高知vs明徳義塾
尾松義生(明徳義塾)
高知、「対明徳義塾」奥義炸裂でライバル戦4連勝!
昨秋は四国大会優勝。先のセンバツでは初戦敗退も日大三(東京)と好勝負を繰り広げた明徳義塾と、昨秋県大会V・四国大会ベスト4に続き、春の県大会でも5年ぶり17度目の優勝を果たした高知。全国でも戦える高知県高校野球界の両雄が相まみえる形となった四国代表順位決定戦は、昨年10月11日に開催された秋季大会決勝戦同様、中盤6回まで両者無得点という緊迫した展開が続いた、
その均衡を破ったのは7回表・高知が敢行したスペシャルプレーであった。1死1・3塁のチャンスで打席には7番・柿部理央(3年)。彼は力投を続ける明徳義塾左腕・尾松義生(3年)の直球に押され、杉原賢吾(2年)へのキャッチャーフライに終わったが、それを見るや1塁ランナーの松窪海斗(3年)が2塁へまさかのタッチアップを図ったのである。
そこで慌てて杉原が2塁へ送球すると、今度は「松窪さんがタッチアップしていたので、投げた瞬間にいけると思った」3塁ランナー法兼駿(2年)がホームへ突入。
遊撃手からベースカバーに入った尾松へ返ったボールより一瞬先に法兼の足が入り、先制点を奪った高知は、続く代打・岡崎大祐(3年)もタイムリー。「今日は強気のピッチングができた」先発右腕・細川孝典(3年)の好投を援護した2点は、そのまま勝利につながる2点となったのであった。
実はこの一連のプレーは「1・3塁へのファウルフライで相手の体勢が悪い場合、タッチアップで進塁する」という冬練習で繰り返し行なっていたパターンを選手たちがその場で応用したもの。「バントができないなど、全体ではまだ野球ができていない部分が多いが、先制点の場面はベンチの選手たちも『いける』と言ってくれていたし、よくその練習の成果を出してくれた」と試合を振り返った島田達二監督の顔は、試合に勝利したことよりも、決戦の夏へ向け、ようやく選手たちが自分の判断で野球をしてくれた喜びに満ちていた。
かくして一昨年9月の秋季大会決勝、昨年8月の県選抜高等学校野球大会(新人戦)決勝、10月の県秋季大会決勝に続き、対明徳義塾4連勝の実績を手に3年連続21度目の春季四国大会に進むことになった高知。「今日は入学式があったので使わなかったですけど、四国大会からは出しますよ」と馬淵監督が起用を明言するほどのゴールデンルーキーたちを抱え、2年ぶり17度目となる春季四国大会に臨む明徳義塾と共に、秋は叶わなかった「決勝高知勢対決」への前途は洋々である。
(文=寺下友徳)