Column

ただのBGMではない!野球応援を彩る吹奏楽部の活躍

2015.07.16

 夏の高校野球を彩るものの一つに、ブラスバンドの応援がある。各校オリジナルの曲を持っていたり、最近では応援の定番曲を集めたCDが発売されたりと、吹奏楽部に固定のファンが付いている場合も多い。今回は、そんな吹奏楽部と演奏される曲についてみていきたい。

もはや10人目の選手!コンクール常連校による圧倒的な応援

駒大苫小牧ブラスバンド

 野球部が強い学校は、吹奏楽部も強豪として知られていることが多い。最近では東海大四山形中央常総学院習志野春日部共栄大阪桐蔭天理愛工大名電などが吹奏楽の全国大会に出場。また、龍谷大平安駒大苫小牧東海大相模なども吹奏楽、マーチングの強豪として活躍し、その多くが夏の野球部応援を自らのコンクール練習と両立させている。

 約200人の大編成で吹きまくる超攻撃的な応援として、様々なメディアにも取り上げられ話題となった習志野。「うるさい!は褒め言葉」という突き抜けた姿勢で高校野球ファンを驚かせた。この強気の姿勢に溜飲を下げ、また憧れた吹奏楽部員も多いのではないだろうか?そう、吹奏楽部員はデカい音を出せてナンボなのだ。この感覚は、打球をどこまで飛ばせるか、に近い。習志野吹奏楽部は自チームの応援の際ベルを打席に向けるので、ネット裏辺りにいると特に、物凄い音圧を感じることが出来る。対戦相手、しかも劣勢に立たされているチームのファンとすれば、うるいさい以外の何物でもない。
習志野と言えば、オリジナル曲「レッツゴー習志野」。夏になると、OBである千葉ロッテマリーンズの福浦 和也選手が打席に入った時に演奏されたりもする。
ちなみに今年、同じ千葉にありこちらも吹奏楽界で名を馳せる拓大紅陵と合同で「習志野 ×拓大紅陵 野球応援コンサート」なるものも開催され、チケットはほぼ即完売のプラチナチケットだった。球場で野球の応援をしながら演奏を聴けるのは、お得だと言っていい。

 この、吹奏楽部を中心とした応援を攻撃の一部としてとらえるようになったのには、智辯和歌山の存在は大きい。もはや定番となっているアフリカンシンフォニーも智辯和歌山智辯学園が応援歌として採用し、野球部の強さと共に全国に広がった。その智辯和歌山といえば、「コパカパーナ」。そして吹けば何かが起こると言われる「JOCK ROCK」だ。


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[page_break:吹けば何かが起こる!?甲子園の魔物を引き出す『魔曲』]

吹けば何かが起こる!?甲子園の魔物を引き出す『魔曲』

ギリギリの戦い、最後の後押しは応援

 甲子園には魔物がいる、とはよく言ったもの。それまで何の問題もなくスムーズに試合を進めていたチームが信じられないようなプレーが出て、一転ピンチになる状況が多々ある。その多くの場面で印象的に流れている曲がある。

 2013年の夏延岡学園など多くの学校による「あまちゃん」のテーマが不敗神話を生み、今ではすっかり定番曲となった。
余談だがこの曲、可愛いリズムとメロディに踊って楽しいダンスが付いているが、それだけにリズムキープと互いのタイミングを合わせるのが非常に難しい難曲でもある。これから球場で耳にする機会があり、上手くきまっていたら吹奏楽部とチア、そしてスタンドの球児と観客の気持ちが一つになっている証拠。そのチームは強いと言っても良いかもしれない。

 また、沖縄県勢のスタンドの盛り上がりはとても楽しそうで、毎年球場全体を巻き込み、ホームとしてしまうことで知られる。対戦相手としては非常にプレッシャーとなる。特に「ハイサイおじさん」は、これぞ沖縄!というイメージしやすい曲で、毎年ここぞという場面で演奏されている。もはや夏の風物詩と言ってもいい。
一時期、歌詞や曲の背景を問題視する動きが出て封印されていたが、復活。対戦相手に強烈なプレッシャーを与える名曲、魔曲として夏を彩る。

 天理の「ワッショイ」も忘れてはならない。地を這うような低音に、じっとりとした音とテンポ。「何か」を召喚しそうな迫力がある。ランナーが得点圏にいる時に演奏されるので、相手としたらそもそもピンチだという所があるのだが、実はこの「ワッショイ」、相手投手の体に馴染んできた辺りで急に切り替わり、テンポが速くなる。不安感を煽るのには最高だ。守備に付く方はたまったものではない。
天理の応援曲はこの「ワッショイ」をはじめ非常にシンプルな曲で構成されている。流行りの曲は取り入れない。それでも印象に残る応援として相手から恐れられているのは、全国コンクール常連の確かな技術あってこそだろう。

 そして『魔曲』というフレーズを有名にしたのは、龍谷大平安のチャンステーマ「怪しいボレロ」だろう。もう名前から怪しい。同じく人気のアフリカンシンフォニーを髣髴とさせる大地のような包容力と、雄大な古城を目の前にしたような威圧感と荘厳さを感じさせる、高い人気を誇る名曲だ。
この壮大なテーマを吹ききるには、ピッチを正確にコントロールする技術はもちろん、大きな肺活量に裏打ちされた音量が必要となってくる。吹奏楽の強豪ならではの1曲であり、怪しさを出すのに、相当なトレーニングを積んでいるはずだ。


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[page_break:原曲を聞いたことはある?懐メロ・クラシックの名曲たち]

原曲を聞いたことはある?懐メロ・クラシックの名曲たち

暑さに負けない熱い応援を繰り広げる

 応援歌は、時代と共に移り変わるものでもあるが、定番曲として古くから受け継がれている曲が多数だ。もはや原曲は何なのか知らない、という球児も多いことだろう。
山本リンダの「狙いうち」、ピンクレディーの「サウスポー」、言わずと知れた王道野球アニメ主題歌の「タッチ」などは、なんとなくタイトルとしても野球と関わりがありそうなので聞いたことがあるかもしれないが、Xの「紅」、光ゲンジの「パラダイス銀河」、キャンディーズの「春一番」、「宇宙戦艦ヤマト」などはもはや野球との関係は無い。長く歌い継がれるには替え歌にしやすいゴロの良さと、テンポ感が重要だという証拠だ。
また、必殺仕事人のテーマは、野球応援とテレビのバラエティーぐらいでしか聞いたことがないのではないだろうか?あのトランペットがビシッと決まることはなかなか無いので、球児たちにはぜひ原曲で確認してみて欲しい。そして、球場で決まった際には心の中で拍手を送って欲しい。

 クラシックからは、やはりラテン系の名曲が情熱を引き出すようだ。
球児たちに人気の「エルクンバンチェロ」。ややゆっくりとしたテンポで演奏されても楽しい曲だが、リズム感の確かさが要求される。

テンションの上がる曲なので、歌いながら踊る野球部員と呼吸を合わせるのが非常に難しい。どうしてもテンポが速くなるが、聞いている方もテンションが上がるテンポで演奏するには、想像を絶する体力と集中力が必要となる。もし演奏と野球部の息が合わなくても、「ズレてるなぁ」などと思わず、「ここが頑張りどころだ!」と応援してほしい。
同じくラテンの名曲「エスパニア・カーニ」も野外で演奏するにはキツイ1曲。そもそも手を出すことも少ないが、もし演奏している吹奏楽部がいたら、相当気合が入っている証拠である。球場で「おっ!」という顔をすれば、吹奏楽部員や顧問にもニヤリと喜ばれるかもしれない。

 ここでは大編成のブラスバンドを中心に紹介してきたが、OB、OGがトロンボーン1本持って応援に駆け付け、球児と一緒になって汗をかくというのも夏の醍醐味であり味わい深いもの。吹奏楽部員に限らず、球場で楽器を持った人間は、暑かろうが砂埃が舞おうが雨が降ろうが、(時に文句を言いながらではあるが)力の限り応援をする。その心意気をしっかりと感じてみてほしい。グラウンドを駆け回る球児に注目するのはもちろん、楽器からの照り返しなど強烈な暑さと戦いながら奮闘する吹奏楽部の活躍にも耳と目を向けてみるのはいかがだろうか。

 

(文・編集部


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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