Column

「大阪桐蔭にも履正社にも勝てる自信があった」2強を撃破した世代No.1遊撃手が見せる夏への自信、「春の大院大高の躍進はフロックではない」

2024.07.13


今坂幸暉(大阪学院大高)

この春、履正社、大阪桐蔭という全国的強豪を相次いで破って大阪府大会を制した大阪学院大高。この夏も台風の目となりそうな注目の学校に、“高校No.1ショート”とも呼ばれる選手がいる。
チームの主将も務める今坂 幸暉(3年)である。

50mは5秒8、遠投は115m。抜群の身体能力を誇り、打撃や守備でもハイレベルなプレーを見せる。もちろんスカウトからの評価も高く、卒業後の進路は「プロ一本」だ。
そんな今坂のこれまでの野球人生や目指す選手像に迫った。

胸躍らせて入学したが…

出身は山口県下関市。小学2年生の時に「下関ボーイズ」で野球を始め、中学では福岡県にある「苅田ボーイズ」でプレーした。当時は1番打者として活躍しており、「あまり守備が得意ではなかったので、バッティングがウリの選手だったと思います」(今坂)と振り返る。

高校進学にあたっては関東や関西の強豪校からも誘いがあり、その中で選んだのは甲子園出場歴が1996年春の一度しかない大阪学院大高だった。その理由について、今坂はこう語る。
「この素晴らしい環境と、前総監督だった森岡(正晃)先生から熱心な誘いを受けて『ここで甲子園、日本一を目指そう』と思ったんです」

大阪学院大高は専用グラウンドだけでなく、半野外練習場や室内練習場、トレーニングセンターなど充実した設備が整っている。今坂を勧誘した森岡前総監督はPL学園出身。大阪桐蔭の初代部長を務め、1991年夏の甲子園優勝を支えた人物である。

胸躍らせて下関からはるばる大阪にやってきた今坂だが、入学して間もない時期に森岡前総監督が辞任。一時は練習も満足にできる状況ではなかった。繊細な今坂はモチベーションを大きく下げてしまう。
「自分の中で目標を見失ったというか、何のために野球をやっているのかわからなくなっている状態でした。ただただ練習に出てきて、ただただ練習をしていました」

そんな今坂を変えたのが、昨年3月に就任した辻盛 英一監督だ。大阪市立大(現・大阪公立大)を近畿学生リーグで2度の優勝に導いた実績がある一方、ビジネスの世界でも生命保険会社で「伝説の営業マン」として活躍し、現在は社長・作家の顔も併せ持つ人物である。

目標を見失っていた今坂に対して、辻盛監督は根気強く対話を続けた。
「本気でプロを目指してやるなら、プロのスカウトを呼んでくる」

そんな監督の言葉が今坂の心を動かした。今坂の野球への想いが再燃する。
「もう一回『プロ野球選手になりたい』と思いました」

“人間性の成長”が活躍のきっかけに

それから今坂はみるみるうちに成長していく。特に変わったのは「人間性」だと本人は言う。
「今まで当たり前だと思っていたことが当たり前じゃない、と気付くようになりました。『ありがとう』という言葉も出るようになりました。今までは落ちていたゴミを『人のゴミだから』と思って拾わなかったり、ということもあったんですけど、辻盛監督が来てからは落ちていたゴミを自分で気にして拾うようにもなりました。そういったところが一番変わったかなと思います。周りをしっかり見られるようになったなと思います」

周囲に気を配れるようになったことで、野球でも結果が出るようになった。昨夏の大阪大会では12打数7安打1本塁打8打点8盗塁の大活躍。その名を大きく広めることになった。春先は調子が悪かったそうだが、辻盛監督から渡された練習メニューをこなし、夏にピークを合わせることに成功したという。

また、大阪学院大高には動作解析担当コーチがおり、そうした存在も大きなサポートになった。
「自分の調子が悪い時とか一つ一つの細かい部分もしっかり研究して下さるので、調子が悪い時は特にありがたいです」

最上級生となった冬。勝負強さの向上と好投手相手に結果を残すことに意識を向けてきた。その成果は春に出て、府大会では履正社髙木 大希(3年)や大阪桐蔭平嶋 桂知(3年)といった全国クラスのエースから安打を放った。
「ずっとコーチの方から『どれだけ練習で良い当たりを打っていて、気持ち良くバッティングしていても、試合で打てなかったら意味がない』と言われています。練習から自分にストレスをかけて、しっかり下半身で打つとか、ランナーを想定して打つとか、そういうところをやった結果が春の結果につながったと思います」

次のページ:気にするのは同級生の遊撃手ではなく大学No.1ショート/「春の優勝はフロックではない」

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この記事の執筆者: 馬場 遼

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