東邦vs西尾東
背番号11の無安打ピッチング
愛知大会準決勝第1試合は、地力の高さをみせた東邦が4対1で西尾東を下し、甲子園出場に王手をかけた。森田泰弘監督は試合後「選手たちが頼もしく見える」と話し、2008年以来の栄冠に向け手ごたえ十分だ。
東邦は先発した背番号11の堀江伸哉(3年)が、相手打線に1本もヒットを許さぬ快投を準決勝の大舞台でやってのけた。前日のブルペンを見た指揮官の先発起用に応え、「今までで一番よかった」という完投勝利。2回表にエラーで出たランナーが犠打とスクイズで生還し、ノーヒットノーランこそ成らなかったが、無安打ピッチングは見事だ。左腕からオーバースローで4種類、サイドスローで3種類の変化球を自在に投げ分け、西尾東打線を手玉に取った。
愛知県屈指の捕手・柴田圭輝(3年)も堀江の好投をサポートした。バッターのスイングや見逃し方をもとに、球種だけでなく堀江の腕の角度もリードした。「オーバースローばかりだと堀江はたびたび打たれていたので、(それまでも被打率の低かった)サイドスローも交ぜるよう堀江に最近言いました。堀江も頑固で、最初はサイドスローを嫌がったんですけど、チームが勝つためにと納得してくれました」と、バッテリー間で交わされた議論を明かしてくれた。
2回表に許した相手の初球スクイズについて柴田圭は「スクイズは頭にありましたが、まだ序盤だから、アウトを1つもらえればという感覚でした。外していればノーヒットノーランだったと思うと、堀江に申し訳ないですね」と冗談交じりに振り返った。打撃では4回裏、カウント3ボール2ストライクから3球ファウルで粘った末に三塁打をマークし、次打者松本浩希(3年)の遊撃ゴロの間に同点のホームを踏んだ。正捕手の頼りがいを存分に発揮した。
敗れた西尾東は、準々決勝で10盗塁をマークするなどここまで快進撃をみせたが、東邦には及ばなかった。先発の畔柳晋太郎(3年)はやや変則気味のフォームから打たせてとるピッチングを展開。「(東邦は)意識しなかった」というものの、「甘いところにいったらヒットを打たれてしまった」と静かに振り返った。それでも東邦相手に4失点は立派で、寺沢康明監督も「疲れもあったかもしれないが、畔柳がよく放ってくれた」と褒めた。
寺沢監督は「打線がもう少し盛り上げられたらよかった」と話し、「甲子園出場と、(60人を超える部員に)一人も退部者が出ないことを目標にやってきた。西尾東はOBの岩瀬仁紀投手(中日=西尾東では寺沢監督の1年先輩)だけでなく、現役の生徒も頑張っているんだぞと見せられた」と、ベスト4進出で公立校の意地をみせた。試合後のミーティングでは、「すごいな、お前ら」と明るい声で最大限に部員を称える指揮官の声がベンチ裏に響いたが、「明日から君たちにノックを打てないのは残念」と言いかけるとやや涙声になった様子で、部員のすすり泣く様子も伝わってきた。
(文=尾関雄一朗)