試合レポート

帝京vs聖パウロ学園

2020.09.13

帝京の新エース・安川が公式戦初登板で完投勝利!鉄壁の守備で強敵・聖パウロ学園を下す

帝京vs聖パウロ学園 | 高校野球ドットコム
先発・眞野文太(聖パウロ学園)

 この夏の東東京王者の帝京が公式戦初戦を迎えた。相手は聖パウロ学園。両チームがグラウンドでアップを行うと途端にグラウンドの空気が変わった。体のキレ、キャッチボールの勢いを見ても強豪という雰囲気がある。そしてシートノックの動きもキビキビとしており、特に帝京の守備力は新チームの段階では突き抜けている。8月の取材の時から厳しいプレッシャーをかけながらやっている様子が見えたので、それが盤石の守備を築いたといえる。

 
試合は前評判通り、接戦となった。帝京聖パウロ学園の好投手・眞野文太に対し、機動力で攻略しようとする。まず1番尾瀬雄大が左前安打。尾瀬は盗塁を仕掛け、暴投を誘い、一気に三塁へ。2番杉本直将毅は死球。3番高橋大陸の場面でダブルスチールを試み、暴投を誘う間に三塁走者が生還。さらに3番高橋の適時打で2点目。今、振り返れば、眞野を叩くチャンスはこの回だけだった。帝京は3点目を挙げられず、苦しい試合展開となる。

  眞野は2回以降、立ち直りを見せた。コンパクトなテークバックから力強い速球、スライダー、カーブを投げ込み、打たせてとる投球で帝京打線をヒットを浴びながらも粘り強いマウンド捌きで3点目を与えなかった。ちなみに眞野は三兄弟の三男で、3学年上の優太(帝京平成大)が帝京で、次男が1学年上で主将を務めた寛太。次男も前年のブロック予選で対戦しており、眞野家は帝京と関りが強いのが分かる。

 そして帝京の先発・安川幹大も公式戦初登板。180センチ76キロと恵まれた体格、さらに肩、ひじが柔軟で、滑らかなテークバックから投げ込む直球は角度があり、切れのあるスライダー、チェンジアップ、ツーシームを投げ分け、スイングが鋭い聖パウロ学園打線を打たせてとる投球を見せた。

 小松川第一中出身で、都大会3位経験のある実力派は帝京にあこがれ入学。江戸川区出身の安川は自宅から通っている。帝京伝統の三号飯など体づくりに取り組み、入学から体重が10キロ、球速も10キロレベルアップし、現在の最速は141キロ。そして背番号1を獲得したのはこの夏の成長が大きかったと前田監督は語る。
「夏も入っていたんですけど、調子が悪くて投げさせなかったんです。それが悔しかったのか。試合が終わってグラウンドに帰っていくと、ずっと投球練習をしていたんです。夏場でも意欲的にやっていましたよね」

 190センチの長身右腕・植草翔太のエース争いを制したのは総合力の高さだ。

「変化球の精度が非常に高いこと。そしてこの夏休みの練習も意欲的に取り組んでいたので、ベンチに入れることを決めました」

 
 8月に取材したときの練習を振り返れば、フィールディング練習など1つ1つの練習をそつなくこなしていたことを思い出す。

  そういったところが精神的な強さにつながっているのだろう。さらに投球のテンポも速く、すいすいと試合を作っていく。

 安川の一番の武器というのは全体的な動作に無駄がなく、しなやかさがあることだ。


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先発・安川幹大(帝京)

 長く、帝京の投手を見てきたが、これほどスムーズな投球フォームをしていて、リズムよくストライクが取れて試合を作れる本格派右腕はなかなかいない。

 それはモデルにしている投手は良いかもしれない。安川は岸孝之(東北楽天)にあこがれを持っており、柔らかく体を使う投球フォーム、伸びのある直球を参考にしており、伸びやかにワインドアップに入り、左足がすっと立った姿は美しい。一連の流れが実に綺麗で、力の入れどころが分かっている。

 入学当時、植草や体の大きい同級生投手を目の当たりにして、どうしたらライバルに勝てるかを考えた結果、自分の武器である切れのある直球をに磨きを挙げ、1年夏からベンチ入り。一歩ずつレベルアップした成果がこの秋に出ている。

 終盤何度もピンチがありながら、それを救ったのは1年生ながら正捕手となった本村千夏良(ちから・川崎北シニア出身)だ。8回には盗塁を二度刺し、無失点に抑えた。安川も「あれは大きかったです。本当にありがたかったです」と笑顔を見せた。最終的に1失点完投勝利に抑え、公式戦初白星を挙げた。101球を投げ、9奪三振、四死球2と安定感抜群の投球だった。

 
エース安川の勝利に貢献した本村は前田監督からの評価も高い1年生捕手で、何より2.00秒前後のスローイングはシュート回転することなく、まっすぐに伸びていく球筋は光るものがある。打順は9番だが、川崎北シニア時代は打撃の中心だった選手で、実際に打撃を見てみてもトップに入ってからスムーズなスイング軌道で広角に打てる打撃ができる。これほどの打力がある選手が9番にいるのは厄介だといえよう。

 打線は8安打打ちながらも2得点に終わった。前田監督は「最近は低調気味なんですよね。だから試合前日は打撃重視の練習をしてきました」と語るように、まだ苦しい時期が続いている。それでも、1番尾瀬の打撃センスは光るものがあった

 ホームラン性のファールを打つなど広角に打ち分け2安打。スムーズなスイング軌道で下半身主導のスイングができており、さらに脚力も高く、センターの守備力も強肩が光る。1年から順調に伸びている左打者だろう。

 敗れた聖パウロ学園は非常にレベルが高いチームで一次予選で負けるのが勿体ないと思わせるほどのチームだった。エース・眞野はもちろん、1番・深沢龍士も1回裏、安川から二塁打を放ち、スムーズなスイング軌道や機敏な動きを見せる二塁守備は魅力的で、いずれ注目していきたいプレーヤーだった。

 こうして強敵・聖パウロ学園を下し初戦をものにした帝京。1週間で立て直して、さらにレベルアップした姿を見せる。

(記事=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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