花咲徳栄vs滑川総合
夏の全国覇者花咲徳栄、苦しい船出
![花咲徳栄vs滑川総合 | 高校野球ドットコム](/hb/images/report/saitama/20170923007/large01.jpg)
4番手で登板した野村佑希(花咲徳栄)
まさかここまで苦しむとは。旧チームとはいえ、埼玉勢悲願である夏の全国制覇を果たした花咲徳栄の新チーム見たさに会場に集まった観衆はそう思ったのではなかろうか。既に埼玉の他のチームが羨望の眼差しを送る花咲徳栄、当然今大会のシード決め投票でも前評判の高い浦和学院を抑えトップの票数を取りAシードで出場となったが、その船出は苦しいものとなった。
先発は花咲徳栄が右サイドスローの齋藤倖介(2年)、一方の滑川総合は左サイドハンドの岡崎が登板し試合が始まる。花咲徳栄は地区予選同様、今夏4番に君臨していた野村佑希(2年)が1番に座る新布陣でこの試合も臨む。
試合は終始滑川総合ペースで進む。2回表、一死から5番・鈴木陸斗(2年)がレフト線へ二塁打を放ち出塁すると、続く熊谷克巳(2年)のセカンドゴロを、セカンド・羽佐田がトンネルし先制点が滑川総合に入る。
追う花咲徳栄の反撃は3回裏だった。この回先頭の羽佐田が汚名返上とばかりに三塁線を破る二塁打を放ち出塁すると、一死後、9番・田谷野のサードゴロを二塁走者の離塁が大きいと見たサード熊谷が二塁へ送球するが、ボールが走者に当たり、結果オールセーフで一死一、二塁とチャンスが広がる。ここで、迎える打者は野村だ。野村は期待に応えライトフェンス直撃のタイムリー二塁打を放ち同点とすると、さらに二死後、3番・新井もセンター前へポトリと落ちる2点タイムリーを放ちすぐに3対1と逆転に成功する。これでこの試合難なく花咲徳栄が物にするかと思われた。
だが、4回表、花咲徳栄は突然守備が乱れる。この回先頭の石山にファーストゴロエラーでの出塁を許すと、この回からマウンドに上がった二番手左腕・和田は続く岩田優月(2年)に四球を与え、無死一、二塁と傷口を広げる。ここでまたしても5番・鈴木に左中間へタイムリーを浴びると、外野の三塁送球間に打者走者鈴木に二塁進塁を許す。一死二、三塁から続く熊谷のファーストゴロをまたしてもファースト新井がファンブルし、さらにセカンド羽佐田がそのボールの処理にもたつく間に二塁走者の生還も許し一気に4対3と逆転を許す。
一方、滑川総合・岡崎は、3回裏以外は内外角高低へきっちりと投げ分け花咲徳栄打線に的を絞らせない。主砲・野村に対しても臆することなくインコースへ投げ込む強気の投球を見せ、結局、この日3回の二塁打のみに抑えた。
徐々に追い詰められてきた花咲徳栄の反撃は7回裏だった。
この回先頭の松本が左中間へ二塁打を放ち出塁すると、続く羽佐田がきっちりと送り一死三塁とする。ここで、花咲徳栄ベンチは三番手・エースナンバーの中田を諦め、代打・島崎大輔(2年)を送ると、島崎は期待に応え、レフト前へポトリと落ちるタイムリーを放ち4対4の同点とする。
そして、8回表からは4番手としてライトからMAX140km右腕・野村がマウンドへ向かう。野村はこの回2三振を奪うなど滑川総合打線を圧倒し滑川総合への流れをきっちりと断つ投球を見せる。だが、2イニング目の9回表、この回先頭の鈴木にレフト前ヒットを浴びると、一死後7番・池松をストレートの四球で歩かせ一死一、二塁とピンチを招く。
ここは相手の走塁ミスもあり野村が踏ん張り無失点に抑えるとその裏、この回先頭の倉持賢太(2年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く松本の犠打が相手エラーを誘い無死一、二塁とチャンスが広がる。7番・羽佐田が相手のシフトを掻い潜りきっちりと送り一死二、三塁とすると、二死後最後は9番・田谷野がセンター前へポトリと落ちるタイムリーを放ち、花咲徳栄が粘る滑川総合を振り切りサヨナラで何とか初戦を突破した。
まず滑川総合だが、先発岡崎が良く投げた。守備陣もファインプレーを連発するなど試合は総じて滑川総合ペースであっただけに千歳一隅のチャンスを逃してしまった形か。この試合悔やむべくは2つの細かい状況判断のミスが出たことである。一つ目は3回裏、一死二塁でのサードゴロでサード熊谷が二塁へ送球を決断したことだ。もちろん二塁走者を刺せばビックプレーになるが、次打者が野村であっただけにここは無理をする場面ではなかったであろう。
二つ目は9回表、二死一、二塁で二走・鈴木が三盗に失敗したことだ。おそらく前打者・岡村(哲)が放った大きなセンターフライで必要以上に大きく離塁してしまい、タッチアップできなかったことが焦りにつながったのかもしれないが、あの場面は決して無理をする場面ではない。元々この日野村の直球も弾き返すなど3安打を放ったセンス抜群の鈴木だけに高い要求をしてしまうが、番狂わせを起こすにはそういう小さなミスが致命傷になってしまう。王者をひょっとしたらという所まで追い込んでいただけに、結果的に痛いミスとなってしまった。今後状況判断の所を磨けば、さらに伸びる可能性を感じるだけに、是非今後に活かして欲しい。
一方の花咲徳栄だが、大会の初戦、元々今大会までの準備期間がほとんどなく、過去の対戦成績であまり相性の良くない滑川総合が相手ということを差し引いても、決して褒められない試合内容であった。最後に何とか振り切ったが、負けてもおかしくない展開であった。それでも最後に勝ち切ってしまうのはさすがだが、守備陣は4失策と乱れ、そもそも、いくら相手が左投手だからといっても、この日盗塁0、エンドラン0と代名詞である機動力が全く使えず、まだチームになっていない。
投手陣も誰がエースになるかは見えず、当分は4人ぐらいの投手を短いイニングでつなぎ、急場を凌いでいくそうだ。いずれにせよ、今秋は現状では野村が投打に大車輪の活躍を見せないと上位進出は厳しいのではなかろうか。とはいえ、未完成な分、まだまだこのチームの伸びしろが大きいとも言える。大会で劇的に伸びる選手もいる。2戦目以降の野村以外の選手の奮起に期待したい。
(文・写真=南 英博)
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