英明vs香川西
英明先発・宮井祐一(2年)
「甲子園組」の両者、新チームは構築途上
ちょうど1年前・秋季香川県大会で準優勝。続く秋季四国大会でも準優勝し、今春センバツ初出場を飾った香川西。一方、この夏はドラフト目玉左腕・松本竜也(3年)をエースに香川大会を2年連続で制し、甲子園でも1勝をマークした英明。いわば今年の香川県高校野球界をリードしてきた両校の初戦激突に、周囲の期待は大いに高まった。
ただし、この試合を見る限り現時点におけるいまだ構築途上。勝った英明も「サインミスやおどおどしているところがあった」と香川智彦監督が振り返ったように、特に試合経験の浅い選手たちに新チーム立ち上げ1ヶ月足らずという事実を表す、記録に残らないミスが目立っていた。
とはいえ、指揮官いわく「よく辛抱してくれた」最速139キロサイド右腕・宮井祐一(2年)は1失点完投。「ふところを持っている」1年生4番・田中耀飛(大阪・浜寺ボーイズ出身)も3安打3打点という収穫もしっかり手にした英明。「一戦必勝で手を緩めず臨みます」と秋の抱負を述べた香川監督の表情は、反省すべき材料、収穫を公式戦で試せる権利を得た安堵感に満ちていた。
香川西・岩上昌由監督
一方、「こういう展開になっているのはわかっていたんですけど…」と深刻な表情で話し始めたのは香川西・岩上昌由監督である。
夏の初戦敗退で英明よりも1ヶ月以上調整期間があったにもかかわらず、立ち上がりに2死から4連打を浴びて2失点。10安打で1得点のちぐはぐな攻め。さらに終盤、ミスがそのまま失点につながってしまう試合展開。
それは「夏を終えた時点で新チームには『休み』とだけ告げて選手たちの様子を見たんですけど、学校に帰ってすぐに練習をしていたのは5人くらい。全員が集まったのは1週間後でした」と指揮官も嘆く、選手たち自身からあふれるチームワークのなさがそのまま表れたものといえるだろう。
ただし、このショッキングな連続初戦敗退は香川西を変える大きな契機となるはず。うなだれる選手たちを見やりながら「夏にはなんとかします」と締めくくった岩上監督の目には、いつもの闘志が再び宿っていた。
グラウンド、スタンドと場所は異なっても、確かに甲子園で味わう「満足感」は素晴らしいもの。が、残念ながら「満足感」はいつまでも続かないものである。
この日、「満足感」が「危機感」へと変わった試合を経て、英明、香川西の両校がどんな変化を見せてくれるか。その努力の先には新たな「満足感」が待っているはずだ。
(文=寺下友徳)