試合レポート

東洋大姫路vs報徳学園

2012.05.06

東洋大姫路vs報徳学園 | 高校野球ドットコム

西川大世(東洋大姫路)

伝統の一戦・第2ラウンド その先に見える夏の戦い!

報徳学園東洋大姫路昨秋も対戦した両雄が、決勝で再び相まみえ、東洋大姫路が見事にリベンジを達成し、12年ぶりに春の兵庫王者に輝いた。

報徳学園は、1回戦で好投した乾陽平東洋大姫路は今大会初先発の清名将麻。共に2年生投手をゲームの頭に立てた。
「秋に対戦した時、清名が唯一報徳打線に通用した」と先発投手起用の意図を説明した東洋の藤田明彦監督。一方で報徳も、乾の調子が現状の投手陣で最も良いという思惑があった。
“夏”に舞台を置き換えた時。お互いが『同じ起用をするか?』と疑問は置いておいて、現在の最も良い形で臨んでどんな試合をできるか。やはり直接相まみえないと、わからない部分がある。

さて先攻の東洋サイドは気合が漲っていた。“伝統の一戦”初登板の報徳・乾の立ち上がりから何としても得点を奪いたい。先頭の1番林大地(3年)の肩には、そんなナインの気持ちが乗り移っていた。
1ボール1ストライクからの3球目をセンター前に運ぶ。更に送りバントや四球、ダブルスチールなどで、2死ながら2、3塁と攻め立てた。
打席は5番の西川大世(3年)。「初球からいく。ここで打たなければ」と気合が漲った西川は、乾の2球目を叩いた。打球はライト前に飛び、二者が生還。秋とは全く逆の形で、東洋がこの一戦の先取点を奪った。

2点をもらった東洋の清名は、1回裏を三者凡退で立ち上がったが、2回はコントロールに苦しみ2つの四球。さらにセットポジションでボークも犯した。
「5回くらいまでもってくれれば」という藤田監督も、これには早めの継投を考え始める。このイニングは無得点に終わったが、次の3回に報徳9番の乾に初ヒットを浴びた所で、エースナンバーの西田隼弥(3年)がマウンドに上がった。

報徳
は4回に7番松谷竜暉(2年)のタイムリーで1点を返す。やはり報徳は簡単には引き下がらない。東洋ナインは全員がそう感じていたのだろう。次の1点をどちらが取るかでゲームの行方が左右されるのは明白だった。

5回、その勝負の場面が訪れた。東洋は1死から2番中川広希(2年)がヒットで出塁。2死後、4番坪田元樹(3年)が死球で繋いだ。先制タイムリーの西川を打席に迎え、報徳・永田裕治監督はエースの田村伊知郎(3年)を伝令に送る。守り方、攻め方を打ち合わせた報徳内野陣。
西川に対する2球目、打球は三塁線への痛烈なライナーになったが、惜しくもファウルに。タイミングは合っていた西川。サードの岸田行倫(1年)は、若干ライン際を狭めるシフトを取った。
3球目、西川の打球はすっぽりと空いた三遊間を破った。

ゲームの流れを大きく左右する1点を奪った東洋。この一戦に懸ける気持ちで、報徳を少しだけ上回っていたのが、この1点に繋がった。

報徳
ベンチはここで乾に代えて背番号10の大力健人(3年)をマウンドに送った。


東洋大姫路vs報徳学園 | 高校野球ドットコム

ライバルに敗れ項垂れる報徳学園ナイン

7回裏。報徳は2死からヒットで出塁した1番の佐渡友怜王(3年)が盗塁を決めた。2番勝岡静也は直後の球をセンターへ運ぶ。俊足を生かして佐渡友が生還し再び1点差と迫った。
しかし8回表。東洋は先頭の西川がこの日3本目のヒットで出塁。送りバントと進塁打で2死3塁とチャンスを進めた。ここで代打に片山幸春(2年)を送った藤田監督。
再びタイムを取り。伝令に上野太一主将(3年)を送った永田監督。
「次の打者を考えると、夏ならば敬遠もある場面。でもあえて勝負しなさいと言った」と永田監督。この修羅場を、どうやって切り抜けるか『自分達で考えなさい』という意味もあった。
大力と松谷のバッテリーは1球目に変化球でストライクを取る。2球目、やや高く浮いた球を片山は逃さなかった。打球はレフトへ抜け、再び突き放した東洋。
5回に続いてタイムを取り、細心の注意を払いながら、失点した報徳。このゲームの勝負という視点では、ダメージが残る失点となってしまった。
その裏、わずか7球で三者凡退の報徳。9回に3連打とエラーなどで2点を失い万事休す。9回もわずか6球で三者凡退になりゲームは終わった。

「子供たちの報徳に勝ちたいという気持ちが強かったのだと思います。西田は今日は良かった」と振り返った藤田監督。主将の林も前日の練習から気持ちの強さを見せて勝てたことを喜んだ。

逆に報徳は、試合後のミーティングで永田監督ら首脳陣がなぜ負けたのかを諭すように話していた。そして、秋は完封できた相手が、しっかりと成長してきているとも実感していた。
さらに完勝した姫路工戦のような形が継続できていないと課題を挙げた。この日、ポンポンと打ちあげるのが目立ったように、攻撃、守備とも考えたうえでの工夫がまだできない。
ゴロを転がす、バットを短く持つ、走塁への意識など、劣勢でこそ重要になることがまだ徹底できていなかった。
ただ、「この明石で5試合を戦えたのは大きかった」と総括した指揮官。近畿大会という一歩先の舞台へ向け、もう一度チーム構成を見つめ直せる。今大会は外れた選手たちにも「チャンスがあるぞ」とハッパをかけていた。

お互いが長い歴史があり、『兵庫県で最大のライバル』と意識する東洋大姫路報徳学園。この“兵庫伝統の一戦”第2ラウンドはTOYOに軍配が上がった。
近畿大会でも対戦の可能性はあるが、勝負はやはり夏。果たして3度目となる対決はあるのか。
東洋の林主将は言った。
HOTOKUを倒さないと、夏の連覇はできない」。
もちろん報徳ナインも同じ気持ちだ。TOYOを倒さないと甲子園はない。
中味はともかく、実際にライバルのユニフォームと見つめて、独特の雰囲気の中で相まみえることで見えてくるものはある。
「力は互角。夏はお互いの勝ちたいという気持ちの強さが勝った方が勝つ」と藤田監督は夏を見据えていた。

スターティングメンバー
東洋大姫路
7 林大地、4中川広希、8中島廉太、5坪田元希、6西川大世、3西村裕太、9横田徹寛、2浦岡真也、1清名将麻
報徳学園
6 佐渡友怜王 、8勝岡静也、4永岡駿治、9吉田昌矢、3片濱大輝、7 前川祐樹、5岸田行倫、2松谷竜暉 1 乾陽平

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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