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突然の病で右半身が麻痺した「天才野球少年」が迎える最後の夏 あきらめなかった甲子園出場の夢、「代打の一打席でもいいから……」

2024.06.30


大和青藍・吉岡 大和選手

福岡県直方市にある大和青藍。初めての甲子園を目指すチームに、少しだけぎこちない動きをしながら、練習に励む3年生がいる。

吉岡 大和選手。彼は中学時代に患った脳出血の後遺症で、右半身に麻痺を抱えてながらプレーしているのだ。

現在は主に三塁コーチャーとしてチームを支えている吉岡だが、数年前までは世代のトップを走る“スーパー中学生”だった――。

ホークスジュニアの主将も務める

小学2年生から地元の少年野球チーム「鞍手ベアーズ」で野球を始めた吉岡は、圧倒的な守備力で4年生にしてレギュラーを獲得。6年時にはプロへの登竜門ともいえるNPB12球団のジュニアチームの一つ「福岡ソフトバンクホークスジュニア」に選ばれた。

吉岡の父・清一さんが当時を振り返る。

「思い出作りとして送り出したんですけれども……。(ソフトバンクジュニアは)身体の大きな選手を取るイメージがあったのですが、当時の新垣(渚)監督がスモールベースボールをテーマにしていたので、チャンスがあるかもと思って。当時から大和の一番の持ち味は、守備と走塁でしたから」

吉岡は、精鋭の集まるチームでキャプテンまで務めることになる。

中学に進んだ吉岡は、地元の名門クラブ「飯塚ボーイズ」への入団を決める。

「(飯塚ボーイズの)進学先一覧表を見せてもらうと、甲子園に出場するような高校の名前がたくさんあったんです。『自分もこのチームに入れば強豪校に行けるのではないか』と思って決めました」(吉岡)

最大の夢は甲子園出場だった。

「『プロ野球選手になりたい』という気持ちよりも『甲子園に出たい』ほうが大きかったですね。あのものすごい応援の中でプレーしてみたいという思いがありました」

全国の超名門校からスカウトが……

飯塚ボーイズには吉岡以外にも、将来有望な逸材が入団してきた。今年の高校日本代表候補にも選出され、今秋のドラフト候補としても注目される広陵髙尾 響投手、同じく代表候補に選ばれた長崎日大西尾 海純投手らである。

そんなチームの中にあって、吉岡は早くから頭角を現す。1年次から出場機会を得てチームを牽引。2年になると、全国の名だたる名門校からスカウトされる存在となったのだ。

「2年生の4月、(飯塚ボーイズの春山総星)監督と面談があり、スカウトが来ている高校を教えてもらったんですけど、県外の強豪校ばかりでした。言うなら“選び放題”という状態でした」(清一さん)

次のページ:『中2の5月、暗転した野球人生』/『車いす姿でグラウンドへ「早く野球がしたい」』/『驚異的な回復、そして最後の夏がやってきた』

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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