志学館vs国分
菅原(志学館)
戦国・千葉を戦うには
第3試合目は春ベスト8の志学館と千葉国分の対決。試合は志学館の菅原と千葉国分の酒井の投げ合いとなった。
志学館の菅原慎(右/左178センチ75キロ)。セットポジションから入り、真っすぐ足を上げていき、バランスよく足を上げて、コンパクトにテークバックを取って腕を振りだしていく投球フォーム。実にオーソドックスである。余計な負荷がかからないバランスの良いフォーム。目測で130キロ前後の速球を両サイドに散らせていき、スライダー、カーブを織り交ぜていく投球。大崩れしない安定した投球スタイル。丁寧な投球スタイルは強豪校でも最小失点に抑えるモノは感じた。
千葉国分の先発投手は酒井勇輔(2年)。左腕から両サイドへ緩い球を投げ分ける。志学館打線はその遅さに完全にはまってしまった。緒戦特有の硬さと酒井の遅い球により振り回す打者が多くなっていった。次々とフライが多くなり、凡打を重ねていった。
試合は9回になっても決着が付かずに延長となる。菅原は被安打4奪三振5四死球1と安定した投球。一方で酒井は被安打7四死球5三振1と粘り強く投げていた。そしてフライアウトが14個。志学館打線は酒井の術中に嵌っていた。
試合後、健闘を称える
10回の表、菅原はさらにギアを入れる。6番服部を空振り三振、7番土田をファーストライナー。8番酒井を見逃し三振に取り打ち取り、10回の裏を迎える。
10回の裏、3番山本が倒れると4番ロドリゴがセンター前ヒットで出塁。さらに代走を送り、いきなり盗塁を敢行。送球がそれて一気に三塁へ。
ここで千葉国分はタイムを取り、満塁策を選択肢。一死満塁で7番山田。山田は初球を打ってレフトフライで二死。ここで8番の高田。ここまで4打数3安打と見せている。高田はストレートを振り抜き、三塁線へ。サードゴロになるかと思われたが、サードキャンバスに当たり、レフト前へ抜けるサヨナラヒット。志学館が苦しみながらもサヨナラ勝ちを見せた。
最後はお互いが健闘を称え合い、がっちりと握手。非常に清々しい気分にさせられた。
Bシード・志学館が千葉国分に苦戦。志学館・川俣監督によるとこの試合展開は想定内だったという。
「やはり緒戦ですから、硬くなって苦しめられるのは想定内でした。大事なのは指揮官がバタバタさせてはいけませんし、どっしりと構えながら指揮を取りました」
指揮官の焦りは選手の焦りを呼ぶ。だから川俣監督は極力、笑顔で接していたという。そしてゲームプランとしてはとにかく守り抜くこと。先制点を上げないこと。それを徹底させた。
「酒井君の投球に完全にはまっていましたし、練習試合でもこんな内容は見られない。それだけ公式戦は違うのでしょうね。点が取れないなら、与えない。しっかりと守り抜け!と選手たちに伝えました。そういった意味では今日は先制点を与えずにサヨナラ勝利を上げられたのはかなり大きかったと思います」
最後まで守り切った試合内容を評価した。
集まる国分ナイン
今年も期待をかけられながらも初戦敗退する学校が多い。
川俣監督は初戦勝利できたことに「また試合ができる機会が与えられたことを幸運に思います」と振り返った。
負ければ一発終わりの夏の高校野球。特に千葉県は戦力差が少なくなく、番狂わせが起こることが常にある。だから川俣監督のように苦戦することをしっかりと想定しながら、どっしりと構えて采配し、選手をリラックスさせてゲームを行う考えは参考になる。川俣監督の考えは一つの考えだ。各校の監督がいろんなアプローチで夏を戦うか、千葉を戦うかを模索している。いかにして自分たちの野球をさせてあげるか。言葉は簡単だが、試みると非常に難しいのだ。それだけ夏の千葉は深く、厳しい。
(文=編集部:河嶋 宗一)