春2連覇を目指す大阪桐蔭。ひと足早くセンバツに向けた課題を考察
明治神宮大会2連覇から見る勝ち方
神宮大会を制した大阪桐蔭
昨年秋の明治神宮大会も、大阪桐蔭(大阪)は強豪から勝利して2連覇を果たした。バリエーション豊かな勝利の仕方も見受けられ、準決勝の仙台育英(宮城)戦と決勝の広島広陵(広島)戦は、立て続けに逆転勝ちしており、真の強さも感じられた。
この世代の大阪桐蔭は、エース兼キャプテンの前田 悠伍投手(2年)を中心とした、チームビルディングを高めている。野手陣は、2番の山田 太成外野手(2年)と3番の徳丸 快晴外野手(1年)が大会を通して、5割以上の打率を残して、打線の起点となった。
チームの中心である前田は、2年連続で明治神宮大会で胴上げ投手となった。しかし、相手チームが研究をしていたこともあり、近畿大会から打ち込まれる場面も見られた。現状は投手として全てが70〜80点でまとまりすぎているため、何かねじ伏せられるものが欲しいところだ。投手としてどれか突き抜けた力をつければ、夏の甲子園のような雰囲気や状況が劣勢の時にねじ伏せられる投手になれるだろう。
初戦の東邦(愛知)戦は、前田が中村 騎士内野手(2年)にホームランを許すも、相手のエラーが重なり、最終的には9得点を挙げて勝利した。2戦目のクラーク記念国際(北海道)戦は、打線が爆発力を見せる。前田の登板はなかったものの、12対2のコールド勝ちで大勝した。
前田 悠伍(大阪桐蔭)
準決勝は国体でも対戦をした仙台育英だ。春の甲子園覇者対夏の甲子園覇者の対戦は非常に注目度が高かった。仙台育英は大阪桐蔭打線が左打者の対策で、左腕の仁田 陽翔投手(2年)が先発。大阪桐蔭は前田が先発で試合が始まった。仙台育英は、こちらも注目の選手でもある山田 脩也内野手(2年)を中心に攻め立てて初回に先制点を挙げる。2回も追加点を挙げて、初回から仙台育英ペースで進んだ。大阪桐蔭は3回に制球が定まらない仁田から2つの四球でチャンスを広げて徳丸の適時打で1点を返した。仙台育英は、4回にエース高橋 煌稀投手(2年)がマウンドに上がるが、6回にピンチを招いて左腕の田中 優飛投手(2年)に変わるが、山田が二塁打を放って逆転。その後も大阪桐蔭は、追加点を挙げて突き放した。9回に前田が2本の適時打で1点差に追い上げられたが、161球を投げて完投勝利で決勝進出を果たした。大阪桐蔭は勝利をしたものの、仙台育英は夏のメンバーが残っていることから、センバツ以降も脅威となっていくだろう。
決勝は2年連続で広島広陵との対戦になった。大阪桐蔭は南 恒誠投手(2年)が先発。しかし、序盤から広島広陵打線に捕まり、準決勝と同様にビハインドの展開になった。4回には南 陽人投手(1年)が、注目のスラッガーでもある真鍋 慧内野手(2年)に2ランを打たれて、一時は5点差となった。
ただ、このままで終わらないのが、大阪桐蔭打線だ。5回の先頭打者の長澤 元外野手(2年)の三塁打から広島広陵先発の倉重 聡投手(2年)を攻め立てる。山田、徳丸、南川 幸輝捕手(2年)の連続適時打や押し出しなどで5点差を追いつく。さらに、6回にはこの大会で当たっている山田の適時打で勝ち越した。勝ち越した6回からは前田がマウンドに上がる。その前田が4回7奪三振の好リリーフを見せて、大阪桐蔭が史上初の明治神宮大会2連覇を果たした。
[page_break:秋季大会では戦いながら野手陣を育成]秋季大会では戦いながら野手陣を育成
境 亮陽(大阪桐蔭)
大阪桐蔭は、これまでの世代と比較すると、異なる点が多々見られた。野手陣に関しては、2番の山田と3番の徳丸以外はほとんど固定せず、4番打者に関しては荒削りながらも長打力があるラマル・ギービン・ラタナヤケ内野手(1年)や南川、佐藤 夢樹内野手(2年)といったあたりが座り、公式戦で勝ち進めていきながら選手たちを競争させていたことがわかる。
明治神宮大会までの秋季大会で起用された選手は、その試合でしっかりを結果を残していたこともあり、野手陣の層の厚さを再確認できたのではないだろうか。
野手に関しては、境 亮陽外野手(1年)やラマルの育成ができれば、相手チームからも、かなり脅威になっていくため、境はトップバッターとして起用していき、ラマルは6、7番あたりで育成していくと大きく育っていきそうだ。
特に2018年を彷彿とさせるかのように山田や徳丸など中心選手は左打者が多いため、長打力が見込めるラマルを含めた、右打者の成長が鍵を握っていくだろう。
[page_break:今後の課題はチーム全体が前田に頼りすぎないこと]今後の課題はチーム全体が前田に頼りすぎないこと
南 恒誠(大阪桐蔭)
投手陣に関しては、ほとんどの試合で、前田が先発をした。その前田のピッチングが目立った中で、近畿大会の準決勝と明治神宮大会の2回戦では前田をマウンドに上げなかった。近畿の準決勝では、細かい継投策で龍谷大平安(京都)に勝利した。西谷 浩一氏が監督になってからの大阪桐蔭を見ると、ショートイニングの継投策は珍しいことだった。
2012年や2018年の投手陣は先発として、長いイニングを投げられる投手が揃っており、まさにローテーション化が可能だった。その世代と同様に、今年3年生の川原 嗣貴投手や別所 孝亮投手、前田の投手陣も、春夏連覇や主要大会(明治神宮大会・センバツ・夏の甲子園・国体)グランドスラムができると思えるぐらいかなり自信があったのではないだろうか。誰が見ても盤石な布陣であり、3投手とも先発として長いイニングを投げられる投手だった。しかし、夏の甲子園準々決勝の下関国際(山口)の打線に攻略され逆転負けを喫した。
その夏の甲子園では、優勝を果たした仙台育英や、春季近畿大会に敗れた智辯和歌山(和歌山)に勝利した國學院栃木(栃木)は細かい継投策が目立った。細かい継投策ではなくても、下関国際のように出力や打線を制圧できる力のある投手をリリーフに置く戦略も、印象に残ったのではないだろうか。今年の夏に関しては、これまで通りの投手育成と優勝できなかった余韻は大きかったと見ている。
その影響もあったのか、前田が登板しなかった秋季近畿大会準決勝の龍谷大平安戦では、かつては見られなかったショートイニングで5人の投手を繋いで勝利。特に2番手の南陽は、火消しから回跨ぎまで素晴らしいリリーフを見せた。前田が投げなかった試合で、この勝利は1勝以上の価値を見出したといっても過言ではない。明治神宮大会の2回戦も3投手の継投策で勝利。実戦経験があまりない投手が底上げされた試合だった。その相手が、龍谷大平安やクラーク記念国際だった点は非常に大きかっただろう。
さらに、夏の甲子園で準優勝を果たした下関国際のように、力のある投手をリリーフに回すことも明治神宮大会決勝で試していた。その結果、前田が無失点の好リリーフで連覇を果たした。
これまで、実戦登板をした5人の投手は全員140キロ台を記録したが、大阪桐蔭は6人の投手が140キロ台を記録したこととなる。下記が6人の投手の球速だ。
前田 悠伍:148km/h
南 陽人:145km/h
南 恒誠:145km/h
平嶋 桂知:144km/h
松井 弘樹:143km/h
境 亮陽:141km/h
参照:高校野球ドットコム
140キロ以上をたたきだす6人の投手陣を確立した。現状はまだまだ前田頼みではあるが、前田自身の課題はもちろんのこと、このような勝ち方を確立していければ、2度目のセンバツ2連覇に近づいていけるだろう。
(記事:ゴジキ)