News

「この人の下で野球はできない」オリックス暗黒時代に引退した外野手の回想、不可解な二軍落ちにチームメイトも猛抗議、しかし……

2024.06.27


平下 晃司氏

ローズとラロッカが僕のために立ち上がった

二軍落ちが決まってロッカーにある荷物を片付けていると、近鉄時代から仲が良かったタフィー(ローズ)が「お前何してん?」と声かけてきたんです。
「明日からマイナー(二軍)」と答えると、タフィーは「は?なんで本塁打を打っているのに……」という反応です。

そのうち広島で活躍したスラッガーのラロッカ(グレッグ)もやってきたので、彼にも事情を話すと、二人はコリンズのところに向かったんです。
そのあと二人とコリンズの激しく言い合いが聞こえてきました。

ラロッカはそれまでもよくコリンズと揉めていて、キャンプ中に何度も口論になっている姿を見たことがあります。
コリンズに打撃のことを指摘されたラロッカは、コリンズにバットを差し出して「お前がやってみろ」と文句を言うんです。

タフィー、ラロッカとの口論のあと、僕は再びコリンズに呼ばれて、こう告げられました。
「開幕戦は一軍に入れるかもしれない。でも、残りのオープン戦は違う選手を見たいから二軍に行ってくれ」
結局、僕は開幕一軍に入れませんでした。

「この人の下では野球をやりたくない」

そのあと、一軍昇格の話もあったんですけど、僕からお断りしました。プロ野球選手として気持ちが切れていたといいますか……コリンズの下で野球をやりたくない気持ちが強くなってしまったんです。オープン戦で結果を残しても二軍落ちされたことでモチベーションは上がりませんでした。

ただ私情から一軍昇格の話を断ることは造反行為です。自分のプロ野球人生は終わりだと覚悟しましたし、シーズン後半はセカンドキャリアのことを考えていました。シーズン後半は二軍戦の遠征メンバーにも入ることはなく、その年限りで戦力外されたのも当然だと思いました。

でも、後悔はしていません。僕がプロ野球選手として活躍したいというモチベーションの1つが指導者の存在だったんですよね。僕は「この人のために活躍したい」と思って、練習も準備してきたので。

いま、僕はその指導者の立場になりました。選手の感情を大事にしないといけないなと常日頃から思っています。

戦力外になったあと、ベイスターズから「リストアップしている。それでも入団可否の決定はトライアウト参加が条件だから、参加してくれ」と言われ、トライアウトを受けることになりました。本塁打も放ったんですけど、結局、入団はありませんでした。

知り合いのスカウトさんから聞いたところによると、左の代打には佐伯(貴弘)さんがいたため、僕も必要なのか、という話になったそうです。
これで僕は引退を決断し、第二の人生を歩むことになりました。

平下 晃司(ひらした・こうじ)
宮﨑・日南学園時代は左の強打者として活躍し、1995年に選抜、夏の甲子園出場を経験。同年、近鉄バファローズから5位指名を受け96年から00年の4年間プレー。トレードで阪神に移籍し(01年から04年途中)、その後ロッテ、オリックスを経て07年に引退。現在は東大阪市にある「ブリスフィールド東大阪 スポーツアカデミー」のベースボールスクールのヘッドコーチを務めながら、東大阪長田ボーイスの監督を務めている。

<これまでの記事を読む>
◆平下氏が語る野村監督時代「突然サッチーに呼び出されて……」
◆「どうしたら一軍にいられますか?」阪神外野手の必死の問いかけに、闘将・星野仙一が放った衝撃の一言…「めちゃくちゃ気持ちが楽になった」
◆伝説の近鉄“いてまえ打線”の真実…超強力打線を支えた中村紀洋、タフィ・ローズが試合中に行っていたベンチ裏での作戦会議
◆「お前ストーカーか?」学校サボって見に行ったキャンプで天才・前田智徳に声を掛けられて……元阪神「F1セブン」戦士が語る猛練習の高校時代
◆「僕には合わない部分があった」バレンタイン監督時代のロッテは選手ファーストを“やりすぎ”て……練習はたった30分、試合前に家族と食事も

固定ページ: 1 2

この記事の執筆者: 河嶋 宗一

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.30

突然の病で右半身が麻痺した「天才野球少年」が迎える最後の夏 あきらめなかった甲子園出場の夢、「代打の一打席でもいいから……」

2024.06.30

【夏の甲子園・近畿地区好カード一覧】京都国際 vs.京都成章、市立和歌山vs.田辺! 初戦から激戦必至

2024.06.30

【夏の甲子園・四国地区好カード一覧】いきなりビッグ右腕対決!?徳島では阿南光と生光学園が2回戦で対戦か!?

2024.06.30

3連覇を狙う九州国際大付など強豪シードが初戦、雨天順延の東海大福岡も、1日の福岡大会【2024夏の甲子園】

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」

2024.06.26

【北北海道】北見支部では春全道4強の遠軽が登場、クラーク記念国際と好勝負演じた力見せる【2024夏の甲子園】

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!