木更津総合vs専大松戸
千葉県を代表する右腕、左腕の対決は篠木健太郎が制し、2年ぶりの千葉県王者に!
今年の千葉県ナンバーワン右腕・篠木健太郎、ナンバーワン左腕・西村卓真の投げ合いは期待通りの熱戦となった。準決勝のリリーフから中1日のリリーフとなった篠木健太郎は連日の快投。
立ち上がりから147キロをマークするなど、常時145キロ前後・最速149キロのストレートは威力抜群。専大松戸打線になると空振りを奪えないが、それでも詰まらせて内野、外野フライの山。また130キロ前後のスライダー、110キロ後半の曲がりが大きいスライダー、100キロ前後のカーブを投げる。
西村も左腕のグラブを少し高く掲げ、真っ向から振り下ろす左腕で、常時130キロ~139キロを計測。昨秋と比べると3キロ~5キロスピードアップに成功。球威で押し込むことができており、ストレートでねじ伏せる投球を見せれば、さらに120キロ中盤のスライダーの切れ味も素晴らしく、低めに決まったスライダーは多くの木更津総合の打者から空振りを奪った。
リードする鈴木康平は「以前は内角を要求して真ん中に入ることが多かったんですけど、今はそれもなく構えたところにくるようになりました。球威も増して、スライダーの切れ味も増してさらに打ちにくい投手になりました」と成長を語る。
テンポの良い投手戦のまま試合が動いたのは4回裏だった。二死二塁の場面で打席に立った篠木は136キロの内角ストレートを打ち返し、右中間を破る適時三塁打で1点を先制する。五島監督は「今年の打線だと、投手も『野手』にならないといけないので、篠木の一打は大きかったと思います」
篠木を含めて木更津総合投手陣の打撃力はレギュラーと変わらない。篠木は2月に取材に訪れた時、紅白戦で逆方向へ鋭い打球を放っていた。1年かけて『野手』としても成長を見せたことが先制の一打につながった。
5回表、一発で同点に追いつかれたが、5回裏、相手のけん制悪送球から1点を勝ち越し、篠木は快調なピッチング。7回表、五島監督から「さらにギアを上げていきなさい」と指示があり、最速149キロをマーク。この力入れ加減の調整はずっとテーマにしてきた。すべては勝つため、そして9回になっても投げ抜くため。
篠木は終盤のほうが147キロ~149キロを計測しており、9回になっても149キロ。結果的にストレート57球のうち、140キロ以上は54球。平均球速145.12キロと圧巻の投球内容。専大松戸は前日に球速150キロ、スライダー140キロに設定したが、専大松戸の主将・吉村が「篠木君はマシンのそれ以上でした」と脱帽。4安打7奪三振1失点完投勝利で見事に頂点に立った。
五島監督は「今年は篠木のチーム。背中で示すだけではなく、もっと周りをみえるようになってもらいたい思いで、主将に据えました。本当によく頑張ってくれたと思います」と篠木の成長を絶賛。2月の取材の時、主将としてまだまだというコメントだったが、自粛期間を経て投手としても主将としても成長した姿があった。
今大会、30イニングを投げ、自責点2、防御率0.64、34奪三振、K/BB8.5、最速149キロ・平均球速145キロほどという驚異的な結果とパフォーマンスを示した。長い歴史を誇る千葉県の高校野球でもこれほどの右投手はそうそういない。間違いなく歴史に名を刻んだ篠木の快投だった。
敗れた専大松戸もエース・西村は今大会わずか自責点1と抜群の内容を示した。主将・吉村は「力を出し切ったので悔いはないです」と振り返った。甲子園中止後、吉村はモチベーションが落ちたと振り返る。練習を再開してもなかなか気乗りしない。
そんな時、コーチから「甲子園が中止になっても、お前らの野球が愛する気持ちはそんなものか」と指摘され、コーチや部長と1時間以上の話し合いを行い、「3年全員でベンチ入りして試合を行うことが最初で最後の機会。それをモチベーションにして頑張ろう」と心に決め、決勝戦まで勝ち進んだ。
こうした気持ちの持ちようが難しい今大会で、最後まで真剣勝負を見せてくれた両校ナインは素晴らしい。やはりトーナメント制の大会はチーム、選手の気持ちを引き締め、燃えさせる良い制度だといえる。また秋の一次予選から熱い勝負を期待したい。
(記事=河嶋宗一)