大曲工vs英明
相手投手のコントロールの良さを逆利用したファーストストライク攻撃
1点を追う大曲工の6回裏の攻撃。英明の左腕・田中寛大(3年)を攻略し、わずか10球で逆転に成功した。
10球で逆転のカギとなるのが、ファーストストライクから積極的に打つ姿勢だ。大曲工は前半からその姿勢を見せ、5回まで田中に投げさせた球数は50。それが6回の攻撃ではもっと積極的になった。
阿部大樹監督は、5回終了後のグラウンド整備の間に、少し長めのミーティングを行っている。
「打者の反応が、まだ相手投手の球を絞り切れていないようでした。じゃあ、どうする?ということを選手に尋ねました」とミーティングの状況を話した指揮官。田中のどの球に絞っていくのかをこの時に再確認した。
この試合で大曲工打線が積極的な攻撃をした理由がもう一つある。それは田中が四球を与えないコントロールの良い投手であったこと。つまり荒れ球になる心配がないため、ストライクゾーンに的を絞りやすいのだ。
6回裏の場面に話を戻す。
先頭の8番・堀江丈(3年)が初球をレフト前へと運ぶと、9番・鈴木平は初球で送りバントを成功させた。 2球で作ってもらったチャンスに乗ったのが1番・佐々木駿一(3年)。1ボールからの2球目をレフトへ弾き返し、堀江が同点のホームを踏んだ。
続く2番・赤川駿(3年)は初球でバントを失敗してしまうが、3番・中野星夜(3年)が1ボールからの2球目をセンターに運び、チャンスを継続させた。
そして4番・武田龍星(3年)が2ボールからの3球目をセンター前へ落とし、佐々木駿が勝ち越しのホームを踏む。これが決勝点となった。
この10球での逆転。全てファーストストライクで勝負をしている。試合後の選手からは、「コントロールが良い所を逆に利用しよう思った」という考えが明かされた。逆にマウンドの田中にとっては、コントロールが良すぎたことが仇となってしまったのかもしれない。
次の7回裏、大曲工は1番・佐々木駿が追加点となる2点タイムリーを放つ。4対1とリードを広げて勝利に大きく近づいた。これも2ボールからの3球目、つまりファーストストライク攻撃であった。