試合レポート

埼玉栄vs県立浦和

2017.09.27

プロ注目右腕・米倉貫太、流れを変える4回完全8奪三振の快投!

埼玉栄vs県立浦和 | 高校野球ドットコム
米倉貫太(埼玉栄)

 プロ注目のエース・米倉貫太を擁する埼玉栄。この試合は米倉ではなく、左腕の嶋田 航が先発となった。埼玉栄の若生監督は東北、九州国際大付の監督時代らテークバックがコンパクトで切れのよいストレートを投げ込む左腕を育成するが、嶋田もまさにその1人。コンパクトなテークバックから一気に振り下ろすストレートは常時125キロ~132キロ。しっかりと腕が振れたときのストレートは勢いがあり、2009年の甲子園出場のエース・納富秀平(JR西日本)を思い出させる

 しかし打線は浦和・押谷のストレートとカットボールをなかなか打ち崩すことができず、5回まで無得点に終わる。しかしこの男の登場で流れが変わる。エース・米倉である。名将・若生監督が絶賛する逸材だが、関東トップクラスの右腕といってもいい逸材であった。180センチ83キロと恵まれた体格、手足の長さ、肩ひじの柔らかさ、身のこなしの良さ、どれをとっても一級品。

 そして投球フォームも絶品だった。左足をしっかりと上げて、右足はバランス良く立つ。この立ちがその後、体重移動の良さにつながる。お尻から先行するヒップファーストができており、軸足を折り曲げすぎず、エネルギーロスすることなく、体重移動に入ることができる内回りのテークバックをしていきながら、トップに入り、リリースに入るが、打者寄りでリリースすることができており、球持ちも実に安定している。

 投球フォームが良いので、投げるボールもよい。回転数が高い常時138キロ~142キロのストレートも角度があり、コマンド能力も高く、素晴らしいが、それよりも良いのは110キロ前後のカーブだ。うまく抜けたカーブで、簡単にストライクを取る。ストレートと同じ腕の振りで投げることができており、打者はタイミングが合ってない。さらに120キロ~125キロ前後のスライダー、125キロ~132キロの縦スライダー、またスプリット的な球種も投げていた。投球フォームもよく、ストレートの速さも現時点では文句なしで、さらに器用さがあり、奥行きがある素材。NPBスカウトが絶賛したくなるような投手である。

 米倉が抑えると、6回裏、打線が活気づき、二死二塁から6番茶屋 吹祐馬がショートのグラブをはじく痛烈な適時打で1点を先制。茶屋は第1打席で左翼線へ二塁打を打っているが、しっかりと振り切った打撃スタイルが良い右の強打者。6番打者ではあるが、スイングの鋭さ、打球の速さはクリーンナップクラスで、実にレベルが高い選手であった。7回裏にも3点を追加し、4対0とリード。

 米倉は4回を投げて完全。8奪三振の快投を披露。粘る浦和打線を抑え、ベスト8進出を決めた。米倉としては完全に自信をつけた試合となったことだろう。来年のドラフト上位候補に浮上してもおかしくな逸材だったといえる。このまま故障することなく、さらにスケールアップしたらどんな投球を見せてくれるのか、ワクワクさせるようなパフォーマンスだった。

 敗れた県立浦和は県内トップクラスの進学校。高校生クイズも優勝したことがある学校だが、今回は地区予選を勝ち抜いてベスト16入り。野球部としても、学校としても大きな自信になった大会だった。強豪校と対戦しても最後まであきらめない粘り強い戦い。そして活気ある応援は人々を惹きつけた。

(文・写真=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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