明石商vs神戸国際大附
迫力満点だった両投手の投げ合い、スケールアップした中森が甲子園切符を掴む
明石商の、最後まで諦めなかった最終回の攻撃は本当に見事であった。神戸国際大付の一瞬のスキを突いた攻撃は、まさに「選抜ベスト4」の底力と言えるもので、熱血漢・狭間善徳監督を象徴するような攻撃であった。
だが、この試合で本当に凄かったのは明石商の2年生エース・中森俊介ではないだろうか。選抜甲子園で鮮烈なデビューを飾った中森は、4カ月の時を経てさらにスケールアップした姿を見せた。
まず圧巻だったのは迫力抜群の剛速球だ。
初回から140キロ台後半を連発し、2、3回には自己最速となる149キロを記録。速球帯は140キロ台前半と選抜甲子園よりも球威は明らかに上がっており、神戸国際大付の強力打線を8安打1失点に抑える熱投を見せた。
また、レベルアップしているのは直球だけではない。スライダーやフォークといった変化球も非常に精度が高く、コントロールの間違いがほんんど無い。
投げ切った9イニングのうち、5イニングでランナーを背負う投球となったが、それでも中森は表情一つ変えずに淡々と低めやコースにボールの集めた。ピンチにも動じない屈強なメンタリティーも含め、全てが抜群であった。
投手としての完成度は、すでに西純矢(創志学園)や井上広輝(日大三)といった高校トップレベルの投手にも肩を並べところまできたと言っていい。2020年のドラフトは、ひとまずは中森を筆頭に盛り上がっていくだろう。
そして、その中森にも引けを取らない投球を見せた神戸国際大付の松本凌人の投球も忘れてはならない。
速球帯は130キロ台後半から140キロと中森よりもやや劣ったが、それでも「球速」を補って余りある程の「キレ」が松本にはある。両コーナーに鋭く突き刺さるような真っすぐを軸に、8回まで明石商打線を相手に被安打3、無失点と完璧な投球を見せた。
この先、どんなステージに進むのかはまだ分からないが、ドラフト候補としてNPBを目指せる実力は十分に持っている。最終回に垣間見せた「詰めの甘さ」を踏み越え、是非プロの世界を目指して欲しい。
勝った明石商は、8月6日に開幕する第101回全国高等学校選手権野球大会に駒を進める。さらにスケールアップした中森の姿を、全国の高校野球ファンは目の当たりにすることになる。
(文:栗崎 祐太朗)