試合レポート

部員確保に奔走する元甲子園球児監督、都立東が見せた「夏1勝」のための必死の戦いに見た、高校野球の原点【24年夏・東東京大会】

2024.07.11


都立東の選手たち

<第106回全国高校野球選手権東東京大会:都立八丈 14—9 都立東>◇10日◇2回戦◇駒沢球場

【トーナメント表】夏の東東京大会 11日までの結果

昨夏の東東京大会後、3年生が引退して部員不足となり、かえつ有明との連合チームで秋季大会を戦わざるを得なかった都立東。それでも、春季大会は何とか単独チームで戦うことができた。4月、新入生も迎えることができ、この夏は登録16人という布陣で挑むこととなった。部員確保のためにも、何とかして夏の大会での1勝を挙げたいところだ。
都立小山台でプレーして、21世紀枠で甲子園出場の経験を持つ藤田康平監督。高校時代はグラウンドのない小山台で工夫しながら練習をこなしてきた。いま、東でも部員不足の中で試行錯誤の工夫をしながら指導に当たっている。

一方、先日1回戦を戦った都立八丈は、つばさ総合に5回コールド15対0と大勝しての2回戦である。都立八丈は離島というハンデもあり、部員も全員で15人という少数だ。それでも、1回戦の大勝は大きな自信になっている。
今年のチームについて、笹本義博監督は「打撃に関しては、ある程度の自信はある」と言う。練習時間のほとんどを打撃練習に使っているそうだ。

そんな両校の対戦は、取って取られてという、いわゆるシーソーゲームの展開となっていって、コールドも、大逆転もありそうな乱戦気味になっていった。
結果的には6回、八丈で最も頼りになる上ノ山 慎内野手(2年)の安打、続く兄の翼外野手(3年)の二塁打などから、7番の長岡 草太捕手(2年)の左中間三塁打などで八丈が逆転。長岡選手は何と、この日3本目の三塁打を放つ活躍を見せた。

都立八丈はこの日、フェリーで一旦帰島し、次戦の前日に再び戻ってくるということである。

都立東は、今年の夏こそ悲願の1勝を大きな目標として掲げ、試合半ばでは目標に近づけた。しかし、最終的には9イニングを耐えきれなかった。藤田監督は「2年生の選手たちが、本気で悔しがっている姿を見て、エネルギーになった。いろんな思いでウチに来てくれた選手たちを、今後もいい方向で指導していきたい」と語った。

この秋、都立東は、昨年とは違い、単独チームで臨めることは確実である。そこから、また新たに都立東高校野球部の歴史が紡がれていくのだろう。
昨秋の大会以降に入部した北原 由梧内野手(3年)は最初の打席ではヒット。その後も四球を選ぶなどして出塁した。彼の活躍は中学時代に実績があるワケではない多くの球児に、大いなる勇気を与えてくれたことになっているだろう。こういうところに、高校野球の本当の意味での教育的要素があるのではないか。そのことを再認識させてくれた、都立東の戦いぶりだった。

【関連記事】
◆【24年夏・東東京大会展望】
◆【一覧】東京都注目投手・野手リスト
◆都立高島が伝統校・戸山を下し、初戦突破!【24年夏・東東京大会】
◆下町の実力都立校・紅葉川が“本拠地”で初戦突破!エース8安打を浴びながらも完封勝ち【24年夏・東東京大会】
◆【24年夏・西東京大会展望】

この記事の執筆者: 手束 仁

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.31

甲子園を逃した“超高校級”逸材リスト 超進学校に現れた二刀流、サイクルヒットの名門校捕手、佐々木朗希二世らが聖地を踏めず

2024.07.30

【24年夏の甲子園49代表】最多出場は早稲田実業の30度目、初出場は5校、最大ブランクは32年ぶりの大社、公立校は12校、常連も新鋭も多彩な顔ぶれ

2024.07.31

決勝戦完封の世代NO.1右腕、センバツから覚醒した152キロ右腕などこの夏で評価を上げた超高校生投手13選!

2024.07.30

花咲徳栄、秋・春・夏で県内無敗達成! タイブレークで見せた”真骨頂”【24年夏・埼玉大会】

2024.07.31

早稲田実は「甲子園1年目」も「100年周年」も出場する唯一のチーム! 出場回数も全国4位に浮上【2024甲子園豆知識】

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.27

まさかの5回コールド...大阪桐蔭vs履正社の宿敵対決は12得点奪った大阪桐蔭に軍配!【2024夏の甲子園】

2024.07.27

木更津総合がサヨナラ勝ちで甲子園へ!タイブレークの激闘を制して6年ぶり聖地切符!

2024.07.31

甲子園を逃した“超高校級”逸材リスト 超進学校に現れた二刀流、サイクルヒットの名門校捕手、佐々木朗希二世らが聖地を踏めず

2024.07.26

名将の夏終わる...春日部共栄・本多監督の最後の夏はベスト4で敗れる【2024夏の甲子園】

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.14

甲子園通算19度出場・享栄が初戦敗退 1点差でまさかの敗戦【2024夏の甲子園】

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.09

下町の実力都立校・紅葉川が“本拠地”で初戦突破!エース8安打を浴びながらも完封勝ち【24年夏・東東京大会】