エースが生まれ変わり、二松学舎大附が甲子園に!【東東京大会総括】
市川睦(二松学舎大附)
この夏、高校生は短期間でも変貌することができることを再認識させられた。
打率5割の平間 陸斗や俊足・強打の4番・永井 敦士らを擁する二松学舎大附の打線は、東東京ではトップクラスであった。けれどもエースの市川 睦は、技術面よりも精神面で頼りなかった。春季都大会の日大三戦(観戦レポート)で打ち込まれた後、市原 勝人監督から試合中に長時間にわたり説教を受けていたのが印象に残っている。
この夏市川は、たくましくなって戻ってきた。体重を増やし、球威が増し、捕手のサインに首を振るなど自己主張もし、堂々たるエースの姿になっていた。準々決勝以降は1人で投げ抜き、2度目の甲子園行きに貢献した。
甲子園でも、東東京大会のような堂々たる投球ができるか。打率.333と、正選手の中では一番低打率に終わった永井が、パワフルで足も速い本来のみせることができるかが、二松学舎大附が甲子園で勝ち進むためのカギとなる。
チーム力が上がった東海大高輪台
変貌といえば、今までは個人中心であった東海大高輪台が、チームとして戦えるようになり、準優勝した。最速147キロの速球がありながら、制球が甘く、一本調子だったエースの宮路 悠良が、緩急を使う分けることができるようになったことも、大きかった。
一方関東一のエース・高橋 晴は、2年生までは成長期ということで、8分の力で投げていたが、3年生になりフルの力で投げるようになり、球速も147キロを記録したが、二松学舎大附にしっかり合わされた(観戦レポート)。負傷のため春季都大会は欠場した4番の石橋 康太は、この夏3試合連続で本塁打を放った。ただ関東一のチームとしての完成度は、今までより低かったように思う。
第1シードの帝京は、敗れた東海大高輪台戦(観戦レポート)では、得点は全て本塁打絡み。1番の佐々木 俊輔は、4安打しながら得点に絡めないなど、つながりが悪かった。敗戦投手になった松澤 海渡など、1、2年生に有望選手が多いだけに、秋以降の戦いに期待したい。
[page_break:9回二死からの大逆転]9回二死からの大逆転
藤下凌也 (東亜学園)
この大会で最も印象に残った試合はやはり、東亜学園が9回二死から6点差をひっくり返した修徳との準々決勝の試合だ。9回二死ゆえに修徳の阿保 暢彦監督も投手の交代をためらった。またコールドペースで進んだ試合で、1点足りずに突入した8、9回は、結構危険であることも感じさせられた。
東亜学園は、春は2回戦で八王子に0-15の5回コールドで敗れている。夏の4強進出は、その意味からも大逆転と言える。敗れた修徳の坂本 大起投手は、素質のある選手だけに、教訓を生かしてほしい。
この夏、もとは女子校であった上野学園と共栄学園が準々決勝に進出した。また4回戦で敗れたものの、日大三の全国制覇のメンバーで元ヤクルトの内田 和也監督率いる立正大立正もこれから強くなる可能性を感じた。
都立勢は都立淵江と都立小山台が16強に残っただけで8強はなく、結果としては不振だったが、好チームも多かった。シード校の東京実を破った都立紅葉川、東東京屈指の好投手、城西大城西の後藤 茂基と真っ向勝負をして打ち勝った都立江戸川、関東一に善戦した都立雪谷、東亜学園に善戦した都立広尾、成立学園を破り、東海大高輪台に善戦した都立王子総合といった高校野球ではお馴染みの学校だけでない。修徳に善戦した都立目黒、日体大荏原に食らいついた都立駒場、[stadium]神宮球場[/stadium]とは道一つ挟んだ都立青山も4回戦に進み、[stadium]神宮球場[/stadium]で二松学舎大附と戦った。
今、夏の8強、秋や春の16強を目指すという、強豪と中堅の境界にいる層が非常に厚くなっている。地位を固めたうえで、上のランクを目指すのはどこか。大会全体の水準を上げるには、この層の底上げが重要になる。
(文・大島 裕史)