Column

夏の暑さを食事で乗り切る

2023.07.15

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。

暑い夏がやってきましたね。これからの時期は熱中症予防のための対策を取ることはもちろん、暑さに負けない体力を維持していくこともコンディションを整えるうえで大切になってきます。さて今回はこれからの季節を乗り切る食事について、必要な栄養素や選手一人ひとりが心がけたいことなどについてお話をしたいと思います。暑さによって食欲が落ちると食事量が減ったり、そこから体重が減ってしまったり…といわゆる「夏バテ」のような状態が見られることもありますが、どのようなことに気をつけて過ごしていけば良いのでしょうか。

発汗が多いときは鉄分を多く含むものも意識してとろう

発汗で失われるミネラル分

夏の熱中症対策として、こまめな水分・ミネラル分補給は皆さんもよく知っていることと思います。ミネラルというのは、微量ながらも体に必要な栄養素をまとめたものであり、無機質(むきしつ)とも呼ばれます。その一つにナトリウム(塩分)があり、この他にもカルシウムやリン、カリウム、鉄分などが含まれます。特に汗をかく量が多くなると、その分水分やミネラル分が失われることになるので、補食などを含めてこれらを補給していく必要があります。また運動中ということであれば、体を動かすエネルギー源となる糖質も合わせて摂るようにしましょう。

練習や試合など激しい運動が続くと体温が上昇し、心拍数や呼吸数も上がりますが、これは全身の血液量を増やして体のあらゆるところまで速やかに酸素や栄養素を届けるために必要な体のしくみです。また血液量を増やすためには、酸素を運搬する赤血球も多く必要となりますが、赤血球に含まれるヘモグロビンは鉄分を材料として作られます。発汗によって失われるのは水分、塩分だけではなく微量の鉄分も含まれるため、大量に汗をかくと鉄分が不足し、鉄欠乏性貧血のリスクも高くなることが考えられます。

鉄分不足がもたらすもの

鉄分不足といってまず思い出すのは貧血かもしれません。鉄欠乏性貧血とは血液に含まれるヘモグロビンの量が少なくなることで起こります。ヘモグロビンは酸素を体のすみずみにまで運搬するという大切な役割を持っていますが、このヘモグロビンが不足すると体全体に酸素が十分に行き渡らなくなってさまざまな不具合を生じるようになります。立ちくらみなどはその一例ですが、この他にも疲れやすい・疲れがなかなか回復しない、集中力が続かない、スタミナ不足を感じる、意欲・モチベーションの低下などが見られます。試合や練習での疲労がなかなか抜けないときは、鉄欠乏性貧血がその一因となっている可能性もあります。発汗量が増えてこのような傾向が見られるときは、赤身の肉やレバー、魚をはじめとする鉄分を多く含む食材を意識して摂るようにしてみましょう。

 

糖質に偏らず、栄養バランスを考えて食べものを選ぼう

暑さに負けないための食習慣

暑いとどうしても冷たいものを食べたくなったり、のど越しの良い麺類に偏ったりしがちですが、こうした傾向が続いてしまうと栄養バランスが崩れて体に必要な栄養素が不足することが考えられます。暑い時期でも良いコンディションを保つためには「栄養バランスの良い」食事をとることが基本であり、選手の皆さん自身で実践できるものでもあります。普段から心がけておきたいことを挙げておきます。

《朝食は必ずとること。欠食はNG》

夏に限らずですが、朝食を抜いてしまうと一日に必要な栄養素が不足するだけではなく、水分も不足します。寝ている間は何かを食べたり、飲んだりということができないので、起きたときはすでに「脱水」状態であると考えましょう。その上に朝食を抜いてしまうと、さらに脱水が進むことになり、熱中症になるリスクは高くなります。主食・主菜をメインとし、汁物や飲み物などをあわせてとることを心がけましょう。

《丼物、麺類の単品のみですませない》

昼食などは、丼物や麺類などでサッとすませてしまうことが多いかもしれませんが、このような単品料理は炭水化物(糖質)に偏りがちになります。できれば小鉢やサラダなど副菜もあわせて取るようにすると栄養バランスの偏りも改善されます。手軽に食べられる果物などを活用することも良いでしょう。

《食欲を刺激するものを活用しよう》

暑さや疲労などによって「食欲があまりわかない…」という時でも、なるべく食事量は減らさないようにしたいものです。こういうときはカレーや唐辛子、コショウなど香辛料を使ったものや、お酢、梅干し、レモンなどクエン酸を含む酸っぱい成分を含むもの、ニンニク、生姜、ネギなど体を中から温める香味野菜などを選んでとるようにしてみましょう。大葉やミョウガなど夏においしい香味野菜も食欲増進の助けになります。

毎日練習や試合で体を動かしている分、エネルギー源をはじめ体に必要な栄養素をしっかりと確保することが大切です。これができなくなるといわゆる「夏バテ」のような状態になってしまいます。暑い時期でも良いコンディションを維持するためには、選手自身が食事の大切さを理解した上で「よく食べ、よく休む」習慣を続けていくようにしましょう。

【夏の暑さを食事で乗り切る】
●汗をかくと水分とともにミネラル分も失われる
●発汗の多いときは鉄不足による鉄欠乏性貧血にも注意しよう
●貧血では疲れやすい、集中力や意欲が低下するといったことも見られる
●朝食は必ずとろう。欠食は熱中症のリスクが高まる
●単品での食事では、副菜や果物などを活用して栄養バランスの偏りをなくそう
●香辛料や香味野菜などで食欲を刺激しよう

文:西村 典子
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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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