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初の甲子園狙う春準V・日大明誠 第2シードで迎える夏へ「緊張の場面でやれるか」

2024.06.27


選手たちへ指導をする三好孝尚監督

春の山梨県大会では準優勝し、関東大会へ出場した日大明誠が、夏の対抗馬として注目を集める。関東大会では初戦の花咲徳栄には力及ばず敗れたが、26年ぶりに出場したことはインパクトを与えた。

<トーナメント表>春夏連続甲子園出場をかける山梨学院は、初戦で笛吹と対戦【2024夏の甲子園】

野球が好きなままで次の道へ

日大明誠は山梨県上野原市に学校がある。私学ではあるものの、寮を持っていないため、全員が通い。比較的東京からでもなんとか通える場所に位置していることもあり、八王子や立川といったところからも選手たちは通っているという。

「中学時代からバリバリ試合に出ていた選手もいますが、多くは控えだった選手たちが、ウチに来て試合に出るチャンスをつかんで、成長をしてくれていると思います」

指揮官・三好孝尚監督は、選手たちの様子を見ながら、冷静な口調で語る。自身は日大豊山、立教大で現役時代を過ごし、日大明誠の監督として今年4年目を迎えた。

取材当日はランナーを付けた投内連携の確認、その後はグループに分かれてバッティング練習と進んでいったが、基本的には選手たちが中心となって練習は行われた。もちろん指導すべきところ、伝えるべきことがあれば三好監督が話すが、基本的には一歩引いたところから俯瞰してプレーをチェックし、選手たちにアドバイスを送る姿が印象深かった。

マンツーマンで指導をする三好孝尚監督

チームをまとめる主将・本馬翔太も「選手に対してすごく寄り添ってくれますし、ほんとに話しやすい監督です」と三好監督の指導に感謝をしているようだったが、それは三好監督のなかでも、こだわりがあってのこと。

「うちの場合、大学以上で継続してくれる選手ももちろんいますが、多くが高校野球で第一線を退くケースが多いんです。だから野球が好きなままで次の道に進んでほしいですし、もし教える立場になった時に、その子の助けになるような経験をさせたり、教えたりできたらと思うんです。
だから、個別で技術や戦術的なことを教えることは大事だと思っています」

練習時間約2時間で成果を出す、日大明誠流・練習への向き合い方

ただ、日大明誠の練習時間は決して長い時間を確保できるわけではない。
完全下校が土日含めて19時と定められているため、整備・片付け等の時間を考えても、18時半前後には切り上げなければ、下校時間に間に合わない。
学校の授業も15時すぎまではあるため、着替えやアップなどをしていたら、あっという間に16時。実際にボールを使った練習は2時間前後になるという。「出来るだけ全員が同じ練習をできるように意識している」という三好監督の方針のもと、主力組と控え組が入れ替わるようにグラウンドを使うことを踏まえても、周りの強豪私学に比べれば、練習時間は短い。

打撃練習をする日大明誠の選手たち

同じ練習メニューをこなすことで、チームとしての一体感は出るだろうが、個々の能力を上げていくには、練習の中身にこだわるしかない。
「練習時間は長いわけではないですし、寮を持っているわけではない。だから厳しい練習を沢山やって達成感があっても、強豪校に比べたら練習量は少ないはずです。とはいえ、ある程度の練習量は必要だと思いますので、確保しながらも質を大事にしています。
実際、平日は週4日間を練習に充てていますけど、なかでも週明け月曜日は、練習試合で見つかった課題を取り組む1日にするようにして、中身にこだわっています」

周りのライバルたちは目一杯時間を使って練習をする中、日大明誠は決して長い時間を使えない。この差を埋めるために質にこだわるわけだが、この構図は三好監督の立教大時代と重なる部分があるようで、「当時は早稲田や慶應、明治、そして法政と戦力差があったので、ひっくり返すことを常に考えていました」という。

取材日も守備に時間を割いて練習が行われた

当時の経験が少し違った形で生きているわけだが、日大明誠は「結局、自滅してしまうと力を出せないまま負けてしまうので、まずは取れるアウトを取れれば、同じ高校生相手なのでチャンスはある」という三好監督の考えのもと、守備力を武器にしている。

実際に冬場は、「たくさんノックを受けましたし、内外野の連携、繋ぎを意識した練習をしてきた」と本馬主将は語り、個々の能力はもちろん、チーム全体の能力を高めてきた。

さらにオフシーズンは個々のフォームにあわせた技術指導を通じて打力向上。また、紅白戦で実践感覚を養うなど、チーム全員が試合でプレーするチャンスを掴みながら、練習を通じて個々のスキルを高め、チーム全体の底上げに繋げた。

第2シードで迎える夏へ、「今度は決勝で勝つ」

その成果が春に生まれた。2回戦・甲府工相手に5対3で勝利した日大明誠。2023年の春や、現3年生たちが1年生大会のときにも敗れていたという相手だったが、守備からリズムを作り、さらに相手がミスしたところを逃すことなく攻めていき、終盤に逆転した。
「練習から大会を意識したことで、緊張せずに守り切れた」(本馬主将)

この一戦で勢いに乗り、一気に決勝までのぼりつめ、関東大会の切符をつかんだ。

本馬翔太主将

関東大会の初戦は埼玉の名門・花咲徳栄。強敵ではあるものの、自分たちの実力を測るチャンスだったが、「いつもと違う雰囲気で戦ってしまった」と本馬主将は振り返った。

三好監督も同様に試合を振り返る。
「普段から立ち上がりを意識させていたのに、あの試合は守備のミスからピンチを招いて失点。県大会では出来ていたことが、関東大会ではできませんでした。だから、夏の大会でもアウトの打球をきちんととれるか。緊張の場面でやれるかが大事になると思います」

とはいえ、自分たちの目指す全国の舞台で結果を残している花咲徳栄と戦えたことで、「いろいろやるべきことは見えた」と本馬主将の中でも収穫はあった。その収穫を生かし、夏は第2シードとして、各校の挑戦を受ける。
近年、山梨からは山梨学院東海大甲府日本航空が甲子園に出場しているが、その牙城を日大明誠が崩すか。春準優勝校にふさわしい戦いぶりを見せて欲しい。

<トーナメント表>春夏連続甲子園出場をかける山梨学院は、初戦で笛吹と対戦【2024夏の甲子園】

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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