Column

甲子園2度出場の強豪・八千代松陰 夏ノーシードからの挑戦

2024.07.01


ミーティングをする八千代松陰

2024年の千葉大会は、近年でも稀に見る注目度の高さになることが期待される。というのも、シード校でもおかしくない実力校が次々とノーシードに回っている。大会序盤から白熱することが期待されるからだ。

2019年の千葉大会の決勝戦を戦った八千代松陰も、そんな学校の1つだ。
現ヤクルトの主力選手・長岡秀樹がメンバーだった2019年には準優勝と甲子園まであと一歩と迫った。

過去には春夏合わせて2度の甲子園出場。学校としての実力はもちろんだが、元プロ野球選手・度会博文さんなどNPB選手を多く輩出している八千代松陰だが、この夏はノーシードで大会を迎える。

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大切なことは考えて野球をやること

八千代松陰のグラウンドは学校の敷地内にある。両翼100m、センター120mと十分な広さを確保。ティー打撃ができるサブグラウンドも近くにはあるので、全員が一斉にあらゆる場所で練習ができる環境は整っている。
ただ照明施設がなく、学校が終わってからすぐに練習を始めても19時には下校。専用の寮施設を持っているわけではないので、各自自宅で自主練習をする形になる。

八千代松陰・兼屋辰吾監督

時間に限りがあるなかで結果を残している八千代松陰を率いるのは、沖縄尚学時代に甲子園を経験し、卒業後は筑波大でプレーした兼屋辰吾監督だ。

兼屋監督が伝えているのは、考えて野球をやることの大切さだ。そこには筑波大時代に経験したことが関係している。
筑波大といえば首都大学野球に所属しており、同リーグには東海大や日本体育大などがいる。いまでこそ、全国の舞台で結果を残す逸材が筑波大の門を叩くケースが多くなったが、兼屋監督の現役時代は現在ほどではなかったという。

それでもリーグ戦で勝つためには、「考えて野球をやる必要があった」と勝つ手段を見出す創意工夫を凝らすために、考えることを学び、習慣化されたことが八千代松陰の野球の土台になっているのだ。

OBたちの功績から見えてくる共通点

考えるための工夫は、練習のなかに織り込まれている。
取材日の練習を見ていると、選手間での会話が多く、確認はもちろん、指示出しや指摘の声が頻繁に飛び交う。活気ある練習が行われている印象を受けたが、これは兼屋監督のなかで「周りが声をかけることで、その選手に原因をわからせる」ためにも大切だと考えているからだ。

実際、「勉強だって、例えば長文読解が苦手といっても、ポイントやコツがわからないのか。語彙力や読むスピードが遅いとか、原因を明確に把握できないと対策できない」と兼屋監督は補足説明する。

選手間で会話をする八千代松陰ナイン

選手それぞれで何が原因や課題なのか、明確に理解させる。そのうえで考えてプレーする。この流れが大事であり、兼屋監督はこれが伸びる選手の条件だと捉えている。

その条件にマッチしているのは2019年の世代だ。この年、八千代松陰は千葉大会で準優勝した。「考えて動ける世代だったし、特にエースの川和田(悠太)はピカイチでした」と当時を振り返る。

高校時代の長岡秀樹(八千代松陰出身)

また、当時の主力で、現在はヤクルトに在籍する長岡も兼屋監督の重視する考える習慣が身についている教え子の1人だった。
「たしかに守備は良くて、入学した時から周りよりもスピード感がありました。なので『少し動きが違うな』と思うところがありました。ですが、新チームから主力になってくれたらという見立てでした。
それから2年生の秋にケガをきっかけに打撃は向上しましたが、振り返ってみれば、考える習慣があったので、徐々に成長していって。自主練習の時間なんかも、やりたいことが常に頭の中にあったのか、上手に使える選手でした。
だから、こういう指導をしたから成長したという感覚があまりなくて、みんなと同じ練習をやっていても、取り組む姿勢が違いました」

ノーシードから甲子園へ

こうした先輩たちの姿について、副主将・根木杜弥は「(先輩たちの話は)時々聞きます」と語っており、「試合中に考えてプレーしていて、サインプレーなどがきっちり出来た時は『松陰らしいところを出せている』と、良いところを引き継げていると実感します」と話す。

主将・一宮知樹も、「少しずつ課題に向き合う姿勢は出来てきましたし、1つ上の先輩たちと比較しても遜色ないと思います」と時間が経つにつれて、徐々に八千代松陰らしい野球が根付いてきたようだ。

練習に打ち込む八千代松陰ナイン

秋は2回戦で中央学院に6対16で敗戦。甲子園出場のためには越えなくて行けない相手を前に、多くの課題を残した。一宮主将は、「今年は自分たちから攻めて良ければいい試合展開ができたのに、あの試合は勝ち越すことができずに崩れてしまった」と反省を口にする。

オフシーズンは実戦練習を多く積んだ。秋を終えて「投手は仕上がっていませんでしたし、打線も、特にボールを捉える技術が足りていなかった」ということも含めて、実戦のなかでチームを鍛えてきた。

そしてシーズンが明けた4月、地区予選から登場した八千代松陰は、八千代秀明八千代を下して県大会に出場。「自分たちで攻める野球は出来た」と秋の中央学院との一戦で出た課題をクリアできたと、根木は振り返る。

一宮主将を中心に、県大会では「春はシード権獲得、そして関東大会まで勝ち上がりたい」と目標を定めたが、初戦で県立船橋に惜敗。2対3と1点及ばず、夏はノーシードで大会に入ることとなった。

ただ、「最終的な目標は甲子園です」と一宮主将は見失うことなく、夏に向けて準備を続けている。そのためにも、「自分たちの野球への姿勢や気持ちが成長しないと、たどり着けないと思います」と、これまで以上に野球と向き合うことの重要性を一宮主将は語っていた。

春夏合わせて3度目の甲子園へ、ノーシードからの逆転を狙う八千代松陰の戦いに注目したい。

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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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