試合レポート

花咲徳栄vs山村学園

2017.10.01

花咲徳栄が山村学園・和田を攻略しコールドで関東へ

花咲徳栄vs山村学園 | 高校野球ドットコム
2番手・和田(花咲徳栄)

 埼玉県高校野球秋季大会も準決勝と山場を迎えた。

 第一試合は、Aシード・花咲徳栄と二期連続ベスト4の山村学園という夏の再戦となった。今大会新チームの始動が埼玉で一番遅かった花咲徳栄、初戦こそ苦戦したが、準決勝では別のチームになっていた。試合は一戦一戦チーム力を上げている花咲徳栄が、夏に続きベスト4進出と勢いに乗る山村学園のリベンジを難なく跳ね返して見せた。

 まず打順だが、花咲徳栄は大会序盤とは大きく組み替えている。これまで1番を打っていた主砲・野村佑希(2年)を定位置の4番に戻し、これまで4番を打っていた橋本を5番へ下げる。2番を打っていた韮澤雄也(1年)が現在は野村の前3番を打ち、1番にはこれまで5番を打っていた倉持賢太(2年)が入る。2番には6番を打っていた松本、3番を打っていた新井は下位へ回る。ちなみに前日のベスト8栄北戦からこの打順に組み替えたそうだが、前日は16安打と爆発しており、本日もこの打順を採用する。先発は花咲徳栄が背番号1の中田、一方の山村学園は前日161球完投のエース和田朋也(1年)の連投で試合が始まる。

 試合序盤は山村学園のペースで試合は進む。

 2回表、この回先頭の深田竜二(2年)が死球で出塁すると、続く長谷川の打球がファーストへの内野安打となり、無死一、二塁とチャンスが広がる。ここで6番・櫻澤がきっちりと送り一死二、三塁とすると、二死後、8番・和田がセンター前へタイムリヒットを放つ。だが、センター橋本の好返球もあり、タイミングは微妙であったが二走・長谷川は本塁憤死し1点を先制しこの回の攻撃を終える。

 山村学園は3回表にも、一死から1番・木内輝(2年)が死球で出塁すると、二死後、3番・野邨祐樹(2年)の初球、一走・木内が花咲徳栄・中田のモーションを完全に盗み二盗を決め二死二塁とする。ここで野邨がレフト前タイムリーを放ち2対0とする。

 だが、この回二巡目を迎える花咲徳栄はその裏猛反撃を開始する。この回の先頭打者、先発の中田を早くも諦め、代打に吉倉を送る。その吉倉がレフト前ヒットを放つと、続く田谷野の所で花咲徳栄ベンチはエンドランを仕掛け打球はセカンドゴロになるが、吉倉は二進する。ここで1番・倉持がセンター前へタイムリーを放ち、まず1点、さらに続く松本もレフト前ヒットを放ち一死一、二塁とする。

 ここで3番・韮澤がライト前タイムリーを放ち、すぐさま2対2の同点とすると、その間に一走・松本は三進し、一死一、三塁で主砲・野村を迎える。野村は期待に応えレフトスタンドへ高々と運ぶ3ランを放ち、結局この回一挙5点を奪うビックイニングを作りあっさりと逆転に成功する。さらに続く橋本がセンター前ヒットを放つと、橋本はやや気落ちした相手の緩慢な中継プレーを見て一気に二塁へと進む。後続が倒れこの回追加点は生まれなかったが、このプレーでやや試合の大勢は決してしまった印象を受けた。


 花咲徳栄はその後も攻撃の手を一切緩めない。4回裏からマウンドに上がった二番手・伊織に対し、一死から田谷野、倉持が連続四球を選ぶと、続く松本は、この回からライトへ回った先発・和田の所へやや大きな飛球を放つ。急造外野手は目測を誤り、頭を越され、2点タイムリー二塁打としてしまうと、山村学園ベンチは早くも伊織を諦め三番手・大木をマウンドへ送る。だが、大木も二死後4番・野村にセンター前タイムリーを浴び7対2とされる。

 花咲徳栄は6回裏にも、この回先頭の田谷野の四球を足掛かりに3番・韮澤のセンター前タイムリーで7点差をつけると、投げては4回からマウンドに上がった2番手・和田が4回以降山村学園打線をノーヒットに抑え、花咲徳栄が危なげなく山村学園を退けコールドで関東大会へ駒を進めた。

 まず山村学園だが、今大会この試合まで投打に大車輪の活躍を見せた和田も、まだ1年生、今大会これまでほぼ一人で投げ切り、この日も連投ではさすがに疲労の色は隠せず強打の花咲徳栄打線に捉まった。悔やむべくは、3回裏、野村と勝負してしまった所か。無理をする場面ではなかっただけに悔やまれる一球となってしまったが、今大会これまでの投球は立派であった。

 こんな時こそ打線が奮起するべきであったが、頼みの打線もこの日は序盤こそ前日の勢いそのままに攻勢を仕掛けたが、ややあの3ランで気持ちが切れてしまったか、その後は沈黙した。とはいえ、前日埼玉栄の好投手・米倉貫太を打ち砕くなど打線は強力だ。来春は、地区大会の免除と、今大会ベスト4進出と和田の存在もあり、南埼玉県大会の上位シードは濃厚だ。今後は各チーム和田対策を立ててくることが考えられるだけに、和田の負担を減らすためにも二番手以降の投手の底上げが鍵となるであろう。

 一方の花咲徳栄だが、全国で一番遅い始動というハンデを物ともせず、最終的にはきっちりと関東大会へ駒を進める岩井監督の手腕と試合運びはさすがの一言だ。まず打線に、ある程度目途が立ったのは大きい。だが、当然旧チームとの差は大きい。この日もサードにエラーが出るなど内野陣の不安は拭えず、投手陣もバリエーションは豊富だが、エース野村以外は横一線で決め手に欠く。関東レベルのチームと対峙した時にどうやって最後に野村へつなぐかは見えてこない。

 おそらく、野村には旧チーム清水達也(3年)のようなポジションを任せるであろう。むしろ、旧チームの綱脇慧(3年)のような役割ができる投手を早く1枚でも見つけたい所だが、現状では見当たらない。しばらくは短いイニングで継投することになるであろう。今後も、国体を挟むため、チーム作りという面で岩井監督の我慢の時は続きそうだが、幸い関東大会まで時間はある。韮澤など潜在能力が高い選手もいるだけに、関東大会までにどれだけチームとしての完成度を高めることができるかが鍵となるのではなかろうか。

(文・写真=南 英博

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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