試合レポート

1年間県大会未勝利の公立校がシード・鹿児島玉龍を延長戦の末撃破!申告敬遠をせず、中軸との対決を制したエース左腕【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.09


古田 遼羽(加世田)

第106回全国高校野球選手権鹿児島大会◇加世田 3―2 鹿児島玉龍(延長10回)◇2024年7月8日◇鴨池市民球場

【トーナメント表】夏の鹿児島大会 8日までの結果

加世田の左腕・古田 遼羽(3年)、鹿児島玉龍の右腕・中原 翼(3年)、両エースの好投で1点を争う引き締まった好勝負となった。

先手を取ったのは鹿児島玉龍。2回裏に8番・中原の左越え適時二塁打で先制した。加世田は6回表、二死から3連打を浴びせ、6番・中野 天心(3年)の右前適時打で同点に追いつく。8回は先頭の2番・古田が左越え三塁打を放ち、4番・福山 雅人主将(3年)の中前適時打で勝ち越しに成功した。

このまま加世田が勝ち切るかと思われたが、鹿児島玉龍は8回裏にエラーで同点に。9回で決着がつかず、今大会初の延長にもつれた。10回表、加世田は3番・藤﨑 聡一郎(3年)の右前適時打で1点を勝ち越すと、その裏の鹿児島玉龍の攻撃を無失点で切り抜け、シード校から勝利をもぎ取った。

「自分のミスで同点に追いつかれた。何としても取り返したかった」。殊勲の勝ち越し打を放った藤﨑は言う。1点リードで迎えた8回裏、右翼の守備で落球し、同点に追いつかれた。終盤、ようやく流れを引き寄せ、ロースコアで勝ち切る理想の展開に持ち込めていただけに、悔やまれるプレーだったが「あいつはチームのムードメーカー。きっと何かで取り返してくれると信じていた」と福山主将。ミスを引きずってチーム全体の士気を下げるよりも、目の前のプレーに全力を注いで勝利することに集中した。

「何も考えずに思い切り振ってこい!」。下山慎吾監督から送り出された藤﨑。無我夢中で、何を、どう打ったか覚えていないが、打球が三遊間を抜けていったことだけは鮮明に覚えていた。

その裏の守備。送りバントで一死二三塁。最後の胸突き八丁の場面を迎えて、エース古田は「昨夏、自分の暴投で負けたことが頭をよぎった」という。苦しい場面だったが「この1年間で成長したからきっと抑えられる」と自分に言い聞かせた。相手の4、5番の中軸打者を迎えて、あえて申告敬遠をせず、打者勝負にかけた。超前進守備を敷いたのは捕手・福山主将の指示。「絶対に1点もやらない。打たれたらしょうがない」という意志表示だ。4番を三振、5番を二ゴロで打ち取り、虎の子の1点を守り切った。

古田―福山のバッテリーは能力も、意識も高い中で、チーム全体の意識が高まらず、この1年間の県大会は全て初戦敗退だったが、最後の夏を迎えてバッテリーを中心に全員で勝つ意識が高まったことをシード校相手に証明した。下山監督は「ようやく本気で勝つ集団になってきた」ことへの手応えを感じていた。

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この記事の執筆者: 政 純一郎

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