試合レポート

水戸商vs常総学院

2019.05.05

最後に待っていたドラマ 水戸商が9回二死から逆転サヨナラ!

水戸商vs常総学院 | 高校野球ドットコム
本塁打を放った鈴木(常総学院)

 関東大会出場をかけた準決勝。最後の最後で大きなドラマが待っていた。

まず先制したのは水戸商。1回裏、一死から連続四球でチャンスを作り、4番小林嵩(3年)が初球を打って左前適時打で1点を先制。

 だが、常総学院は2回表、一死から5番鈴木琉晟(3年)が右翼席へ同点本塁打を放つ。鈴木は昨年から試合に出ていて、あまり話題にならなかったが、身体能力の高さを生かしたプレーには目をつけていた選手で、学年が上がるにつれて恵まれた身体能力をグラウンドで表現できるようになっている。

 オープンスタンスで構え、ヒッチを入れて打ちに行く独特の動作で打ちに行く巧打者で、打球も鋭い。また二塁守備を見ると、シングルハンドで捕りに行き、捕球から送球に入るまでの持ち替えが速く、長身ながら身のこなしの良さは抜群だ。

 さらに4回表、2番中妻翔が右翼線を破る三塁打。なんとこの時の三塁打のタイムは11秒09。基準が12秒29ということを考えると1秒以上も速い。しかも中妻は外野手の動きを少し見てるこのスピードなのだから最初から三塁を狙うつもりで全速力で走っていれば11秒を切っていたと思う。3番菊田拡和の犠飛で勝ち越しに成功する。

 そこからは両投手の投げ合い。水戸商のエース・小林は元々、捕手出身ということで、コンパクトなテークバックをした投球フォームが特徴的。常時120キロ後半~135キロ前後のストレートを内外角に投げ分け、120キロ台のスライダーを低めに集める投球。打者によって力の入れ加減ができる投手。強力な常総学院打線に対しても臆することなく、内角攻めをしたりと、メンタルの強さが感じられ、内面が優れた投手。投球以外の技術も高く、1.1秒の高速クイック、牽制もうまい。投球の基礎はしっかりしていて、フォームに大きな癖はないので、次のステージでしっかりと肉体面でビルドアップすれば、常時140キロ台も見えてくるだろう。

 また1回途中から登板した常総学院の2番手・池田隼彦は110キロ~120キロ前後のストレートとスライダーを丁寧投げ分けて勝負するアンダースロー。リズムの良いピッチングで、無失点投球を続け、5.2回を投げ、無失点の好投を見せる。

 7回裏から常総学院は3番手に背番号18の一條 力真が登板。190センチ近くはありそうな上背の大きさ、肩、ひじの柔らかさ、真上から振り下ろせる角度のあるフォームを見れば、一目で逸材と逸材。右オーバーから投げ込む速球は常時130キロ中盤~139キロ(手元のガンで138キロ)を計測。100キロ前後のカーブ、110キロ前後のスライダー、120キロ前後のツーシームを投げ分け、ばらつきがありながらも抑えていた。

 これほどの上背があって、まずまずのスピード能力もある。変化球の精度も悪くない。常総学院では久しぶりの大器。高卒プロを狙えるまでの器になってほしいと素直に思った投手であった。


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サヨナラ打を打った高橋は楽しみなショートストップだ

 そして8回表、常総学院は1番大高優成の左翼線を破る二塁打、2番中妻のセーフティバントが決まり、無死一、三塁。3番菊田が詰まりながらも中犠飛を放ち、3点目を入れた。

 そして9回裏、ここまで力投の一條が乱れる。一死から5番森田の右前安打。さらに2四死球で二死満塁。一條は制球に苦しみ、なかなかストライク先行ができない。そして代打・宇野が捉えた打球は一塁へボテボテのゴロ。これがベースカバーが遅れ、内野安打。三塁走者だけではなく、二塁走者も生還し、なんと同点に追いついた。

 そして1番高橋優太が高めに入ったボールを逃さず、ライト越えの二塁打でサヨナラ。水戸商が9回二死から逆転サヨナラを決め、関東大会出場を決めた。

  サヨナラ劇を演じることができたのは、エース・小林の粘り強い投球が大きいだろう。2点差に保ったことがサヨナラ劇につながった。

 サヨナラ打を放った高橋は攻守ともに優れた遊撃手。打者として、トップに入ったとき、ヘッドが大きくかぶさる独特の打ち方をしていて、そこから体幹を鋭く回転させて、振り抜くスタイル。ここまであまり良い結果を残せていなかったが、最後の最後で素晴らしい形で打ちに行った。

 打撃以上に素晴らしいのが守備。深い地位から守り、三遊間の深い位置からでアウトにできる強肩は魅力で、この試合でも三遊間に転がったとこおから踏ん張ってダイレクトスローでアウトにしたプレーは見事だった。守備に関しては武岡龍世韮澤雄也に負けていない好選手なので、ぜひ関東大会で注目してほしい。

(文・写真=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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