穣太郎の2本柱であったが、初戦の日南学園戦は、白木―本家-白木―本家―白木という、ある面では前田監督らしい投手リレーにより延長11回2-1で勝って、勢いに乗った。3回戦も白木―本家―白木―本家のリレーにより東海大山形に8-6で勝った。西東京については後述するが、準々決勝は創価との東京対決になり、この試合は白木が完投して8-3で勝利。準決勝では9安打を喫しながらも白木が完封して敦賀気比を破った。
決勝戦は星稜との対戦になった。星稜のエース・山本省吾も2年生で、2年生投手の投手戦になったが、白木の被安打4の完投により3-1で勝ち、2回目の夏の全国制覇を果たした。決勝戦で完投した白木は、東東京大会の時とは別人のようにたくましくなっていた。
《次回:日大三・國學院久我山・堀越……西東京の群雄割拠が井口資仁、井端弘和ら名選手を生んだ!【東西東京大会50周年物語④】に続く》

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この記事の執筆者: 大島 裕史

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